一部のファンからスケープゴートにされている大迫。あまりの激しさに、監督が苦言を呈するほど。(C)Getty Images

写真拡大 (全3枚)

 ファンに愛される選手には、どんな特徴があるのだろう。

 そんなことを考えたのはブレーメンの大迫勇也の置かれている状況が、かなり極端なものになっているからだ。

 今シーズンは試合に出ても出ていなくても、SNSではブレーメンのファンから批判のコメントが集中している。監督のフロリアン・コーフェルトが「ユウヤひとりに責任を押し付けるのはアンフェアだ」とコメントしたほか、チームマネージャーのフランク・バウマンやチームメイトもファンにアピールを繰り返していた。

 これまでのSNSにおけるファンの反応を見ていると、“アンチ大迫”が一定数いるのは確かだ。それも相当数。だが、槍玉に挙がっているのは大迫だけではない。矛先は思うように得点できないダビド・ゼルケにも向けられ、マンチェスター・ユナイテッドからレンタル移籍をし、その後出場機会を求めてクラブ・ブルージュへ移籍したオランダU-21代表タヒス・チャンへの攻撃もかなりひどいものがあった。

 それでも、最も多くの批判が大迫へ集まってしまうのはなぜだろうか?
 
 攻撃陣が批判を受けるのも致し方ないと思わざるを得ないほど、ブレーメンは得点力に問題を抱えている。前半戦を終えての19得点は下から数えて5番目。昨シーズンはどのように点を取るかのイメージが少なからずあったが、今はあまりない。

 守備は確かに良くなっていて、あっさりと失点される試合は減っている。だが、相手陣内でボールを保持し、ペナルティエリア内へ運ぶことができず、識者に「アンチサッカー」と揶揄されることもある。大迫ばかりが批判されているが、結局、誰が出てもそう大きく変わらないのが現状だ。

 ただ、ファン心理として考えると、「だからしょうがない」ではなく、「だからこそ踏ん張ってほしい」、「そこでなんとかしてくれるのがあこがれのプロ選手ではないか」という気持ちになるのだろう。まして大迫の立ち位置は、ただの一選手としてのものではない。昨シーズンまでのエースFWマックス・クルゼの後継者として監督から白羽の矢を立てられ、ファンの大きな期待を受けていた選手だ。
 
 そのため、どうしても「苦しい時こそ助けてくれるのがエースではないのか。クルゼは助けてくれた」、「もっと状況が苦しいクラブでプレーしている選手でも、チームを救うプレーを見せている」と比較される。

 相手に囲まれてもボールを収める。ファウルを奪い取る。強引にシュートまで持ち込む。相手の裏をとったパスを通す。CKを獲得する。大迫に、こうした違いを生み出すプレーが求められているというのは間違いなくある。厳しい声は、期待の裏返しといえなくもない。

 メディアの前で責任をもって発言をし、クラブへの愛を隠すことなく前面に出し、ファンに対してオープンで、ピッチ上では闘争心むき出しにチームの勝利のために全力を出し切る。そして、その選手ならではのスキルでチームを助けてくれる。苦しい時でも下を向かずに胸を張り、ファンから批判を浴びても正面からそれを受け止め、次に向けて取り組むことを約束する。そんな選手がチームにいたら確かに心強いし、理想的だろう。
 
 とはいえ、みんながみんないつもそんな立ち振る舞いができるわけではない。自分のコンディションや生活環境に影響されることだってあるだろうし、性格的な得手不得手だってある。「プロサッカー選手なんだからピッチ上の結果がすべてだ!」といわれたら、それはそうなのだろうが、結果を出すために奮闘しようとしても、すべてのプレーがすぐに結果に繋がるわけではない。

 自分だけの結果にこだわったプレーをしてチームの秩序を乱したら、それこそ迷惑がかかるだけだ。また、本人的には頑張っているつもりでも、外からは「そうは見えない」といわれてしまうこともある。