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子育て中の親にとって、子の祖父母からの子育て支援は何よりの支えとなる。「週刊新潮」(7月15日号)によれば、タレントの熊田曜子さんにとって、夫の母が育児に貢献してくれる貴重な存在だったようだ。

しかし離婚協議が始まってからは、夫との関係だけでなく、夫の母との関係にもヒビが入ってしまったという。同誌は熊田さんの夫の「これまで親身になって面倒をみてきた子どもたちと会えず、母は憔悴し切っています」というコメントも掲載している。

別居している以上、子どもは離れて暮らす親や祖父母と自由に会うことは難しいかもしれない。とはいえ、親との面会交流があるように、祖父母との面会交流は法的にはどのように定められているのか。加藤寛崇弁護士に聞いた。

●「祖父母からの面会交流の申立ては認められない」

――別居中や離婚後、離れて暮らす親が子どもと会う「面会交流」ですが、孫と会えなくなった祖父母は法的な対応策をとれるのでしょうか

離婚した元夫婦又は婚姻中の夫婦で別居した場合に、父母の間で子どもとの交流について合意できないときは、子どもと同居していない親(別居親)が、家庭裁判所に、子どもと同居している親(同居親)に対して、子どもと面会させるよう命じるよう求めること(面会交流申立て)ができます。

一方、子どもの祖父母については、法律上そのような申立てができる定めはありません。最高裁2021年3月29日決定では、別居親の祖父母が子どもの面倒をみてきた場合であっても、祖父母から面会交流の申立てをすることはできないと判断されました。ですので、祖父母からの面会交流の申立ては、法改正でもされない限りは認められません。

――離婚や別居後の面会交流は難しいということでしょうか

そうとは言えません。別居親が子どもと直接面会する場合に祖父母が同席することは可能なので、本来は、祖父母との面会交流については、別居親との面会交流の問題として扱えば足ります。

別居親と同居親の面会交流の実施方法としては、ある場所・時点で別居親が同居親に子どもを引き渡し、その後、同居親が別居親に子どもを受け渡す(返す)ということも多く、その場合は、子に悪影響が及ばない限りでは、面会交流時間中に祖父母も交流すればよいことです。

先ほどの最高裁決定は別居親自身は亡くなっていた事案でしたが、そのような事情がなければ、あえて祖父母からの面会交流申立てをする必要は乏しいといえます。

●当事者間で折り合いがつけば「いくらでも交流可能」

――ケースバイケースですが、離婚後も夫婦の高葛藤が続いている場合、祖父母はどう関われるのでしょうか

他方で、父母の対立が強いときなど、ケースによっては、裁判所が直接面会を認めても、面会交流の支援機関の施設内で「別居親と子どもら(2人)の3名で交流する」などと面会交流方法が定められ、別居親と子どもとの面会に限定されていることもあります(東京高裁2017年11月24日決定)。こうなると、祖父母が面会交流に関わるのは困難です。

もちろん、これはあくまで裁判所の手続に持ち込んだ場合の話であり、当事者で折り合いがつくのであれば、祖父母であろうといくらでも交流は可能です。

そうでなくとも、面会交流はなるべく当事者で協議して折り合って実施するのが望ましいことではあります。対立が激しくなれば父母の面会交流すら円滑に実施できないことが多いので、祖父母との交流は尚更困難と言わざるを得ません。

【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/