近年航空業界でトレンドとなっているのが、ビジネスクラスの高級化にともなうファーストクラスを取り払った座席構成です。この傾向はJALも同様ですが、ファーストクラスの強みはあるのでしょうか。同社の客室構成の担当者に聞きました。

JALもファーストクラスは777-300ERのみ

 元来、国際線を運航する旅客機座席クラスといえば、もっとも高級な「ファーストクラス」を頂点に、「ビジネスクラス」、そして「エコノミークラス」の3つで構成されるのがスタンダードでした。近年、その概念が変わりつつあるのは、広く知られているところです。


JALの長距離国際線用のボーイング777-300ER(乗りものニュース編集部撮影。

 近年トレンドとなっているのが、ファーストクラスを取り払い、ビジネス/エコノミーの2クラス、もしくはビジネス/プレミアムエコノミー/エコノミーの3クラス構成とすること。この背景にあるのは、ビジネスクラスがどんどん高級化していることでしょう。

 たとえばJAL(日本航空)の場合、国際線ファーストクラスが設置されているのは、長距離国際線仕様のボーイング777-300ERのみ。ほかの機種では、長距離を飛ぶ北米路線を担当する旅客機ですらファーストクラスはなく、ビジネスクラスを最上位とします。

 同社の場合、主力仕様のビジネスクラス「スカイスイート」シリーズは、すべてフルフラットベッドにできる座席を搭載。同社のホームページでも一部のスカイスイート仕様機では「まるでファーストクラスのようなプライベート空間」を称しています。

 このようななか、ファーストクラスの強みはあるのでしょうか。

ファーストクラスはどのようなところ? プロに聞く

 JALの商品・サービス企画部の西垣淳太さんは、JAL機の国際線客室、各クラスのシート開発にも携わるプロフェッショナルです。「マーケットのなかでクラス構成が細分化されており、プレミアムエコノミーや、ファーストとビジネスの中間のような座席が誕生しているのは事実です」としながら、ビジネスクラスと比較したJALのファーストクラスの強みを次のように話します。

「足元まで広さが確保されているところや寝心地で、ファーストとビジネスは明確に区別されています。また、(その区別は)座席の仕様だけではありません。ファーストクラスは、8席に3名のCA(客室乗務員)が対応します。手厚さや質、気付きの早さは、ファーストクラスならではです」(西垣さん)


JALの国際線ファーストクラス「JAL SUITE」とCAの鈴木杏奈さん(乗りものニュース編集部撮影)。

 一方、ファーストクラスの接客特徴について、西垣さんと同じ商品・サービス企画部に籍を置くCAの鈴木杏奈さんは次のように話します。

「ファーストクラスを担当する際には、お客様からお呼びいただく前に私達も気付けるように、よく見ております。一人ひとりのお客様とのお時間も多く絆を作りやすいクラスです。ファーストクラスでは一人ひとりの過ごされるペースにあわせ、タイミングを大切にしながら絆を作っています」(JAL商品・サービス企画部 リードキャビンアテンダントの鈴木杏奈さん)

 西垣さんは「JALとしては、お客様が期待した以上のものをお届けするということを高次元で実現するためには、ファーストクラスは必要」とし、「それによって、マーケットのなかでJALのクオリティを理解していいただき、ブランド力の向上につながっていくと考えています」と話しました。