長引くステイホームの影響で、体重が増えて戻らない…というお悩みをよく聞きます。
フィンランド人の夫をもち、北欧に詳しいライターのルミコ・ハーモニーさんは、3人の出産育児とキャリアの両立に追われ、さらにコロナ禍の影響もあり、人生でもっとも重い体重になってしまいました。そこで北欧式の考え方や方法を取り入れ、なんと17kg減に成功したそう。
詳しくレポートしてもらいました。



北欧式のダイエットで17kgやせた!シンプル思考や北欧式食生活を導入



私ルミコ・ハーモニーは、人生でぽっちゃり街道を突き進んでいたうえに、3人の出産育児とキャリアの両立に追われ、体重計にのる余裕もなく8年過ごしていました。おなかの肉が邪魔で靴ひもが結びにくいな〜とは薄々思っていました。また、写真を撮られるときは細く写るようにみんなより一歩下がったり体を斜めにしたりしてごまかしていました。

●衝撃!ベスト体重から20kgオーバー!



コロナ前からかなり太っていましたが、いよいよ完全休校&WFH(ワーク・フロム・ホーム)になり、親子ともども確実にぽちゃっとし出しました。マズイと思っても、怖くて体重計にのるのには勇気が要ります。3月末からヤバいと思いながら、体重計にのれたのは5月20日のこと。なんと、自分のベスト体重から20kgオーバーで、妊娠時よりも重い自分に衝撃を受けました。

●フィンランド式「MIKSI?」(なぜ?)を導入!



やせたい人は多いですが、「そもそもどうしてやせたいか?」の動機がしっかりしてないと、ダイエットは難しいかもしれません。

私の場合、美しくなりたいと外見を磨くことより、自分は内面を磨くことで輝こうと思っており、体型や化粧にさほど力を入れたことがない人生でした。
しかしコロナ禍で明らかにプクプクしているわが子を見て、これは健康上マズイと思い始めました。成長期の子どもにとって運動は必要なのに、このまま太っていって大丈夫か心配になったのです。
また自分自身も、ベスト体重から20kg増にもなり、糖尿病を患うなどのリスクを考え始めると、きれいになりたいというより、子をもつ親として命を落とすわけにはいかないという使命感が生まれました。

「なぜ、やせたいか?」の問いに、私の場合は「きれいになりたい」では本気になれませんでしたが、「命に危険があるから」で心底やせたいと思うことができました。
やせたいと思っても今まで失敗していた方は、「このまま太ったら命の危険があるかも」と本気で思えたら、やせられるかもしれません。従来の生活習慣を変えるのには、パワーが必要です。新しい習慣を継続するためには、まず強い動機をもたないと、さまざまな誘惑や障害によって邪魔されて継続が難しいと感じています。

●シンプル思考を導入!自分のウェルビーイングを見つめる



やせたいというマインドセットができたら、そもそもなぜ太ったのかを明らかにして、毎日のカロリー摂取量をカロリー消費量が上回れば、少しずつ体重は減らしていけるはずです。落とし放題の脂肪がたんまりと体についているのですから。

巷には、さまざまなダイエット情報が溢れかえり、その情報の渦に飲み込まれて、必要なものを取捨選択するのが難しい状態です。
なのでまずは北欧的なシンプル思考を取り入れました。日本人は段取りを考えたり、相手の気持ちを忖度したりするのが得意だけれど、フィンランド人の思考は非常にシンプルで、「自分を大切にする」「自分の気持ちはしっかり伝える」というウェルビーイングな哲学にもとづいています。

今まで子どもと夕食も共にしていましたが、明らかにカロリー摂取オーバーなので、朝昼の食事で私は充分であるとすることにしました。家族にとって食事はとても大切なコミュニケーションの場で、夕食を食べないという私に夫は動揺を隠せなかったくらいです。
しかし、これほどまでに体重が増加するのは健康上よくないし、夕食のテーブルに一緒に座るとついつい食べ物に手を出してしまうので、夕食の時間は席を外させてもらうように話し合いました。

●フィンランド人が愛するサウナ風を導入!




