以前、知人にオンラインカジノで大爆死した人がいた。一瞬ですべてを失ったに等しい、派手な死にっぷりだった。一方、庶民の娯楽(とは今誰も思ってないけど)であるパチンコはどうだろう。

負けてもせいぜい、年に100万円ぐらいっていう人はチラホラ見るが、負債としてはそこまでの金額ではないというか。いや、100万負けはデカいんだけど、逆にいうと本当にバカな打ち方してる人でも、年にそれだけも負けるのはある意味で才能なのだ。

僕が知ってる限りの最大負け額でも、年間110万円のマイナスで済んでいる。「済んでいる」という表現は完全に間違ってるんだけども、とにかくその辺に天井があると踏んでいた。今日までは。(文:松本ミゾレ)

「損した金額は2000万近くあるだろう。越えてるかもしれない」

先日、5ちゃんねるの「最近パチンコやばすぎるpart46」というスレッドを眺めていた。パチンコ屋に遠隔やら不正が跋扈していると主張するパチンコ版“陰謀論”を信じている人たちが多く集まっていて、僕としては「そんな不正なくても負ける人ばっかりじゃん」って感じなんだけど、まあ世の中には色んな人がいるからね。

で、読み進めて読み進めていくと、興味深い書き込みが。

「パチンコ・パチスロ覚えて10年。損した金額は2000万近くあるだろう。越えてるかもしれない」

10年で2000万円の無駄遣い。これはさすがに舌を巻くレベルだ。しかもこの人の書き込みの恐ろしいのは続く言葉にある。

「もしそれで毎月コツコツ現物株買ってたら、今頃億を達成していたかもしれない」

思わず「そんなわけないだろ」と突っ込んでしまった。パチンコで2000万突っ込むぐらい我慢が苦手な人が株をコツコツって、それ絶対無理だし(笑)。

石田ゆり子の「お金は紙なので経験に替えていきたい」という言葉

でも気持ちは分かる。僕なんて1日で9万円ぐらい負けたことがあったけど、さすがに自分が世界一愚かな生き物に感じて、それから数週間はまともに外出もできなかった。まして彼の場合、10年で2000万円。自分への失望はかなりのレベルだったろう。

この書き込みは「俺は何をやっていたんだ。本当にバカだ」と締め括られているが、自分でそう思えているあたり、まだマシなのかも。でも、本当にそう思っていたらさすがに足を洗ってるはずで、「最近パチンコやばすぎる」みたいなスレッドを覗いたりしないか……。

ともかく、この人の場合、大金を溶かしただけではない。10年で大金をじわじわ失う間、相応の時間もパチンコ屋で失っているということでもある。新しい出会いも喪失しただろうし、キャリアアップ精神だとか資格取得とか、そういうチャンスも棒に振っているとも。あとはまともな金銭感覚も。

これだけの額を費やしたということは、パチンコ屋に行くたびにかなり長時間打っていることになる。食事もまともに摂れていないだろう。目や耳を光や音で刺激され続けているので、視力や聴力にも流石に悪影響が出ていそうだ。

ところで、僕の好きな女優の石田ゆり子が「お金は紙なので経験に替えていきたい」と、以前テレビで話していた。この発言と、この人の失ったものとを照らし合わせると、言葉の意味を強く納得してしまいそうになる。

まぁ、でもその石田ゆり子が今、もっとも割に合わない博打として知られる宝くじの宣伝やってるんですけどね!