道新の報告書は「責任逃れが滲んでいる」 記者逮捕めぐり新聞労連が声明
新聞労連は7月12日、北海道新聞の記者が国立大学法人旭川医科大(北海道旭川市)の学長選考会議を取材中に建物内に無断で侵入したとして建造物侵入容疑で現行犯逮捕された事件について、声明を発表した。
北海道新聞が7月7日に掲載した社内調査報告について、「不十分な中身の報告書を看過できません」と疑問を呈した。
●北海道新聞の報告「自らの責任逃れが滲んでいます」
北海道新聞は社内調査報告で、記者が指示を受けた経緯について「電話や無料通信アプリのLINE(ライン)で複数のやりとりがあったため、キャップがこの指示を出したのか、別の記者なのか、はっきりしません」とし、一連の経過について「取材方法を指導するべき報道部の部次長や、報道部の業務全体を統括する部長の関与が不十分だったと考えています」と結んでいる。
これに対し、声明は「現時点で明確な表現を避け、あいまいな点もあります。発生から2週間後に公表された今回の調査結果は残念ながら組合員らの期待を裏切るものであり、現場に責任を押し付けるばかりか、自らの責任逃れが滲んでいます」と批判。
「業務命令に基づき遂行されていた業務についての責任は原則として会社にあります」とし、「情報共有や指示の不徹底、新人記者を単独で立ち入り取材させたことなどの『全責任は会社にある』と明確に示すべき」、「現場に責任があると言わんばかり」と指摘した。
●記者逮捕「行き過ぎ」
また、取材中の記者を大学関係者が現行犯逮捕した今回の事件については、「『行き過ぎ』だと考え」るとし、記者の身柄拘束の必要性については「改めて検証されるべきもの」とした。
「法を侵してまで取材するのはおかしい」という批判に対しては、「重要な取材対象である限り、取材を拒否されても対象に可能な限り迫ることは新聞記者の常であり、場合によっては使命であるはず」とし、「『施設管理権』を根拠として記者が公的機関に立ち入ることができないということが一般化してしまえば、取材の自由、報道の自由は形骸化し、それにより犠牲となるのは国民の知る権利です」と訴えた。