Galaxy Z Fold3 5G レビュー。スマホの使い方が大きく変わるが、アプリは改善の余地あり(石野純也)
おサイフケータイや防水・防塵仕様を満たしながら、待望のS Pen対応や軽量化を果たしたサムスンの「Galaxy Z Fold3 5G」。その日本版が、ドコモとKDDIから10月6日に発売されました。かねてから「S Penやおサイフケータイを載せたら買う」と宣言していた筆者も、この端末を購入。別売のS Pen Proも入手して、1週間弱、メイン端末として使ってきました。
結論から申し上げると、控えめにいってユーザー体験は「最&高」。約23万円払ったかいがあったと感じています(割賦なので、払うのはこれからですが)。まず、何がいいかと言うと、開いたときの7.6インチディスプレイ。このサイズ感が、電車での移動中やランチ休憩中に使う際に、ちょうどいい。WebサイトはPC表示でも見やすく、dマガジン等の雑誌も縮刷版のような大きさできちんと読むことができます。
マップを見る際にも、このディスプレイが生きてきます。特に便利なのが、PayPayなどの還元が実際されている場合。利用しているユーザーは実感していると思いますが、PayPayは加盟店が多いがゆえに、画面上に利用可能な店舗を表示するとアイコンで埋め尽くされてしまことがあり、タップしても、なかなか狙った店舗が表示できません。7.6インチのディスプレイなら、そんな問題もサクッと解決でき、お得なお店を見つけやすくなります。
また、筆者はスマホやタブレット、サブPCから事務所のメインPCにリモート接続できるようにしていますが、Galaxy Z Fold3 5Gのメインディスプレイなら、これが想像以上に快適。あくまでリモート接続ではありますが、さながら超コンパクトPCのようにも使えてしまいます。しかも、少し角度をつけて折り曲げておけば、机の上に立てておくことが可能。このまま文章も書けてしまいそうなので、コンパクトなBluetoothキーボードを何か買おうかと物色しているところです。
ディスプレイが大画面なのは歴代のGalaxy Foldと共通ですが、初代にはノッチが、2代目にはピンホールのカメラがあり、全画面表示をした際に映像の一部が欠けてしまっていました。これに対し、Galaxy Z Fold3 5Gは、インカメラがディスプレイ下に埋め込まれています。網点のような処理が施されているため、ここにかかる映像の色や角度によってはさすがに目につくことありますが、違和感はかなり軽減されています。少なくとも、映像が欠けることがなくなり、何が表示されているかが分かるのは大きな進化と言えるでしょう。
その結果として、スマホでより多くのことをこなすようになりました。これまでは、電車での移動中に電子書籍や映像を見る際には、カバンからタブレットを出すか、短時間の場合は諦めてTwitterなりFacebookなりのSNSに興じていましたが、Galaxy Z Fold3 5Gならその我慢をする必要がありません。スマホと同じようにポケットからサッと取り出し、本体を開くだけ。この持ち運びやすさと大画面を両立させたところが、Galaxy Z Fold3 5Gの真骨頂です。
電車での移動中……と書きましたが、おサイフケータイ対応によって、これ1台でSuicaを使って改札を通過することも可能になりました。iDやQUICPayなどの後払いサービスも利用でき、QRコードやバーコードを使ういわゆるスマホ決済と組み合わせれば、ほぼほぼキャッシュレスでの生活を送れます。ほかのスマホでは当たり前のことではありますが、Galaxy Z Foldシリーズとしては初。これ1台をポケットに入れておけばいいという安心感があり、利用価値が高まった印象を受けます。
まだほとんど実戦投入はできていませんが、Galaxy Z Fold3 5Gと合わせてS Pen Proも購入し、手書きにもガンガン使っていこうと考えています。今のところ、内蔵アプリのGalaxy Notesで校正をしてみただけですが、この作業も、7.6インチのサイズがあってこそ。これまではiPad Proを取り出していましたが、その必要がなくなります。また、Galaxy Z Fold3 5Gは272gと、タブレットにしては軽量のため、片手で持ちながらメモを取っていくのにも最適。この端末を使いこなすうえでは、S Penの入手はマストだと思います。
ただし、Galaxy Noteシリーズとは異なり、S Penを本体に収納するような仕様ではありません。筆者はS Pen Proをペンケースに入れて本体とは別に持ち運ぶようにしていますが、これだとスマホだけをポケットに入れて子どもを公園に連れていくといったケースでペン入力ができなくなってしまいます。公園で手書きをすることはレアですが、かかってきた電話のメモを取りたいときなどには少々困ります。
