「ウクライナ侵攻」GAFAはロシアを許さない アノニマスは「サイバー戦争」
ロシアのウクライナ軍事侵攻に対し、形を変えたウクライナ支援が続いている。米国の電気自動車企業テスラのマスク氏は、インターネット接続サービスをウクライナに提供することを明らかにした。グーグルとメタは、ロシアメディアの広告を規制した。匿名のハッカー集団「Anonymous」は、ロシア政府関連のウェブサイトをアクセス不能にしたという。
ウクライナ国内では従来型の戦争が続いているが、国境を超えたネット空間ではウクライナを支援する新たな戦いが勃発している。
テスラは小型衛星経由で支援
TBSによると、テスラのCEO(最高経営責任者)で、宇宙開発企業スペースXを率いるイーロン・マスク氏は2022年2月26日、小型衛星を介したインターネット接続サービスをウクライナに提供することを表明した。スペースXが開発した「スターリンク」と呼ばれるこのサービスは、小型衛星を経由してインターネット接続を可能にするものだ。ロシアのサイバー攻撃を受けているというウクライナのIT環境を改善させることにつながる。
ロイターによると、米アルファベット傘下のグーグルは26日、ロシアの国営メディアRTなどについて、ウェブサイトやアプリ、ユーチューブ動画で広告収入を得ることを禁止した。SNS「フェイスブック」を運営する米メタも、同様の措置を発表している。
iPhoneの利便性低下させる
日経新聞によると、これらの動きはウクライナのフョードロフ副首相の要請にこたえたもの。デジタル転換相を兼務するフョードロフ氏は25日、米アップルのティム・クックCEOにロシア国内でのサービスや製品の提供中止を要請したことを明らかにした。人気が高いiPhoneなどの利便性を低下させ、ロシアでウクライナに対する攻撃を中止することを求める世論を喚起したい考えだ。
フョードロフ氏は、アップルが制裁を加えることで、「ロシアの若者を動かし、軍事侵略を阻止することにつながる」との見方を示し、「テクノロジーは戦車やミサイルに対する最良の解答になる」と指摘していた。巨大IT企業の相次ぐ「参戦」は、こうした同氏の意向に賛同したものだ。
読売新聞によると、国際ハッカー集団「アノニマス」は25日、ツイッターで、ウクライナに侵攻したロシア政府に対する「サイバー戦争」を通告した。
アノニマスはツイッターで、露国防省や政府系テレビRTを標的にサイバー攻撃を仕掛けたことを明らかにした。これに対し、露国防省は「偽情報だ」と攻撃された事実を否定しているという。
ウクライナではロシアの侵攻前から政府機関などがサイバー攻撃の被害を受けており、米国はロシアが関与したとの見方を示している。
日本でも関連する動きが出ている。ITmedia NEWSによると、楽天の三木谷浩史氏は25日、ウクライナ国内のスマートフォンの97%にインストールされているとするメッセンジャーサービス「Viber」とアプリ外の音声通話を無料にすると発表している。
軍事と非軍事の境界がなくなる
1999年に中国で出版され、「9.11」を予見したといわれる『超限戦――21世紀の「新しい戦争」』(角川新書)は、新時代の戦争について以下のように書いていた。
「グローバル化と技術の総合を特徴とする21世紀の戦争は、すべての境界と限度を超えた戦争で、これを超限戦と呼ぶ。このような戦争ではあらゆるものが手段となり、あらゆる領域が戦場となりうる。すべての兵器と技術が組み合わされ、戦争と非戦争、軍事と非軍事、軍人と非軍人という境界がなくなる」
「『勇ましい武人がわが城を守る』時代はすでに過去のものだ。核戦争という言葉さえ古くさい軍事用語になってしまいそうな今日の世界では、度の強い近視眼鏡をかけた色白の書生の方が、頭が単純で筋肉が盛り上がっている大男よりもっと現代の軍人にふさわしい」
ウクライナの戦いでも、この予言が当たることになるかもしれない。