コンビニのレジの横に並んでいるおでん。「美味しそうだな〜」と眺めていた時にふと、気になったことがありました。一般的にはおでんに入っているはんぺんといえば三角形のことが多く、スーパーなどで売られているものは正方形であることが多い印象です。しかし、コンビニのレジ横で販売されているおでんのはんぺんは丸く膨らんだものばかり。これにはなにか理由があるのでしょうか? コンビニ各社に聞いてみました。

ローソン「はんぺん」


ファミリーマート「はんぺん」


「過去には三角のこともありましたが、ファミリーマートでは、2005年度より、かまくらはんぺん(球体のはんぺん)に変更しております。はんぺんの持つ柔らかい食感のイメージ持たせること、また、お店で煮込む際に角が煮崩れてしまうのを防止するために球体にしています」(ファミリーマート担当者)

「以前は三角や四角型で販売していた時代があったようですが、煮込んだ時に角がとれてボロボロになってしまう事から2000年前後よりかまくら型に変化しました。球体の方がつゆに浸かる表面積が小さいのでコンビニおでん鍋に耐えられる煮込み耐性に進化してきたとも言えますね」(ローソン担当者)

自宅やお店で食べるおでんとは異なり、提供までしっかりと長時間煮込むことの多いコンビニのおでんでは、その耐久性が重視され形状が進化してきたようです。ファミリーマート・ローソンのいずれもかまくら型のはんぺんでしたが、これは雪で作るかまくらのような形状であることからそう呼ばれています。

○はんぺんはもともと半月型だった説

さらに、はんぺんなど魚肉練り製品を多く製造する紀文食品担当者によると驚きの事実が判明しました。

「江戸時代の古文書『守貞謾稿』(1837年)によれば、お椀のフタにすり身を落として茹でたのがはんぺんの始まりだと言われています。そのため名前由来が『椀蓋の半分に身を付けて作る=半片』とされる説もあります。その後、作りやすく扱いやすい形状である四角い木枠の型にすり身を入れていくようになり、四角い形にしたものが誕生しました」(紀文食品担当者)

むしろ、初期は半月の形状がデフォルトであり、私たちが普段目にすることの多い四角い形状は後から生まれたものだったのですね。

「はんぺんは加熱すると膨らむ性質があります。これははんぺんの中に気泡が入っているからなのですが、かまくら状にすることでおでんつゆに接する面積が小さくなり、加熱しても膨らみにくくなります。さらにおでんの具のバリエーションが増えてきた現代では、三角や四角型よりかまくら型の方がおでん鍋の表面に接する面積が狭いので、他の具材を入れるスペースも出来て、さらには、はんぺん以外の具材も目に留まりやすくなるという背景もあったのではと思います」(紀文食品担当者)

コンビニのおでんもそうした理由があって三角形からかまくら状へと変化したことがうかがえます。コンビニ各社のはんぺんはそれぞれ特徴が異なり、ローソンはスケソウダラ・サメの配合の比率を工夫し、口に含んだ時のシュワっとしたくちどけが感じられること、ファミリーマートは国産やまいもによるふんわりとしたくちどけの良さが特徴です。

形状や食感・味の違いはもちろん、はんぺんの変化の歴史にも思いを馳せながら食べることで、見慣れたおでんの具材もより美味しさがアップするかもしれません。

松本果歩 まつもとかほ 恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter: @KA_HO_MA この著者の記事一覧はこちら