こうした使い方をしたいときには、ペンを収納できるアクセサリーの「Flip Cover with Pen」を使うといいでしょう。このケースは、Galaxy Z Fold3 5Gの予約特典として提供されるほか、ドコモ、auそれぞれのオンラインショップでも販売されています。残念なのは、予約特典の送付が後日になってしまうこと。S Penによる手書き入力をすぐに使いたいときには、ダブり覚悟で買うか、予約特典には含まれないS Pen Proを選択するしかありません。予約特典とはいえ、この辺のオペレーションは、もう少し考慮してほしいと感じた次第です。
もっとも、筆者はスマホにケースをつけない派の人間で、Galaxy Z Fold3 5Gも裸運用しています。約24万円の端末をケースなしでポケットに入れるのはなかなかなチャレンジャーだと自分でも思っていますが、「ケータイ補償サービス」という見えないケースに守られているので安心感はあります。Galaxyの場合、東京・原宿にあるGalaxy Harajukuで店頭修理も行っているため、近隣に住んでいれば修理にかかる時間も短くなります。
ポケット運用していた少々気になったのは、重さと厚さ。先ほど272gは軽量と書きましたが、それはあくまでこの端末をタブレットとして見たときの話で、折りたたんでポケットに入れるとやはりズッシリとした重みを感じます。また、折りたたんだときの厚みが14.4mmになるため、重量と相まって、お尻のポケットに延べ棒のようなものを突っ込んだかのような存在感を感じます。ベルトのないイージーパンツのような楽チン服だと、歩いているうちにずり落ちてきてしまいそうなほど。3代目で軽量化は図られていますが、この取り組みは今後も継続してほしいと感じました。
ポケットに入れていると、折りたたんだときのすき間からいつの間にかホコリが入っているのも気になるポイント。開いたときに、割と繊維のようなものが付着していることが多く、その量は通常のスマホ以上。いったん入ってしまったホコリが、折りたたんでいるゆえに出ていきにくいのかもしれません。実用上の害はないのですが、ダメージが蓄積された際にディスプレイの内側に入り込んでしまわないか、少々心配になります。
ほかにも、ソフトウェア的に少々気になる点はあります。サムスン純正アプリを使っているぶんには、閉じても開いても快適に使えますが、サードパーティ製のアプリの中には画面サイズに最適化されていないものが散見されます。例えばTwitterやFacebook。カバーディスプレイで使う際には通常のスマホと同様なのですが、メインディスプレイでもそのレイアウトを踏襲しているため、何とも間延びしたようなレイアウトになってしまいます。Instagramに至っては、ご覧の通り、画面中央部を使うだけという悲惨なUIです。
Chromeも同様で、特にこれと言って7.6インチのメインディスプレイに最適化されたような機能がありません。純正ブラウザなら、リンクをドラッグして画面を分割するような機能がありますが、ブックマークやパスワードをGoogleアカウントで同期できないのが難点。また、スマホ用レイアウトがあるサイトの場合、カバーディスプレイではスマホ用、メインディスプレイではPC用で表示できれば便利なのですが、これもユーザーが手動で切り替える必要があります。
Androidのフォルダブル対応をうたっていたグーグルですが、ここはもっとがんばってほしいところ。タブレットに弱いAndroidの弱点が思いっきり出てしまっている印象があります。Twitterはアプリではなくブラウザを使うなどの回避策はあるものの、サードパーティ各社とも、もう少しタブレットビュー的なUIに力を入れてほしいと感じました。
とは言え、2つのサイズで使えるGalaxy Z Fold3 5Gには、そのデメリットを上回るだけの利便性があります。従来の端末では使わなかったようなアプリ、コンテンツを利用するようになったという意味では、スマホの利用シーンを広げる端末と言えるのかもしれません。画面サイズが広がっただけと言えばだけですが、スマホが持つ本来の力を引き出しているような印象すら受けます。カメラの進化ばかりがフィーチャーされる昨今のスマホに飽き始めている人にこそ、お勧めできる1台です。
関連記事
大画面とSペン対応のGalaxy Z Fold3 5GはGalaxy Noteの後継機だ
Galaxy Z Fold3 5G / Galaxy Z Flip3 5G実機レポ