摂取量を抑えるのも限界があります。なんとか汗をかいて脂肪を燃焼させないといけないと思って行きついたのが、「サウナ」です。
フィンランドの家庭にはサウナがほぼ常設されているほど普及しています。フィンランドへ行った際、サウナでたんまり汗をかいて、マイナスで凍てつく外気を浴びて(または湖に飛び込んで)、またサウナに戻るを何度も繰り返し、日本でも着目されつつある「サウナで整う」を経験しました。本来なら、湯船に5分も入ってられない私ですが、その喜びをサウナが教えてくれました。

とはいえ、日本の自宅にサウナはありません。あのフィンランドのサウナで汗かくのをなんとか再現しようとして、湯船にフタをして湯気が立ち込めるのをサウナとして捉えることにしました。今まで5分程度しか湯船に浸かってられなかった私も、脂肪が燃焼するイメージを強く持ち、1時間程半身浴できるようになりました。サウナで学んだ「無理をしない」を導入して、少しでもつらいと思ったらサウナのように湯船から出て少しクールダウンして、再度また入浴するを繰り返しました。

iPhoneも大いに助けてくれました。湯船の半分にフタをおいて、タオルで包みながらiPhoneで映画鑑賞したり、仕事のメールをしたり。コロナ禍で増えたオンラインセミナーを拝聴したり。じっとしてられない性格の私も、長時間入浴できたのはiPhoneのお陰です。

そして、お風呂場にこもるメリットは、ほかにもありました。私はストレス耐性が弱いので、少しでもストレスを感じた瞬間に、そのストレスをお菓子など食べることで解消しようとしていました。しかし、お風呂場だと手に届くところにお菓子がないので、ついつい口に入れちゃうというのを回避できます。自分の特性を知って、環境を整えるというのはとても大切なことだと気づくことができました。

具体的には、夜1時間〜2時間、朝1時間程入浴するのが、私のリズムです。多忙になってくると入浴ができなくなると、体重が落ちないばかりか、増加傾向に…。仕事とのせめぎ合いです。

●自然の中で自己と対話する毎日のルーティンを導入!




飽き性の私は、毎日同じルートで通勤することもできません。同じことをするのが苦手な体質のうえに、運動するのが嫌いで、ランニングとかジム通いなんてまったくできないと思っていました。

しかし、なんとか運動して消費カロリーを増やさなければ、いくら摂取カロリーを減らしても、食いしん坊の私は体重の減少傾向をつかめない。さらに、子どものステイホームでの運動不足を懸念して、遂に近所のランニングコースでキッズと一緒にランニングを始めました。

ランニングコースは1周300mで、最初は1周、翌日は2周と徐々にランニングの距離を増やしていきました。無理すると途端に嫌になってしまう性格なので、決して無理しないように心がけました。最後には小学生低学年の2人とともに、10周の3kmを走れるようになりました。

嫌々走り出して気づけたのが、自然の豊かさでした。他愛もないランニングコースでも四季の移ろいでさまざまな花が咲き乱れており、また月の満ち欠けも発見できました。同じ時間に同じ場所でいることで、逆に自然の変化を発見できたことが新鮮でした。フィンランド人もよく森の中を散歩します。少しそんな彼らの価値観に気づけた気がします。

さらに、ランニングはやせることよりも多くのことをくれました。姿勢がよくなったのです!
元々運動せず家から一歩も出ないことも珍しくない私は、猫背であることは認識していたけれど、ランニングすると身体が整っていき、必要なところに筋肉がつき、姿勢がよく走りやすいフォームになりました。やせることよりも、猫背を直したいという点で、私は今後ずっと走り続けたいとさえ思っています。

そして、3kmを20分程度で走るのは、自己と向き合う大切な時間になりました。10周のうち、4〜7周が非常にキツく、やめようかと悪魔がささやき始めます。しかし、心を無にして走り続けると、やがては10周完走できる、を毎日繰り返します。
その10周はまるで人生を凝縮しているようで、さまざまなことが学べます。湧き上がってくる自分の感情とのつき合い方、自分をコントロールするやり方です。20分という時間自分との対話がすることで、アイデアが整理できたり、くよくよ悩んでいることがどうでもいいことだと思えるようになりました。

フィンランドの冬は寒くて暗くて長く、孤独な時間が長いのが特徴。フィンランド人が「孤独」や「沈黙」を好んでいる理由が少しわかりました。東京での暮らしは、刺激が多くあまりに多くのことを詰め込んでいるので、月はおろか自分と向き合うことすらできずに日々流れていました。
たった20分、すべてを断ちきって自分と対話する時間をもつことは、「やせる」ことより優先すべき「整う」ことだと感じています。

フィンランド人が愛する「Less is more」(少なければ少ない方がよりいい)は、こういうことなのかと体感できました。沈黙がある方が、より大切なことが浮き彫りになる、というような印象です。

●食事のリズムも日本式から北欧式へ!




オートミール、ブルーベリー、キノコは北欧的な食材で、ダイエットに大活躍!

