日本の高校生が気球で成層圏まで飛ばしたカメラが8年越しの帰還、撮影された映像がノーカットで公開中
2012年11月18日、長野県の旧飯田工業高校機械科3年に所属していた生徒8人が、高校の課題研究として「高高度気球による成層圏からの撮影」にチャレンジし、福井県永平寺町から気球を空に放ちました。残念ながら当時は気球や撮影に使用した機器の回収ができなかったものの、およそ8年の時を経た2020年11月7日、埼玉県の森林を管理する業者により落下した撮影機器が発見されました。無事に機器を回収した当時の関係者により、気球から撮影された貴重な映像がYouTubeで公開されています。
http://minamishinshu.jp/news/education/%EF%BC%98%E5%B9%B4%E3%81%B6%E3%82%8A%E3%81%AB%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9%E7%99%BA%E8%A6%8B.html
abn 長野朝日放送 » 県内ニュース|8年前飛ばした気球みつかる カメラが捉えた映像
https://www.abn-tv.co.jp/news-abn/?detail=00030463
8人の高校生らがチャレンジしたのは、気象観測用の高高度気球にスマートフォンやビデオカメラをのせた発泡スチロール製の容器を吊り下げ、地表から11km以上離れた成層圏から地球を撮影するという試み。空港などを避けるために落下地点を北関東に設定し、福井県永平寺町から西風にのせて気球を飛ばしました。
2012年11月18日に気球を空に放った際の映像は、YouTubeで見ることができます。
高高度気球による撮影にチャレンジしました 20121118 課題研究 飯田工業高校 - YouTube
気球を放ったのは永平寺町を流れる九頭竜川の河川敷。気球と箱の間に見える赤くヒラヒラしたものは落下用パラシュートであり、気球が割れた後はパラシュートが開いてゆっくりと地面に下りてくるという仕組みです。
カメラを搭載した発泡スチロール製の箱を持った高校生たちが手を放すと……
気球は上昇を始めます。
よく晴れた空にぐんぐんと昇っていく気球。
気球の位置はスマートフォンのGPS追跡アプリで確認できるようになっていたとのこと。
GPSアプリで追跡した位置情報をGoogle Earthの地図に重ねたものがこれ。黄色い線で示された進路と青い線で示された高度を見ると、気球が東の方角に向かって進みつつ上昇していく様子がわかります。
ところが、一定の高度を超えるとスマートフォンの通信圏外となり、GPSアプリで位置情報が追跡できなくなりました。
この後も気球はぐんぐんと東に進み、長野県の諏訪郡付近を通り過ぎ……
長野県と群馬県、埼玉県の県境が集まる付近で、再び位置情報が確認できました。
気球は長野県佐久市の南あたりを通過して群馬県多野郡に入り、埼玉県秩父郡の山中めがけて落下。
しかし、落下地点の位置情報を確認したところ、地表まであとわずかという位置で通信圏外に入ってしまったようで、正確な落下地点がわかりませんでした。
高校生らは落下位置を予想して探しに行ったそうですが、推測される落下範囲はかなり広く、1日かけた捜索でも発見することができなかったとのこと。
当時の関係者も発見を半ばあきらめていたそうですが、2020年11月7日に埼玉県の森林を管理する業者が、埼玉県比企郡の山中で気球や箱を発見。打ち上げた箱に記載された連絡先から当時のプロジェクトを担当した福澤智之教諭の元に電話連絡が入り、約8年ぶりに機材が関係者の手に戻りました。
発泡スチロール製の箱に搭載されたビデオカメラの映像もしっかりと残されており、気球を放した瞬間から落下の瞬間まで、およそ2時間35分のノーカット映像がYouTube上で公開されています。
8年前(2012年11月18日)に気球で飛ばしたビデオカメラが2020年11月7日に発見されました。横向きカメラ(飯田工業高校 機械科 課題研究)ノーカット - YouTube
映像は気球を放す直前、作業着姿の高校生たちが発泡スチロール製の箱を持っているシーンから始まります。
「5、4、3、2、1!」というかけ声と共に……
箱から手が離れて気球が上昇を始めました。
「おおーっ!」という高校生たちの歓声や笑い声もしっかり録音されています。
付近の家々も撮影されていました。
その後も風に流されながら気球は高度を上げていき、ムービー開始から4分を経過したころに雲へ突入し……
5分40秒ほどで雲の上に到達しました。
まるで綿のような雲が気球の下に広がっています。
やがて地球の丸みがわかるほどの高度に到達。
次第に空気が薄くなり、空が青色ではなく深い黒色に移り変わっていきます。
カメラの映像はくるくると回っていますが、はるか下の雲や大地、海を見渡すことができます。
宇宙と地球の境目を感じられるような、幻想的な光景です。
映像に変化が現れたのは、ムービー開始から1時間41分12秒。ボンッという音と同時に気球が破裂しました。なお、この時点の高度は地表からおよそ3万2000メートルだったと推測されており、見事に成層圏から地球を撮影することに成功したことになります。
落下とともにパラシュートが開き……
カメラやスマートフォンを入れた箱が降下を始めます。
割れた気球の残骸も一緒に下降しているようです。
当初の予定通り、眼下に北関東の市街地が見え始めました。
最終的にパラシュートは風にのって山中に向かい……
木に引っかかって着地しました。これから8年にわたりパラシュートや撮影機器は発見されませんでしたが、最終的に機器が回収されたため、貴重な映像を見ることができました。