なぜ銀座線は「最強」なのか 多方面から「よく利用する」「便利そう」まだまだ進化?
アンケートで、関東/関東外に住む人双方から「よく利用する」「便利そう」の意見が最も多く集まった東京メトロ銀座線。その理由はどこにあるのでしょうか。路線の特徴や歴史から探ってみます。
「東洋初の地下鉄」の知名度
「乗りものニュース」では2021年4月23日(金)から4月26日(月)にかけて、東京の地下鉄で利用したことがある路線に関するアンケートを実施。907人から回答が集まりました。
そのうちの「東京の地下鉄路線のうち、よく利用する路線はどれですか」に対する質問で、関東地方に住む人、関東地方以外に住む人の双方から最多だった回答が、「東京メトロ銀座線」(43.9%)でした。2位の「東京メトロ丸ノ内線」(37.5%)を引き離したうえ、「東京の地下鉄路線のうち、便利そうだと思う路線はどれですか」に対する質問でもトップ(41.3%:2位の丸ノ内線は33.2%)となりました。銀座線が人気の理由はどこにあるのでしょうか。
銀座線の1000系電車(画像:写真AC)。
「東洋初の地下鉄」とも言われる銀座線は、その知名度の高さも人気のひとつかもしれません。1927(昭和2)年、東京メトロ(営団地下鉄)の前身 東京地下鉄道が浅草〜上野間を開業させ、1934(昭和9)年までに新橋駅へ延伸。当時、東京で最大の繁華街だった浅草を出発し、江戸時代からの商業地区である日本橋、京橋、銀座を経由しています。現代でも都心とされる地域です。
一方の渋谷駅側からは、同じく東京メトロ(営団地下鉄)の前身である東京高速鉄道が、1938(昭和13)年に虎ノ門駅まで開通させます。翌1939(昭和14)年、虎ノ門〜新橋間が延伸。東京地下鉄道と東京高速鉄道が新橋駅で接続し、両線は直通運転することで、浅草〜新橋〜渋谷間が全線開通しました。なお2年後の1941(昭和16)年、両社は帝都高速度交通営団(営団地下鉄)として統合されます。
「便利なところ」を聞いてみた
では銀座線の「便利なところ」はどのような点でしょうか。アンケートから読者の声を抜粋してみます。
・地下の浅いところを走っているので乗り降りしやすい(55〜59歳男性ほか多数)
・運行本数が多い(35〜39歳男性ほか多数)
・日本初の地下鉄だけあって東京の繁華街を効率よく走っている(20〜24歳女性ほか多数)
・百貨店アクセスの良さ(〜19歳男性)
・遅延が少ないため(70歳以上女性)
銀座線は、概ね2〜3分に1本という高頻度で運行される(2018年8月、伊藤真悟撮影)。
地下浅いために、地上からプラットホームまでのアクセスの良さを利点に挙げる人が多く見られました。先述の通り歴史が古い同線は、大通りに沿って地面を人力で掘り返し、線路敷設後に埋め戻すという開削工法(露天掘り)が主流の時代につくられています。
運行本数については、概ね2〜3分に1本という高頻度です。2021年現在、銀座線を走るのは1000系電車。これは全長16mで6両編成と、都心部の輸送力を考えると不足しがちです。このため運行本数を多くすることで、輸送の安定性を保っています。
仕事や観光という面で見ても、銀座線は東京の主要地を通っています。先述の浅草や銀座、渋谷のほか、ビジネス街の新橋、官庁街の虎ノ門や赤坂見附、おしゃれな街として取り上げられる表参道など、全線にわたって集客力のある地域同士を結びます。
当時は珍しかった「三越前」という駅名
特に百貨店については、三越前駅がその名の通り日本橋三越本店に直結。駅建設にあたっては、三井財閥が建設費負担を条件に駅を誘致したとされています。当時、企業名がそのまま駅名に採用されるのは極めて珍しいことでした。
ほかにも松坂屋が上野広小路駅に、高島屋が日本橋駅に、明治屋が京橋駅に、松屋銀座が銀座駅にそれぞれ直結しています。高島屋も駅建設費を負担したほか、明治屋京橋ビルは現存する地下鉄と一体化したビルとしては最古です。西側の終点 渋谷駅でも、2020年3月まで東急百貨店東横店の中にホームがありました(その後解体)。
日本橋三越本店に併設された三越前駅の出入口(2020年12月、乗りものニュース編集部撮影)。
意見として挙がった「遅延の少なさ」も見てみます。銀座線は丸ノ内線とともに、東京メトロの9路線の中では他社線と直通運転をしていません。これは線路幅や電力供給方法が異なることなどが理由です。単独路線として運行しているため、他社線の運行障害の影響を受けません。また、全駅にホームドアが完備され安全対策が取られている点も、定時運行に寄与しているといえるでしょう。
なお東京メトロによると、輸送の安定性を高めるため、標準電圧を現行の600Vから750Vに改めるほか、浅草駅構内に折返し線を整備することを検討中としています。銀座線はまだまだ進化しそうです。