個人事業主として働いている人は、1年間の収入について確定申告する必要があります。初めて確定申告する場合は、事前の手続きもしなければならないため注意しましょう。

この記事では、個人事業主の確定申告について解説します。正しく確定申告をして納税できるよう、ぜひ参考にしてください。

個人事業主は必ず確定申告が必要?

個人事業主で確定申告が必要かどうかは、所得によって決まります。個人事業主として収入を得ていても、年間の所得が48万円以下なら確定申告は不要です。所得とは、売上から経費を差し引いた金額を表しています。

所得が48万円以下の場合に確定申告が不要なのは、すべての人に48万円の基礎控除が認められているためです。また、所得控除には基礎控除のほかにも医療費控除や社会保険料控除などがあります。所得控除により所得がゼロやマイナスになれば、確定申告は不要です。

また、副業で個人事業主の届出をしている人は、給与以外の所得が年間20万円を超えていなければ、確定申告は必要ありません。ただし、報酬から源泉徴収されているなら、確定申告により還付金を受け取れる可能性もあります。

青色申告と白色申告、どちらで申告すべき?

青色申告を選ぶとさまざまなメリットが(画像素材:PIXTA)

個人事業主の確定申告は、青色申告または白色申告により行います。初めて確定申告をするときは、どちらを選ぶべきか迷う人も多いでしょう。ここでは、青色申告と白色申告のそれぞれの特徴を解説します。

青色申告にはさまざまなメリットがある

青色申告とは、簿記の原則に従って帳簿を作成し、帳簿でまとめたお金の出入りをもとに確定申告する制度です。青色申告をするには、確定申告をする年の3月15日までに、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出しなければなりません。書類を提出しないと青色申告ができないため、注意しましょう。

青色申告を選ぶとさまざまなメリットがあります。まず、最大で65万円の特別控除を受けられます。赤字になった場合も、赤字を翌年以降に繰り越して税金を計算することが可能です。

また、家族を雇っている場合、支払った給与を経費として計上できます。回収できる可能性がない売掛金である貸倒引当金が発生した場合も、経費にできます。さらに、30万円未満の少額減価償却資産も、一括で経費への計上が可能です。

白色申告なら記帳方法が簡単

白色申告は、青色申告と比較すると税制面におけるメリットが少なくなります。しかし、事前の申請が必要なく、青色申告よりも帳簿の作成方法が簡素化されています。そのため、帳簿の作成に手間をかけたくないなら、青色申告よりも白色申告のほうが簡単です。「所得税の青色申告承認申請書」を提出していない人は、自動的に白色申告で確定申告することになっています。

ただし、青色申告は控除額が大きいため、個人事業主として継続的に収入を得られているなら、青色申告のほうが節税になります。それぞれの申告方法の特徴と自分自身の所得金額を考慮し、どちらを選ぶべきか慎重に判断しましょう。

個人事業主として初めて確定申告する場合の流れ

個人事業主の確定申告は、どのように行えばいいのでしょうか。ここでは、個人事業主として初めて確定申告をする人に向けて、確定申告の流れをわかりやすく解説します。

開業届を提出する

個人事業主として仕事を始めることになったら、開業から1ヶ月以内に税務署へ「開業届」を提出しましょう。提出しなくても罰則はありませんが、青色申告を希望するなら出す必要があります。開業届は国税庁のホームページからダウンロードできます。必要事項を記入し、管轄の税務署に提出しましょう。

なお、「所得税の青色申告承認申請書」は、事業を開始してから2ヶ月以内に忘れずに提出してください。

帳簿付けをする

事業を開始してお金のやり取りが発生したら、すべてを漏れなく帳簿に付ける必要があります。帳簿の付け方は複式簿記と単式簿記の2種類がありますが、青色申告では複式簿記を選択しなければなりません。

帳簿を付けるためには、領収書や通帳などの根拠資料が必要です。根拠資料をもとにし、金額や取引内容を日付順で記帳していきます。収支を計算し、お金がいくら入ってきていくら使ったのか把握しましょう。

なお、青色申告を選択している人は、確定申告に関わる書類を7年間保管する義務があります。帳簿、決済に関わる書類、領収書などをすべてそろえ、なくさないようにきちんと保管してください。

帳簿を付けるには簿記の知識も必要になるため、初めて帳簿付けする際は戸惑う人も少なくありません。帳簿の付け方がわからない場合、税務署や青色申告会、商工会議所などに相談すると指導してもらえます。また、初心者でも簡単に帳簿付けができるように工夫されている会計ソフトもあります。

確定申告書を作成・提出する

確定申告をするには確定申告書の作成が必要です。確定申告書の作成方法は3つあります。

1つ目は、手書きで申告書を作成する方法です。申告書は、税務署の窓口や国税庁のホームページから手に入れられます。書類が完成したら、管轄の税務署へ郵送または持参しましょう。

2つ目は、パソコンやスマートフォンで国税庁のホームページにアクセスし、「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成する方法です。画面に沿って必要な内容を入力するだけで金額が自動で計算されるため、より簡単に確定申告ができます。郵送や持参による提出も可能ですが、e-Taxによる電子申告にも対応しています。

3つ目は、会計ソフトで確定申告書を作成する方法です。会計ソフトなら、会計の知識がない人でも簡単に確定申告できます。e-Taxによる電子申告に対応している会計ソフトもあるため、手間をかけずに確定申告を完了させられます。

個人事業主が確定申告をする際の注意点

収入や所得だけでなく経費も計上可能(画像素材:PIXTA)

個人事業主が確定申告をするときは、気をつけたいこともあります。ここでは、確定申告の具体的な注意点について解説します。

給与収入がある場合

会社員が副業として個人事業を営んでいる場合や、年の途中で退職して個人事業を始めた場合は、個人事業主としての所得だけでなく給与収入についても確定申告が必要です。

個人事業主として確定申告する場合でも、確定申告書には本業の会社で受け取った給与収入を記載します。給与収入の金額を正確に記載するには源泉徴収票が必要です。源泉徴収票は会社から発行されるため、受け取ったら大切に保管して確定申告に備えてください。

経費を計上する

確定申告を行うための帳簿には、収入や所得だけでなく経費も計上できます。事業のために物品を購入したり、サービスを利用したりした場合にかかった費用が、経費に該当します。たとえば、事務所の家賃、光熱費、インターネット代などはすべて経費です。

経費を計上すればその分だけ所得が少なくなるため、節税につながります。ただし、事業に関係のない費用は、経費として計上できません。後から税務署に指摘されるおそれがあるので、本当に事業のために使用した費用のみを計上してください。

まとめ

個人事業主が確定申告をしなければならないのは、年間の所得が48万円を超える場合です。確定申告には青色申告と白色申告がありますが、青色申告を選んだほうがさまざまなメリットがあります。青色申告をするには複式簿記による記帳が必要なため、事業を開始したら収支をきちんと記録しましょう。

個人事業主として一定以上の所得があれば、確定申告は必須です。申告漏れや未納などが起きないよう、事業開始とともに確定申告のための準備を始めるようにしてください。