2021年12月をもって、スウェーデンのサーブ社製のターボプロップ旅客機「サーブ340B」が日本の航空会社から姿を消しました。JALグループのJAC、HACで使用されていましたが、両社でどのような差があるのでしょうか。

HAC機はJAC機の後継タイプ…違いは?

 2021年12月をもって、日本の航空会社から姿を消した旅客機が、スウェーデンのサーブ社製のターボプロップ機「サーブ340B」です。日本の航空会社では、鹿児島拠点のJAC(日本エアコミューター)と、札幌丘珠拠点のHAC(北海道エアシステム)へ導入され、おもに地方路線や離島路線などで使用されてきました。

 ともに退役時はJAL(日本航空)グループに属し、退役時の塗装もほとんど同じではあるものの、この2機の仕様は、実のところ若干異なります。


上がJACの「サーブ340B」、下がHACの「サーブ340B-WT」(乗りものニュース編集部撮影)。

 先に導入されたのは、JAC仕様の「サーブ340B」。国産ターボプロップ機YS-11の後継機種として1992(平成4)年に導入され、11機体制で、2019年まで約27年使用されていました。

 HAC仕様の「サーブ340B-WT」は、JACのものより6年後の1998(平成10)年に導入。3機体制で、2021年の12月26日のフライトをもって、定期旅客便から全機が退役しています。

 HACで最後まで飛んでいたサーブ340B-WTは、340Bの改良派生型にあたります。荷物棚の容積増大をはじめ客室設備がアップデートされているほか、主翼が片翼あたり約60cm延長されています。「-WT」はこの延長された翼を示す名称「ウイングチップ」の略とされています。

型式以外にも差があったJACとHACの「サーブ340B」

 340B-WTのほうが翼が長い分、失速速度が低く設定されています。そのため、より低速で着陸ができ、ひいてはこれは、短い滑走路へ安定して着陸できるというメリットにつながります。

 また、同じJALグループの同シリーズながら、JAC仕様機とHAC仕様機では客室に違いがありました。


「ジャンブシート」。左がJAC仕様機で右がHAC仕様機。ともに共通のシートカバーとなっている(乗りものニュース編集部撮影)。

 JAC仕様機は退役時、歴史を感じるクラシカルなシートを採用していました。シートカバーはCA(客室乗務員)が座る「ジャンプシート」と同系統でまとめられ、ひじかけには「灰皿」も。機内で喫煙が許されていた時代からこの席が搭載されていた名残でしょう。

 一方HAC仕様機は、2017(平成29)年にシートを新仕様のものに変更しました。JALグループ国内線で当時主力だった仕様と共通性が窺える革張りの薄型シートで、シートポケットの位置が上にあることで、足元にゆとりが生まれています。「灰皿」はもちろんありません。

 なお、両機とも席数は36席。ともに席数の横配置は左1列、右2列が標準で、最後部のみが右3列のレイアウトを取ります。手荷物の収納棚が右側のみの設置に設置されている仕様も同じでした。