Photo: Adobe Stock

写真拡大

これまでは、「売上最大化、利益最大化」が常識だった。
これからは、「売上最小化、利益最大化」が常識になるかもしれない。
「株価上昇率日本一(1164%)の超効率経営」
「従業員一人あたり利益がトヨタ、NTT、三菱UFJ、KDDI、三井住友FGより高い」
「新卒初任給は日本で2番目(2021年実績)の高さ」
という「北の達人コーポレーション」木下勝寿社長、
初の著書『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』
が発売たちまち5刷。中国、台湾、ベトナムからも翻訳オファー。日経新聞にも2回掲載された。
「びっくりするほどよい商品ができたときにしか発売しない」
という圧倒的な商品開発でヒットを連発。
「会社の弱点が一発でわかる“5段階利益管理表”」
「売上を半減させ、利益を1.5倍、利益率を3倍にする方法」
「売上ゼロでも生き残れる“無収入寿命”」
「組織全体にコスト意識が生まれるたった一つの方法」
を記念すべき初の書籍で惜しみなく公開し、
「不況下では、売上10倍はリスク10倍」と断言する木下社長を直撃した。

人生を変えた
「NTTのテレホンカード」事件とは?

 私がマーケティングに最初に興味を持ったのは、高校生のときだった。

 父親が買ってきたビジネス誌をたまたま読んだ。そこに「テレホンカード」の収益性を高めるための「仕掛け」が書いてあったのだ。

 当時、公衆電話は3分10円で硬貨しか使えなかった。

 長時間使うには、硬貨をジャラジャラ用意しなければならなかった。

 そんな中、NTT(当時は日本電信電話公社=電電公社)が1枚500円程度のプリペイドカードを販売し、公衆電話の挿入口に入れれば通話できるようになった。

 これにより、ユーザーは劇的に便利になった。

 しかし、NTTにとっては同じ500円の通話売上でも、

硬貨の場合:原価=回線使用コスト
カードの場合:原価=回線使用コスト+カード原価→利益減

 となる。

 そこでNTTは「カードを買っても使われなければ、回線使用コストはかからない。収益性が増す」という逆転の発想でアイデアを練った。

 それが「テレホンカードをコレクション対象にさせる戦略」だったのである。

 そのための仕掛けとして、最初は、グレーで無機質のデザイン性の乏しいテレホンカードをリリースした。

 それでも硬貨に比べると便利なので大ヒット。

 多くの人たちは「使う」ために買った。

 そして、それが浸透した頃、満を持して、芸術家、岡本太郎氏のデザインした4種類のカードを発売した。これも大ヒットした。

 このとき、人々は「使う」ためではなく「コレクション」のために買った。

 その後はアイドルのブロマイドのような「使うのではなく集めたくなる」カードを発売し続けた。

 感覚値ではあるが、世の中に出回ったテレホンカードの2〜3割は眠ったままではないか。それはすべてNTTの「回線使用コストという原価のかからない売上」となった。

 私はこの記事に衝撃を受けた。

 自分の手元にあるこのアイドルタレントのテレホンカードは、NTTの仕掛けによって自分の手元に使われないままあるのだと知った。

 高校生ながら、「世の中は仕掛けで成り立っている」と知った瞬間だった。

 そこからは、見るものすべて「どんな仕掛けでこうなったのか」と思うようになった。仕掛けが見えると世の中が変わって見える。

 そして、世の中が俄然面白くなる!

 あのときから、世の中はとても楽しいワンダーランドに見えるようになった。

 ヒットを生み出すには、

1.商品、作品等の対象物に対して造詣が深い
2.消費者に対する畏敬の念を持っている
3.世の中の「仕掛け」に精通している

 この3つの要素を持ったプロデューサーになる必要がある。

 今の私がこの3つをどれだけ兼ね備えられているかわからないが、少なくともこの3つの要素をこれからも磨き続けたいと思っている。