プロパンガスが割高になってしまう理由、1人暮らしのガス代を手軽に節約する方法は?
日本で提供されているガスには、天然ガスを原料とした「都市ガス」と、主に石油を原料にした「プロパンガス」の二つがあります。そして、ガス代については、都市ガスとプロパンガスでその金額に大きな差が出るといわれています。実際に1人暮らしをしている人のガス代の平均はいくらくらいなのでしょうか。また、ガス代を節約する方法についてもあわせて解説します。
1人暮らしのガス代はいくら?
総務省が発表している「2020年家計調査」によると、1人暮らしのひと月あたりのガス代の平均は3,021円と、前年のデータ(3,012円)からほぼ横ばいとなっています。また、四半期別にみると、2020年1~3月ではひと月あたり3,333円、4~6月では3,155円、7~9月は2,380円、10~12月においては2,533円と、1~3月の冬場が一番高く、7~9月の夏場が一番安くなる傾向にあることがわかります。
冬場にガス代が高くなる原因としては、暖房機器を使う頻度が高くなることや、水温が低いため、炊事やお風呂などでお湯を使う際にお湯が温まるまでの時間がかかる点が挙げられます。また、自炊をする人としない人ではガス代に大きな違いが出るでしょう。そのほか毎日お風呂にお湯を溜めて入浴するか否か、さらには住んでいる地域によっても差が生じます。プロパンガスは都市ガスより火力が強いというメリットがあるものの、都市ガスと比べると高額になるというデメリットがあります。
プロパンガスが都市ガスより高くなる理由
なぜプロパンガスのほうが都市ガスよりも高いのでしょうか?
その原因は原料と料金体系の違いにあります。プロパンガスは石油を原料としているのに対し、都市ガスは天然ガスを利用しています。
料金体系の違い
ガスの利用料金は、基本料金と使った分だけかかる従量料金を合算した額で請求されます。
都市ガスの場合は、燃料費や事業運営のための費用(総括原価)を料金に反映させて、収入と原価が釣り合うように料金を設定する総括原価方式を採用していました。(2017年4月のガスの小売り自由化後、総括原価方式による料金認可制は廃止されました。)2021年10月に東京ガスや大阪ガスなど旧一般ガスみなしガス小売事業者への経過措置料金規制が解除されたことにより、価格競争が起こり、都市ガス料金がより安くなることが期待されています。
一方、プロパンガスは販売事業者によって自由に価格を決めることができるため、適正価格よりも高い金額となる可能性が指摘されています。
では、実際に10立方メートル(以下単位をm3と表記)使用した場合のガス代はそれぞれいくらになるのでしょうか。ガスの料金は地域によって異なることから、東京都の場合で比較してみましょう。
このように、プロパンガスと都市ガスでは同じ利用量でも、その利用料金に大きな違いがあることが分かります。
配送費が高い
また、供給体系の違いも原因の一つといえます。都市ガスは各家庭まで配管を設置し、それを利用して提供することから、初期の設備投資はかかるものの、安定した供給が可能です。それに対しプロパンガスは定期的にボンベを配達し、交換する必要があるため、その配達コストが大きく反映されているといえます。
プロパンガスと都市ガスの料金を計算してみよう
では、実際の生活において、プロパンガスと都市ガスにはどの程度料金に違いが出るのでしょうか。上で比較した際には同じ利用量(10m3)で比較しましたが、プロパンガスの場合は同じ量で都市ガスのおよそ2倍の熱量を発生することから、実際の利用量は半分として考えることができます。1人暮らしの平均的な使用量はプロパンガスであれば5m3といわれているため、都市ガスであれば10m3ということになります。この量で比較すると、いくらになるのでしょうか。
このように、1人暮らしの場合でも、その利用料金については約2倍の開きがあることがわかります。
ただし、都市ガスも2017年のガスの小売全面自由化により、一般ガス事業者が家庭等へのガスの供給を独占していた状態から、登録を受けた事業者であればガスの小売事業へ参入できるようになり、料金規制が原則解除されたことで、業者間の価格差が生まれるようになりました。その影響で、利用者の少なく、価格競争が起こりにくい地方のガス局では都市ガスの単価が上がり、その差は小さくなる傾向にあります。
たとえば山陰地方の島根県松江市を見てみると、同じ10m3の利用での同時期料金は3,212円(2021年11月調整単位料金)となっており、東京ガスの場合と比べて、約1,000円高くなっています。しかしそれでもプロパンガスのほうが高いため、都市ガスにすれば毎月のガス代を抑えることができるということがわかります。
プロパンガスのメリットとは
都市ガスに比べて割高なプロパンガスですが、メリットもあります。プロパンガスを選ぶメリットは以下のとおりです。
・都市ガスと異なり、容器に充填して配送することから、全国どこでも利用できるため災害時に被災地への運搬が可能。
・半永久的に保存可能なため、非常用の備えとして利用できる。
・発熱量が高いため、利用量が都市ガスの半分で済む
1人暮らしのガス代を手軽に節約する方法は?
