失踪の五輪ウガンダ選手、帰国で「危険な目にあうおそれ」 難民弁護団が行政の対応を批判
東京五輪の事前合宿(大阪府泉佐野市)から行方不明となり、その後、保護されて、難民申請をもとめたとされるウガンダ選手団の選手が帰国したとの報道を受けて、「全国難民弁護団連絡会議」は7月27日、記者会見を開き、日本政府や大会組織委に申入書を提出したことを報告した。
東京五輪・パラリンピックで来日した選手らが難民申請を希望した場合は、難民としての審査を受けるために最大限の援助をすることなどを要請している。
提出は7月22日付。大会組織委、内閣総理大臣、法務大臣、総務大臣、警察庁長官、東京都の公安委員会にメールで送ったうえで、27日に改めて郵送したという。
●大使館の説得を受けてウガンダに帰国した選手
難民申請をもとめたとされるのは、7月16日に大阪府泉佐野市の合宿所から一時失踪したジュリアス・セチトレコ選手だ。
同20日に三重県で発見され、翌21日、東京・渋谷署で難民申請の意向を示したが、ウガンダ大使館による説得を受けて、その日の夜に成田空港から帰国したと報じられている。
連絡会議の世話人をつとめる児玉晃一弁護士は、21日に渋谷署で、選手との面会をもとめたが、担当する大阪府警は応じなかったという。
また、その場に身分証をつけた泉佐野市の職員とみられる人物らがいたため、尋ねると「ここにいますよ。難民申請はしないことになりました」などと言われたという。
ほかにも、職員らが、ウガンダ大使館職員と肘でハイタッチしているのを目撃したそうだ。
児玉弁護士は、帰国した選手が、ウガンダ政府から危険な目に遭わされるかもしれないと危惧する。
そのうえで、五輪のサポートのために協力してきた泉佐野市とウガンダ大使館が、共同して帰国の説得にあたったのだろうと推測する。
「市役所や警察のかたが難民の問題について詳しくないことはある意味しかたない。しかし、難民申請の意向を示した人を大使館の人に会わせるのはとんでもないことだと知ってほしい」(児玉弁護士)
●要請の趣旨
(1)難民認定申請者の意向を有する選手らには、難民としての審査を受ける機会を保障しなければならない。
(2)公的機関が、選手らの難民認定申請の希望を把握した場合、弁護士や支援団体に連絡すること。
(3)日本政府は、帰国した選手の追跡調査をおこなうこと。