人生最大の買い物と言われるマイホーム。多くの人が住宅ローンを利用して購入するほど高額なものですから、満足できる住宅を手に入れたいと思うはず。ところが、見落としたり妥協したりして、何らかの不満や後悔を感じる人が多いというのです。

約85%が購入した住宅に後悔や不満あり!

フリエ住まい総研が2021年10月に「住宅購入で後悔したこと」に関する実態調査の結果を発表しました。これによると、「購入した住宅について少しでも後悔・不満を持ったことはありますか?」と聞いた結果は、84.4%が「はい」と回答しました。

「はい」と回答した人の中には、ほんの少しだけ不満を感じている人もいれば、かなり後悔している人もいるでしょうから、その度合いに大小はありますが、多くの人が何らかの後悔や不満を抱えていることが分かる結果です。

後悔・不満を感じた人に具体的な項目について聞いたところ、上位3位は次のようなものでした。

購入した住宅について後悔・不満を感じた項目(上位3位を抜粋)
1 位 間取り・レイアウト 41.8%
2 位 費用面(ローンなど) 22.9%
3 位 ベランダ・庭など屋外環境 21.2%

1位の間取りについては、「家族の変化などを長期的に考えるべきだった」「自分の書斎をつくればよかった」、2位のローンについては、「コロナ禍前に契約をしたがもっと費用を抑えればよかった」「収入の変動などで当初の予定通りに返済できなくなった」、3位の屋外環境については、「広さが欲しかったがその分手入れが大変」「庭をあきらめたが家を狭くしてでも庭をつくればよかった」などが、その理由として挙がっています。

約80%が住宅購入の予算を自分で算出した

さて、後悔・不満を感じた項目の2位が費用面(ローンなど)でしたが、株式会社groove agent(ゼロリノベ) が2021年10月に発表した「住宅購入時の住宅予算の管理に関するアンケート調査」の結果を見ると、「予算内におさまった」のは61.5%、「予算をオーバーした」のは38.5%でした。実に4割近くの人が、当初より予算がオーバーしていました。

予算オーバーの原因でありがちなのは、情報不足などで「当初の予算の立て方が適切でないこと」や、検討中に条件を引き上げたり設計変更をしたりで「当初予算を超えてしまうこと」などです。日常の買い物で払う金額と違って、マイホームは何千万円という金額になるので、「このくらい増やしても」と金銭感覚が大雑把になってしまうことも要因でしょう。

先ほどの「住宅購入時の住宅予算の管理に関するアンケート調査」で、その予算の算出方法を聞くと、80.2%が「自分で情報収集して決めた」と回答しています。情報収集の仕方や読み取り方などに課題があったとも考えられます。

住まい選びで後悔しないためのチェックポイントは?

では、住まい選びで後悔しないためには、どうしたらよいのでしょう?

フリエ住まい総研の調査でも、「後悔をしないために、より重要視した方がよいと思う項目は何ですか?」と聞いています。その結果が下図です。

出典:フリエ住まい総研「住宅購入で後悔したこと」に関する実態調査

この結果から分かることは、「現地で物件をしっかり確認すること」の重要性です。1位に「物件周辺環境の下見」、4位に「該当物件の内見」、5位に「物件設備の確認」が挙がっています。実際に購入しようとする住宅がどうなっているのか、設置設備はどんなものかなど、なんとなく見るのではなく、その状態をしっかり確認することが重要ということでしょう。また、購入する住宅に関心が行きがちですが、半数以上の人が周辺環境を実際に確認することの重要性を感じています。

実は、周辺環境は日々の生活に大きな影響を与えます。不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2021年10月に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査で、「物件情報以外に必要だと思う情報」の結果は下図のようになりました。

出典:不動産情報サイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート」

周辺環境というと、交通アクセスや商業施設を思い浮かべることが多いと思いますが、周辺に「医療・介護施設」があるか、役所などの「公共施設」があるか、子育て家族なら「子育て施設」があるか、「学区」はどうかなども気になる点です。住む自治体によって、「行政サービス」の内容も変わってきます。

そして、見落としがちなのが「嫌悪施設」です。嫌悪施設とは、周囲の人が嫌悪感を示す施設のことです。たとえば、刑務所や風俗店などのほか、騒音や悪臭などを発生する施設や危険物を取り扱う施設なども含まれます。住まい選びをしているときは、欲しい施設の確認は怠りませんが、あって欲しくない施設への関心が薄いことも多いのです。たとえば、週末に現地を訪れたので、平日に稼働する工場の騒音に気付かなかったという人もいました。

誰もが嫌悪感を示す施設については、売買契約の前に行われる重要事項説明の際に、重要事項として説明されます。とはいえ、家族構成やライフスタイルなどによって何を気にするかは違うので、欲しくない施設がないかも確認したい点です。

近年関心が高まっているのが、災害リスクです。この調査結果でも、売買物件を探している人で見ると、「治安情報」よりも「浸水の危険性」や「地盤の固さ(強さ)」のほうが、その必要性を強く感じていることが分かります。ほとんどの自治体が、インターネットでもハザードマップを公開していますので、事前にチェックすることをお勧めします。また、2020年に宅地建物取引業法が改正され、重要事項説明の際に「水害ハザードマップ」のどの位置に物件があるかを説明することが、宅地建物取引業者に義務付けられるようになりました。

複数物件の比較検討や第三者のアドバイスも重要

フリエ住まい総研の調査結果に話を戻しましょう。2位に「知識がある第三者のアドバイス」、3位に「複数物件の比較検討」が挙がっています。

リクルートが2021年4月に公表した冊子「首都圏新築マンション契約者動向調査(全体報告書)」によると、新築マンションを購入した人の平均物件見学数は「4.6件」でした。1物件しか見なかったという人も多いのですが、最多は「2~3件」(33.7%)、次いで「4~5件」(21.3%)となっていますので、2~5件の範囲で見学した人が大半ということです。

複数物件を比較検討することのメリットは、相場観が分かったり、住宅のスタンダードがつかめたりすることです。1物件だけ見て、今住んでいる賃貸住宅との違いに驚いて、そのまま契約してしまうといった衝動買いは後悔の元になります。比較検討することで、売買物件ではどういった仕様や設備がスタンダードなのか、それぞれの違いは何かなどを知ることができます。

さらに、物件ごとに担当する不動産会社が異なる場合では、不動産会社の信頼性などをうかがい知ることもできます。物件について十分な説明ができなかったり、セールスポイントばかり説明したり、ほかの物件の悪口を言ったりなど、大きな買い物をするのに頼りにできる不動産会社かどうかも、比較検討できるというわけです。

また、不動産会社の担当者と上手に付き合うことで、知識を増やすことができます。物件の見学をした際に、周辺の相場や物件のチェックポイント、間取りのトレンド、人気設備など、気になる点をいろいろ質問すれば、情報も一気に増えていきます。

住宅ローンの情報についても、不動産会社の担当者だけでなく、給与振込先の金融機関などにも相談できます。ARUHIマガジンのように、第三者のファイナンシャルプランナーが責任を持って執筆する記事から情報を集めるのも良いでしょう。こうして、専門知識のある第三者の情報を上手に取り込んで、わが家の場合はどうするのが良いかを見極め、最終的に自身で判断するのが後悔しない方法です。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)