一般的な1人暮らしの部屋でガスをよく使う機器には、ガスコンロとガス給湯器があります。それらの利用にあたり、ガス代を節約するために簡単に取り組める方法について解説します。
1人暮らしのガス代を節約する方法~ガスコンロ~
いつもガスコンロを利用するとき、鍋底より火を大きくして利用していませんか?実は鍋底に隠れるくらいの火力でちょうどよいといわれています。鍋ややかんの底周りよりも火のほうが大きいなと感じる場合は、火力を少し弱めてみましょう。経済産業省資源エネルギー庁作成の資料「家庭の省エネ徹底ガイド」によると、水1リットル(20度程度)を沸騰させる時、強火から中火にした場合(1日3回)、年間でガス2.38m3の省エネにつながり、約410円の節約になるそうです。
また、温め直しの際には必ず蓋をすることも節約ポイントです。また、コンロの定期的な掃除も効果的です。油によってコンロが目詰まりしていると、その分火力の伝わる効率が悪くなります。
冷凍ものを解凍する場合は、解凍時間や光熱費考えると、湯せんよりも電子レンジを使ったほうが光熱費を下げることが可能です。同様に、お湯を沸かす際に電子ケトルを使えば時間の短縮にもつながります。
1人暮らしのガス代を節約する方法~ガス給湯器~
ガス使用量の7~8割はガス給湯器が占めるといわれています。入浴の際には、お湯を張ったらすぐに入ったり、温度設定を低めにして半身浴など行ったりすることでガス代も節約できます。ほかにも、頭や体を洗っているときにシャワーを出しっぱなしにしないことや、節水シャワーヘッドを取り付けることも節約効果が期待できるので、思い当たる方はぜひ試してみましょう。
前述の「家庭の省エネ徹底ガイド」には、45℃のお湯を流す時間を毎日1分間短縮するだけで、年間でガス12.73m3の省エネにつながり、約2,180円節約効果が期待できると書かれています。同時に、年間4.38m3の節水にもつながり、水道代も約1,000円安くすることができるそうです。
まとめ
ガス代については、利用するガスがプロパンガスか都市ガスかだけでなく、自炊や入浴時のお湯張りの頻度、さらには住んでいる地域によっても違いがあります。特に、2017年の4月より、電力に続いてガスの自由化が始まり、多くのガス会社が誕生しています。
この自由化によって、各社のサービス内容や料金を比較し、自分の好きなガス会社を選ぶことができるようになったことは、消費者側にとっては非常に好ましいメリットといえます。現在使っているガス会社を変更するだけで、利用料金が安くなる場合もありますので、自分が住んでいる地区にどのくらいのガス会社が存在するのかを調べて比較してみるとよいでしょう。まずは、本記事で紹介した節約方法のうち、簡単にできるものから実施してみることをおすすめします。