「かわいいネコと仲良くなりたい」と思う人は多いはずですが、ネコはイヌと比較すると人間になつきにくいイメージがあります。ポーツマス大学とサセックス大学の心理学者のチームは、「ゆっくりまばたきする」という行為に、初対面のネコと仲良くなれる効果があると実証しました。

The role of cat eye narrowing movements in cat-human communication | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-020-73426-0

How to build rap-paw with your cat | University of Portsmouth

https://www.port.ac.uk/news-events-and-blogs/news/how-to-build-rap-paw-with-your-cat

ネコをじっくり観察したことがある人は、ネコがゆっくりとまばたきをするように目を細くした姿を見たことがあるかもしれません。まるでにっこりと笑っているようなこの表情は、ネコがリラックスして満足している時に見せるものだそうです。研究チームはこの「ゆっくりとまばたきをするような表情」を人間がネコに向けることで、人間とネコのコミュニケーションがうまくいくのではないかと考えて2つの実験を行いました。



最初の実験は、14の異なる世帯で少なくとも3カ月以上飼われていた21匹のネコと、それぞれの飼い主である14人を対象に実施されました。飼い主は自分の家でネコと同じ部屋に入り、「ネコから1メートルほど離れた場所に座って、ネコが自分とアイコンタクトを取った際にゆっくりまばたきする」試行と、対照群である「ネコと同じ部屋にいるが何の相互作用もしない」試行の両方を行いました。

すると、飼い主がネコに向けてゆっくりとまばたきして見せた場合、ネコが飼い主に向けてゆっくりとまばたきを返してくる可能性が高いことが判明。一方、ネコと相互作用をしなかった場合では、ネコがゆっくりとまばたきを返してくる可能性が有意に低かったそうです。



2つ目の実験には、8の異なる世帯で少なくとも3カ月以上飼われていた24匹のネコと、ネコと初対面の研究者が参加しました。この実験では、全ての試行においてネコが普段暮らしている部屋の中に研究者が入り、ネコの正面に座ったりかがんだりして、手のひらを上に向けた手を差し出し、数秒間したら手を引っ込めるという行為の結果で、「ネコと仲良くなった度合い」が計られました。

手を引っ込めた後、研究者は「今度はネコとアイコンタクトしながらゆっくりとまばたきをして見せた後に、再び手のひらを上に向けた手を差し出す」試行と、対照群として「ネコと視線を合わせないまま中立的な表情を保ち、その後で再び手のひらを上に向けた手を差し出す」試行を行ったとのこと。

2種類の試行について分析した結果、ネコに「ゆっくりとまばたき」した試行はネコと視線を合わせなかった試行と比較して、差し出した手にネコが反応する可能性が有意に高いことがわかりました。



サセックス大学の心理学教授であるKaren McComb氏は、「動物の行動を研究者であると同時にネコの飼い主でもある人間として、ネコと人間がコミュニケーション可能だと示すことができるのは素晴らしいことです。これはネコの飼い主の多くがすでに感じていたことであり、その証拠を見つけたことにわくわくしています」とコメント。

McComb氏は「ネコに向けてゆっくりとまばたきして見せる」というテクニックは、自分の飼いネコだけでなく街中で見かけたネコにも試すことができると主張。「これはあなたとネコの間にある絆を強化する素晴らしい方法です。リラックスした笑顔のように目を細め、数秒間目を閉じてみてください。ネコも同じように反応し、一種の会話を始めることができます」と、McComb氏は述べました。

論文の筆頭著者であるTasmin Humphrey氏は、今回の調査結果は獣医の診療やシェルターでの世話に役立てることが可能であり、ネコの福祉を改善すると指摘。また、ネコがゆっくりとまばたきする表情に反応する理由については、人間との相互作用によって発達した可能性や、社会的相互作用を脅かす「凝視」を中断する方法として発達した可能性があると主張しました。