フィンランドの朝食の定番といえば、オートミールです。ベイビーの離乳食からはじまり、一生寄り添うといっても過言ではありません。最近日本でもダイエット食として着目されています。

またフィンランドは、一日に一度ホットミールと呼ばれる温かいボリューミーな食事をとり、それ以外はコールドミールと呼ばれるパン、ハム、チーズ、ヨーグルト、サラダなどですませることが多いです。ホットミールに関してもワンプレートで、準備や後片づけに労力をかけない文化があります。


高タンパクで必要なカロリーが計算されていているマッスルデリ。冷凍されており、レンジで温めるだけで、おいしい

スーパーには冷凍食品も充実していて、温めるだけで食事準備するのも一般的です。日本だと一汁三菜を意識したり、しっかりしたものをつくらないと、という意識に縛られていましたが、北欧式に変えてみることに。
栄養バランスの整った冷凍食品「マッスルデリ」をストックしておいて、レンジで温めるだけで食べられるという選択肢をもつだけで、ストレスが大幅に減ったうえ、摂取カロリーもコントロールできました。

●FIKA(コーヒータイム)とオーバーナイツオートミールを導入!



私はストレス耐性が弱く、たとえばクリエイティブな仕事をしている最中は、チョコレートやスナック菓子などを食べないとアイデアが思いつかない傾向にあります。
それをなんとか回避する策を考えたのが、コーヒータイムです。北欧では頻繁にコーヒーが飲まれます。スウェーデンでは「FIKA(フィーカ)タイム」、フィンランドでは「カハヴィタウコ」と言われ、就労規則でもコーヒーブレイクを取得することが定められていたりするくらいです。

私はあまりコーヒーを好んで飲んでこなかったのですが、フィンランド人の夫は毎朝1時間くらい時間をかけてコーヒーを堪能する習慣があります。彼が飲み残したコーヒーに豆乳を混ぜて、チョコレートを食べるかわりに午後にコーヒータイムをつくることにしました。チョコレートよりもちろんカロリーが低く、少し気持ちが落ち着けて切り替えられるので、このコーヒーブレイクは非常に私に効果的でした。

それでもどうしても甘いものやデザートが欲しくなるときがあります。そんなときは冷凍のブルーベリーを数粒堪能することもしています。
またフィンランドでは毎朝食べる「オートミール」を水で炊きます。それはさほど好みではないのですが、ダイエット動画で見かけた「オーバーナイツオートミール」というものを試してみました。寝る前にオートミールに豆乳を注いでおくと、朝にやわらかくなっていてすぐ食べられるというもの。砂糖が含まれないソイミルクを選んでもほんのり甘く、ジャンクフードへ向かう気持ちをとどめてくれます。

●計測する・記録する・パートナーを導入!SISU(フィンランド式ド根性)の精神




「体重計に毎日のること」も大事です。体重が増加してショックを受けたくないがゆえに、暴食すると体重計から遠ざかったことが何度もあります。体重計にのらないと、ずるずる「食べちゃおう!」という悪魔のささやきにそそのかされてしまいます。一方、毎日体重計にのっていれば、明日増やしたくない気持ちが勝り、つい無駄食いするのをとめるのにとっても効果的です。

私は記録するのが面倒なので、体重計の写真を撮影して非公開のネットにアップして記録しています。体重・体脂肪率・BMI・内臓脂肪値の4種を、朝起きて直ぐと入浴後の2点で計測しています。
20kg太っても気づかないタイプなら、15kgやせても、自分ではその変化を認識できません。記録した数値をたまに見て、自分の頑張りがちゃんと結果に出ていると確認することで、また頑張ろうと奮起できました。

自分一人で頑張るには限界があります。秋にいったん忙しさにかまけて、体重計から遠ざかりランニングも行かなくなってしまいました。そこから再スタートするには労力が非常に必要です。そんなとき子どもが「私も走るから、ランニング行こう」と誘ってくれ、再度ランニングの習慣をスタートすることができました。

また、フィンランドには「SISU」という哲学があります。簡単には翻訳できない思想ですが、「毅然とした決意」「強さ」「ド根性」といった意味が近しいです。暗く寒くそして長い冬という厳しい環境下においても、どうすれば幸せに暮らせるかを考え抜き、すばらしいデザインが生まれる風土のフィンランド。そういった事例を見ていると、達成したいことに揺らがず向き合い続けることで、工夫し結果を出していくことの参考になりました。

●生活のリズムを整える



こうして気づけば17kgのダイエットに成功しました。これは、フィンランドの「自分や人生と向き合う習慣」を上手く自分に取り込めたからのような気がします。このまま、食事には気をつかい、無駄食いせず、20分の自分と向き合う習慣で心身ともに整え、人生を豊かに過ごしたいなと思っています。

※個人の体験談です

【ルミコ・ハーモニーさん】



東京都在住。フィンランド人と結婚し3児の母となり、アーティスト兼活動家。バイリンガルアート集団「LITTLE ARTISTS LEAGUE」の創始者であり、アート・北欧・オーガニック・日本伝統文化などの様々な領域で活躍の幅を広げる。執筆・イラストも手がけるほか、世界のいろいろな事情について語るポッドキャスト番組「LOVE THE WORLD
」も更新中。