共働きが年々増加する中、子育て世帯を悩ませるのが待機児童問題。子どもを預けやすい場所に住みたいと考える親は多いでしょう。「待機児童ゼロ」という目標を掲げる東京都の現状はどうなっているのでしょうか? 東京都の区市町村の待機児童数ランキングから考えてみましょう。

東京の待機児童数の状況は?

東京都から発表された2021年4月時点の「都内の保育サービスの状況」によると、保育サービス利用児童数は前年(2020年)より3,145人増え、32万3,703人でした。就学前児童人口に対する利用児童数の割合(利用率)は52.3%。つまり東京では、就学前児童の2人に1人以上が保育サービスを利用している計算になります。

その児童を受け入れる保育所等の設置状況については、認証保育所が前年より37ヶ所減って定員が1,354人マイナス。一方で、認可保育所は前年より152ヶ所増え、定員は1万271人プラスと全体的には増加したようです。そのため待機児童数は前年から1,374人減少し、969人になっています。

それでも、待機児童問題が解決していると手放しで喜べる状況とは言い切れません。保育所等の利用申込率は過去5年以上増加傾向にあり、2021年も前年比1.2%増加。依然として保育サービスのニーズが高まり続けている様子も明らかになっています。

参考:東京都「都内の保育サービスの状況について(表1 保育サービス利用児童数の状況、表2 保育所等の設置状況、表3 保育所等利用待機児童等の状況)」

待機児童数が多い区市町村は? 全体的な待機児童は大幅に減少

2021年の調査で待機児童数が確認された区市町村は36自治体でした。ただし、そのうち34自治体で待機児童数が減少、さらに全体では41自治体の待機児童が減少しており、状況は改善している様子がうかがえます。

※出典:東京都「都内の保育サービスの状況について(表4 区市町村別の状況)」

2021年4月1日時点で待機児童数が最多だったのは、小平市の86人。保育サービス利用率は比較的低い44.1%でありながら待機児童数は多くなっています。続く2位と3位は、児童人口が比較的多い中央区と町田市でした。
これら3自治体は、前年もワースト5位内に入っており、まだまだ保育サービスを受けにくいエリアと言えそうです。ただし、待機児童数自体は大幅に減少しているため、改善傾向は見られます。
このほか、前年ワースト1位だった江戸川区は、203人から49人へと大幅に待機児童が減少していました。

前年から待機児童ゼロを維持しているのは18自治体!

待機児童ゼロの区市町村はどこ?

2021年4月1日時点で待機児童ゼロだった区市町村は26自治体あり、そのうち前年から引き続き0人を維持していたのは18自治体でした。

※出典:東京都「都内の保育サービスの状況について(表4 区市町村別の状況)」

23区内では、千代田区、港区、目黒区、世田谷区、杉並区、豊島区が待機児童ゼロを維持。檜原村以下の町村は、保育サービス使用率は高いものの、就学前児童人口自体が少ないため、待機児童がいないのではないかと考えられます。

そのほか、2021年に待機児童ゼロを達成したのは、新宿区、大田区、渋谷区、練馬区、足立区、葛飾区、東大和市、稲城市の8自治体でした。

保育サービス利用児童数が大幅に増加した地域は待機児童ゼロ

先述の通り、保育所等の利用申込率は年々増えています。そのニーズに合わせて受け入れ枠を順調に増やすことができている自治体は、待機児童ゼロを達成しているようです。保育サービスを利用できている児童数(保育サービス利用児童数)が特に増加していたのは杉並区で743人増。続いて世田谷区で326人、練馬区で313人増えていました。

杉並区では計画的に認可保育所を整備し、入所未内定者に対するマッチングに取り組むことで保育所に入所できる環境を整備。また世田谷区は2019年には待機児童数ワースト1だったものの、認可の私立保育園を中心とした保育施設を大幅に増加したことで待機児童ゼロを達成しています。練馬区では区独自の幼保一元化施設「練馬こども園」を創設したり、保育園等の利用が保留となっている1歳児の保育を行う「1歳児1年保育事業」を実施したりと、自治体の施策が功を奏しているようです。

参考:東京都「都内の保育サービスの状況について(表4 区市町村別の状況)」、杉並区「3年4月 4年連続で保育の「待機児童ゼロ」を実現しました」、練馬区「待機児童数ゼロ実現に至る取組」

東京で保育園に入りやすいエリアを探す際のポイント

利用駅や子どもの年齢により、待機児童数に違いが!?

東京都では待機児童解消のための取り組みを積極的に行っているものの、保護者は気になる自治体や園の情報をWebサイトや窓口で個別に確認しなければなりません。そのため必要な情報を網羅しにくく、比較検討するのも難しいという実情があるようです。複数の地域をしっかり比較検討したうえで、保活しやすい居住地を見つけるためには、次のポイントに注意しましょう。

細かいエリアも調べて判断する
待機児童ゼロの区市町村内でも、全エリアが保育所に通わせやすい環境だとは限りません。特に人口の密集している都心部では、1駅離れるだけで住んでいる世帯や街の雰囲気がガラッと変わることもよくあります。子育て世帯の多い場所では保育園の申込倍率も高いので、希望する園に入れず家から遠い園まで送り迎えが必要だったり、単身者が多い場所では保育施設が少なかったり… なんてことも起こりかねません。都会の細く人通りの多い道や、交通量の多い道路を通って、遠くまで子どもを連れて通うのは大変です。そうならないためには、自治体だけでなく最寄り駅のような細かいエリアに分けて、保育園の入りやすさをチェックすることも大切です。

子どもの年齢も要チェック
待機児童数は、子どもの年齢によっても異なります。2021年4月の東京の待機児童数を年齢別に見ると、「0歳児」80人、「1歳児」681人、「2歳児」177人、「3歳児」30人、「4歳以上」1人。特に1歳児と2歳児は保育施設に入りにくい状況にあるようです。全体の待機児童数を見るだけでなく、自分の子どもの年齢も考慮して検討しましょう。
参考:東京都「都内の保育サービスの状況について(表3 保育所等利用待機児童等の状況)」

各種窓口を積極的に利用する
東京都では、保育を希望する保護者の相談に応じ、保育施設の案内や預け先の提案を行う専門の相談員「保育コンシェルジュ」を配置している自治体が存在します。たとえば、港区、足立区、荒川区、町田市、府中市などです。こうした窓口を積極的に活用すれば、より詳細な情報が手に入れられるでしょう。

まとめ

まだ待機児童ゼロとはいかないものの、都心部も含めた東京都の待機児童は着実に減っているようです。今回のランキングも参考にしながら、積極的に情報収集し、子育てしやすい街を探してみてください。

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