引っ越し時のあいさつはコロナ禍でも必要? ご近所付き合いに影響するという調査結果も
若い人の賃貸住宅への引っ越しであれば、最近はご近所への挨拶(あいさつ)などしないという人が増えているようですが、マイホームを持つとやはり挨拶に行く人が多いのではないでしょうか。しかし、コロナ禍のいま、挨拶にお邪魔していいものなのでしょうか。挨拶に行くとすると、どのような対応がよいのでしょうか。民間の調査をもとに、解説していきます。
近所への挨拶は各種手続きの次に面倒な問題に
コロナ禍かどうかにかかわらず、引っ越しにはさまざまな面倒がつきものですが、皆さん、どのような点を特に面倒だと思っているのでしょうか。
引っ越しの見積もり比較サイトを運営しているリクルートの調査によると、引っ越しで面倒なこととしては、図表1のような結果でした。
「転出・転入届」の15.8%を筆頭に、「ネット回線の手続き」「住所変更(銀行口座・クレジットカード)」「電気・水道・ガスの手続き」など、手続き関係がほとんどです。ネットで手続きできることもありますが、直接窓口に出向かなければならないことも多く、たしかに面倒なものです。
そのなかで、異色といっていいのが、6番目の「近所への挨拶」ではないでしょうか。最近は若い世代を中心に、賃貸住宅への引っ越しにあたって、特に挨拶はしないという人が増えているようですが、それでも持ち家となると、やはり挨拶は不可欠だが面倒と感じる人が少なくないということです。
ご近所はどこまで挨拶したほうがよい?
ご近所への挨拶、どの辺りのご近所まで伺うとよいのでしょうか。あまり軒数が多いと、たしかに煩わしくなりますが、日本では古くから、親しくしているご近所さんを表す「向こう三軒両隣」という言葉があります。
戸建住宅であれば、新居の両隣と道路を挟んだ向かいの正面とその両隣、そして新居の裏が道路ではなく住宅である場合には、その裏のお宅も対象に加えたほうがいいかもしれません。
マンションだと、同じフロアの両隣と、真上と真下の住戸の合計4軒でいいのではないでしょうか。同じフロアの住戸が3戸、4戸などと少ない場合には、同フロアのすべての住戸の方にご挨拶したほうがいいかもしれません。いわゆる各フロア2戸ずつが同じエレベーターを利用する、いわゆる二戸一タイプのマンションで、階数がさほど高くない場合は、同じエレベーターを利用する住戸の方にご挨拶しておいたほうが、顔見知りになりやすいでしょう。
いずれにしても5軒か6軒、多くても10軒程度であり、さほど多い数ではないので面倒がらずに、きちんと挨拶しておくのが無難です。
コロナ禍ではインターホン越しの挨拶でも
とはいえ、コロナ禍で面と向かっての挨拶がしにくい昨今、引っ越し挨拶はどのように行うとよいのでしょうか。
本来なら、各戸に訪問して玄関などで挨拶の品物を手渡したいところですが、コロナ禍においてはインターホン越しの挨拶というケースも考えられます。「隣に引っ越してきた○○です。よろしくお願いします」と挨拶、「大したものではありませんが、ご挨拶の品を郵便受けに入れておきますので、お受け取りくだい」などと伝えるといいでしょう。
その際、走り回るような元気な子どもがいる家庭や、多少大きめの鳴き声をあげるペットがいる場合には、その旨伝えておくのが安心です。何も知らないと、騒ぎ声や泣き声は大変気になるものですが、事情がわかっていると、「今日も元気だな」ぐらいの受け止め方をしてくれるものです。
最近は、コロナ禍で在宅時間が長くなる傾向があるとはいえ、挨拶に行った先が共働きの世帯だと留守にしていることもあるでしょう。二度、三度と留守が続いたときには、郵便受けなどに、挨拶の品に手紙を添えて入れておくとよいでしょう。
挨拶の有無がご近所付き合いに影響してくる
この挨拶をしておくかどうかが、その後のご近所付き合いに関係してきます。不動産・住宅情報サイトを運営するLIFULLの調査によると、図表2にあるように、引っ越し時に挨拶をしたかどうかが、その後のご近所付き合いの善しあしに影響するようです。
全体では、ご近所付き合いは、「非常に良い方だ」が11.7%、「どちらかいえば良い方だ」が62.9%で、「どちらかといえば悪い方だ」が19.6%、「非常に悪い方だ」が5.8%となっています。「良い」の合計は74.6%で、「悪い」の合計は25.4%です。
これを、引っ越し時に挨拶に行ったかどうか別にみると、「挨拶に行かなかった」人では、「良い」の合計は57.8%に減って、「悪い」の合計が42.2%に増えます。反対に、「挨拶に行った」人では、「良い」の合計は84.9%に増加、「悪い」の合計は15.3%に減少します。
ちょっとした気遣いが、円満なご近所付き合い、ひいては新居での生活の満足度に大きく関わると言ってもよいでしょう。
挨拶品の金額が高いほどご近所付き合いが良くなる?
では、挨拶品はどのようなものを選ぶとよいのでしょうか。1軒当たり数百円から1,000円程度の品物が多いと思いますが、それなりに金額をかけたほうが、ご近所付き合いが良くなるのかもしれません。
図表3にあるように、品物の金額が300円未満では、「非常に良い方だ」が19.4%、「どちらかといえば良い方だ」が52.8%で、「良い」の合計は72.2%です。対して、「どちらかといえば悪い方だ」が19.4%、「非常に悪い方だ」が8.3%で、「悪い」の合計は27.7%でした。
これが、品物の金額が1,000円以上1,500円未満になると、「良い」の合計が92.0%で、「悪い」の合計が8.0%、そして品物が1,500円以上の人では、「良い」の合計が100%で、「悪い」はゼロでした。挨拶にかける金額によって、その後のご近所付き合いに大きな差が生じています。お金をかければよいというものではありませんが、やはりある程度お金をかけると、それなりの効果が期待できると考えられます。
あるいは、それなりにお金をかける人は、そもそもご近所付き合いを重視している人たちであり、それが付き合いの善しあしにも影響しているということかもしれません。
タオルやハンカチなどの定番にも工夫の余地
では、その予算の範囲内でどのような挨拶品がよいのでしょうか。
定番は、タオル、ハンカチや洗剤などですが、印象深くするためには、タオルでも今治タオルなど使い心地がよく
、長持ちするものだと、送り主のセンスを感じてもらえるかもしれません。
生活必需品などの消耗品が好まれますが、食品関係を贈る人もいます。その場合には、クッキーなどの日持ちする焼き菓子、少量のお茶、3合程度のパックになったお米などでもよいかもしれません。コーヒーや紅茶などを選ぶ人もいますが、嗜好(しこう)性の強いものは、好みがあるので、避けた方がよいかもしれません。
いずれにしても、限られた予算のなかで、気の利いた品物を選び、良好なご近所付き合いにつなげるようにしたいものです。