戸建ての修繕費は築30年以上で平均532万円⁉ 積み立てている人はわずか
戸建て住宅は、マンションと違って管理費や修繕積立金がかからないから負担が軽そう――そう考える人が少なくありません。しかし、建築後の経過年数が長くなれば、当然のことながら戸建て住宅にも修繕費がかかるようになります。取得時からそれを念頭において準備しておく必要があるのですが、それができていない人が意外に多いようです。
マンションでは月額1万円以上の修繕積立金
マンションでは、通常は分譲会社から委託を受けた管理会社が新築時に30年、35年の長期修繕計画を立てて、それに必要なお金を修繕積立基金として区分所有者から徴収し、その上で毎月修繕積立金を集めています。そうしないと、建物の老朽化が進み、居住性が低下すると同時に、資産価値も下がります。
そのため、マンションを買う人たちも修繕積立金を当たり前のことと考えています。
国土交通省が5年に1回実施している「マンション総合調査」によると、修繕積立基金の1戸当たりの平均負担額は26.9万円で、月額修繕積立金の平均は1万1,877円です。修繕積立金は建築後の経過年数が長くなるほど高い傾向にあります。比較的築浅の物件ではかなり少なくなっていますが、これは「段階増額方式」を採用しているマンションが増えているためです。当初の負担を少なくして、買いやすくしているのですが、5年後、10年後には増額されることになっています。当初は月額1万円を切っていても、すぐに1万円以上になってしまいます。
築年数が20年を経過したマンションの場合には、広さが70~80平方メートルの場合、月額1万2,000円台から1万4,000円台が一般的です。
修繕費を積み立てている人は1割に満たない
月額1万2,000円としても年間では14万4,000円、月額1万4,000円なら年間16万8,000円ですから、その負担がない戸建て住宅のほうが格段にラク――そう考えたくなりますが、それは大変な間違いです。
当然のことですが、戸建て住宅にも修繕費用はかかります。マンションなら管理組合が強制的に修繕積立金を集めて計画的に修繕を実施してくれますが、戸建て住宅の場合には、所有者一人ひとりが自分で計画を立てて修繕を実施していかないといけないのです。それをしないと、想定以上に老朽化が進行して、本来なら50年、100年と住み続けられる住宅が、30年、40年で住めなくなったりしかねません。
にもかかわず、残念ながら十分な準備ができている人は多くないようです。
不動産情報ネットワークのアットホームが、新築の戸建て住宅購入後30年以上住み続けている人を対象に調査したところ、修繕費を積み立てている人はわずか8.3%で、残りの91.7%は積み立てていませんでした。
積み立てている人は月額平均2.5万円に
積み立て実行派は1割に満たないとはいえ、実際にどれくらい積み立てているのかといえば、月額平均で2.5万円という結果でした。積立期間は平均14.7年で、積み立て額の総額は平均245.3万円でした。
調査は新築一戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞いていますので、ある程度老朽化が進んだ段階から、あわてて積み立てを始めた人が多いのではないかと推察されます。
修繕費として積み立てを行っていない人でも、必要に応じて修繕を行っているのですが、その資金をどう捻出したかといえば、修繕費のためではない「貯蓄」を取り崩している人が76.7%と最も多くなっています。子どもの教育費や老後資金などを使ってしまうと、いざというときに困った事態に陥りかねません。
そのほかでは、「退職金」や「ボーナス」を修繕費に充てる人が多く、なかには「借入金」という人も7.9%います。
平均は木造で470万円、鉄筋・鉄骨は618万円
では、皆さん、戸建て住宅の修繕費にどれくらいかけているのでしょうか。構造別・築年数別にみたこれまでにかけた修繕費用の平均は図表3にある通りです。
今回の調査対象のうち木造住宅に住む人が約6割を占めていますが、彼らのこれまでにかけた修繕費の平均額は470.2万円でした。築30年~築44年までは300万円台から400万円台で済んでいますが、築45~49年では748.2万円で、築50年だと630.0万円かけています。もちろん、一度にそれだけの費用をかけたわけではなく、何回かに分けて実行した人が多いのでしょうが、それでもけっこうな負担ですから、やはりある程度準備しておく必要があるのではないでしょうか。
残りの4割は鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住まいですが、その場合には木造に比べて修繕費用が高めになるようです。やはり図表3にあるように、平均は617.7万円で、築45~49年は881.3万円で、築50年だと1,475.0万円かかっています。
1回目の修繕費はキッチンが110万円台の最高に
この修繕費、どんなところにどれくらいかけているのでしょうか。
合計の費用が一番かかっているのは、図表4にあるように外壁の173.4万円でした。これまでに平均1.8回実施されていて、1回目の実施時期の平均は19.4年でした。次いで、屋根が144.5万円で、こちらは平均1.6回で、1回目は平均21.1年です。
外壁は1.8回修繕しているので、合計費用が一番高くなっていますが、1回目の費用は平均96.6万円でした。それに対して、1回目の費用が最も高かったのは、キッチンの平均110.5万円です。1回目の実施時期の平均は25.3年ですから、平均の実施回数は1.3回にとどまっています。
キッチンは住宅設備のなかでは比較的長持ちするほうですが、それでもいざ取り換えるとなると、けっこうな金額になります。設備としてのキッチンシステムの値段だけではなく、水回りの各種の工事が伴うこともあって、費用負担が重くなるようなので注意が必要です。
特に、30年以上前の戸建て住宅だと、システムキッチンは普及していても、食器洗い乾燥機はなかったでしょうし、レンジフードなども進化しています。新たな設備も入れるとなると、けっこう費用がふくらんでくるので注意が必要です。
戸建て住宅の寿命は平均56.6年という見方
ある程度の年数が経過すると、修繕費用がどんどんかさんできますし、いくら費用をかけても、なかなか居住性が改善しないようになってきます。だったら、建て替えたほうが手っとり早いのではないかということになりますが、戸建て住宅に住んでいる人たちは、戸建て住宅の寿命をどう考えているのでしょうか。
その結果が図表5です。一般的には、木造より鉄筋・鉄骨造のほうが長持ちするとみられていますが、どちらも50年から59年とする人が半数前後を占めており、平均するとともに56.6年という結果でした。
多少我慢すればもっと住み続けられるかもしれませんが、快適な生活を考えるとそのあたりがひとつのめどということでしょうか。
ただ、一般社団法人住宅生産団体連合会の「2020年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」によると、大手住宅メーカーで住まいを建て替えた人の、従前住宅の経過年数の平均は39.0年ですから、それ以前に建て替える人も少なくないようです。
いずれにしても、築年数が長くなってくれば、かけるべき修繕費用との見合いで、建て替えも念頭において検討する必要があるでしょう。