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キャデラックの中ではコンパクト

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)photo:Keisuke Maeda(前田恵介)editor:Tetsu Tokunaga(徳永徹)

いきなり個人的な趣味で恐縮だが、お気に入りのTVドラマの1つに米法廷を題材にしたものがある。その主人公が乗るクルマがショーファードリブンのエスカレードである。

【画像】キャデラックXT4 プラチナム/スポーツ【写真で比べる】 全108枚

キャデラックの最上位モデルを選ぶのは米エスタブリッシュメントらしいが、ショーファードリブンでSUVというのが今風。


キャデラックXT4プラチナム。日本導入に合わせて開催されたフェアは、半数が新規のカスタマーだったという。    前田恵介

もちろん、エスカレードはそういった用途にもきっちりとはまる。なお、CT6が昨年ラインナップから整理されたため、エスカレードはキャデラックの実質的な最上位モデルとなり、SUVが基軸となったと考えていいだろう。

そしてキャデラックSUVラインナップをさらに充実すべく、末っ子として新たに加わったのが試乗した「XT4」である。

全幅は1.9m近いのだが、全長は4605mm、ホイールベースは2775mm。

ホイールベースは1サイズアップだが、平面寸法はRAV4と大差なく、国内SUVの主市場に手頃なサイズである。

ちなみにキャデラックセダン系で最もコンパクトなCT4(日本未導入)とホイールベースは共通だが全長は150mm短く、キャデラックの最小モデルでもある。

残念なことにこれまでのキャデラック車同様に左ハンドル仕様のみ。

乗降や発券所、反対車線の視認性等々から左ハンドルはハンデとして気に留める必要はあるが、XT4のサイズ設定なら車両感覚に慣れるまでにそれほど時間を必要としなかった。それもXT4が「手頃」と思わせるキーポイントの1つである。

内装 どんな感じ?

外観は人工物的……。クルマなので当然そうなのだが、生物的とか肉体的という自然背景黄金比みたいな印象が薄い。

機械機械した感じ、しかもスポーツカーやレーシングカーに媚びていない。付け加えるならSUVらしい冒険アイテム感も希薄。


キャデラックXT4プラチナムの前席内装    前田恵介

あるのはキャデラックの存在感だ。

キャデラックSUVラインナップではカジュアルな雰囲気が濃いめなのは、オーナーが自ら操りプライベートを楽しむためのクルマらしい。

インパネ周りはデザインもレイアウトも衒い(てらい)がない。8インチのセンターディスプレイはメーターパネルとほぼ同じ高さに填め込まれている。流行りのパッドPC型ではない。

スイッチ類は多いが、事前習熟なしでも使い方に見当が付くのは操作動線とレイアウトの妙味。先進感よりも馴染みやすさを優先した設計である。

後席/トランクをチェック

居心地は「見る、座る、納得」。見た目通りの寛ぎをもたらすキャビンだ。

後席の座面高はSUVとしてはちょっと低め。


競合モデルよりもリアシートの膝まわりスペースにこだわったという後席。    前田恵介

車窓からの長めを楽しむならもう少し高めで、着座姿勢もアップライトなほうがいいが、腰を低く脚を伸ばし気味にした着座姿勢はゆったりと寛いだ気分になれる。大人4名が心地よく過ごせるキャビンである。

荷室スペースは床面地上高が高めだが、容量は後席使用時でも637L。全長4.6m級SUVでは多少余裕がある。

なお、ハンズフリー機能を備えたパワーテールゲートは全車標準装着されている。

2Lターボ+9速AT 味付けは?

低回転から幅広い回転域で大トルクを発生する直噴2Lダウンサイジング・ターボ搭載。

電動化技術の導入は控え気味だが、気筒休止機構や9速ATを採用。


キャデラックXT4プラチナム    前田恵介

駆動方式は、電子制御のツインクラッチAWDシステムを採用。FF/4WDの手動および自動切替機能や後輪の左右トルク配分の最適制御、2WD(FF)時には後輪ドライブトレインを切り離しFF車と遜色ない燃費効率などの特徴を備える。

北米自動車業界を代表するプレミアムブランドとして不足ないスペックである。

100km/h巡航時のエンジン回転数はメーター読みでおよそ1600rpm。大トルク自慢のターボにしては加速移行時のダウンシフトのタイミングは早めだが、高速追い越しなどでダッシュを利かせても使用回転域は3500rpmに届くかどうか。

2段分のダウンシフトでプラス1000rpm、20km/h増速分でプラス500rpmの見当。悠々とした余力感と、加速と連動した回転上昇の伸びやかさが上手に融合されている。プレミアムとスポーティカジュアルを程よく感じられるのが、XT4のキャラに似合う。

フットワークもそのとおりの特性である。

足まわり/最低地上高の話

神経質な路面からの入力を往なすためか車軸まわりに若干の緩さを感じさせるが、ルーズあるいは曖昧といった部分はハンドリングにも乗り心地にも感じられない。

高速コーナリングでも切れ味などのスポーティ感を誇張するような反応はなく、身構えたり神経質に挙動を読み取るような運転は不要。


“キャデラック初のコンパクトSUV”としてデビュー。成約した顧客は若い層に加えて、「50〜60代の顧客もけっこう多かった(日本法人)」。    前田恵介

高速も山岳路も自然体で操れる。強い印象を与えるタイプではないが、馴染みのいい操縦感覚である。

本国仕様のカタログスペックにおける最低地上高は170mm。

SUVとしては低めであり、フロントエアダム下面処理を見ても気合いを入れて悪路に臨むようなタイプではないが、AWDシステムにはオフロードモードも備わり、ハードコアなSUV派でなければ悪路踏破も十分だろう。

オン&ラフロードでプレミアムを楽しむには程よいバランスを備えている。

「買い」か?

もちろん、最大の魅力は「キャデラック」であること。

前述の「程よいバランス」も多くのプレミアムSUVの立ち位置であり、理性で語っても魅力的な部分が多くとも性能や機能で圧倒的なアドバンテージがあるわけではない。


キャデラックXT4プラチナム    前田恵介

欧州や国産のプレミアムSUVには少々食傷気味。違った雰囲気を楽しみたいからキャデラックが気になる。そこに惚れられるかが選択の分かれ目だ。

試乗車の本体価格は670万円。先進運転支援機能もナビもボーズのオーディオ、本革シートも運転席/助手席マッサージ機能も標準装着。

OP価格でびっくり何てこともない。というか標準装備が他車のフルOP相当であり、670万円で十二分にキャデラックのプレミアムを堪能できるわけだ。

アメリカン・プレミアムの最高峰ブランドを楽しむなら、価格面でも手頃なモデルと言えよう。

XT4プラチナム スペック

キャデラックXT4プラチナム(AWD)

価格:670万円
全長:4605mm
全幅:1875mm
全高:1625mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
車両重量:1780kg
エンジン形式:1997cc直列4気筒ターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:230ps/5000rpm
最大トルク:35.6kg-m/1500-4000rpm
ギアボックス:9速オートマティック
駆動方式:全輪駆動(選択式)
乗車定員:5名


キャデラックXT4プラチナムのトランク    前田恵介