「だし道楽」の自販機、ぶっちゃけ買う人いるの? メーカーに聞くと...驚きの人気が明らかに
皆さんは、街でこんな自動販売機を見かけたことがあるだろうか。
「だし道楽」の自動販売機(編集部撮影)
「だし道楽」と書かれた自販機の中に並ぶのは、500ミリリットルペットボトルのみ。そしてその全てが茶色い液体で満たされている。
一見、「麦茶しか売ってないの?」と思ってしまいそうな光景だが、この自販機には麦茶どころか、清涼飲料水は一切売っていない。販売しているのは、「だし道楽」という名のだしを使用した調味料のみだ。
この「だし道楽」の自動販売機、最近は色々なところで見かけるようになった。筆者は兵庫県出身で、昨年まで京都に住んでいた。今は千葉県に住んでいる。そして、そのいずれの場所でもだし道楽の自販機に遭遇した。5年ほど前に初めて見たときには「こんなものがあるのか」と大いに驚いたが、もはや日常風景の一部。特に目新しさも感じなくなっていた。
しかしある日、この自販機の前を通りかかると、「だし道楽」の補充が行われていた。その光景を見ると、
「やっぱり買ってる人がいるんだよな」
と改めて気付く。
一体どれくらい売れているのかが気になってきた筆者は、「だし道楽」を販売する二反田醤油(広島県江田島市)に聞いてみることにした。
年に50万本も売れていた
そもそも「だし道楽」とは何かと言うと、醤油・だしを製造販売する二反田醤油の薄口醤油とだしを合わせ、みりんや砂糖などで調味した万能調味料。
2003年に二反田醤油直営のうどん店で発売されたもので、2007年には「うどん屋の営業時間以外にも購入したい」という人のために、自販機での販売も始まった。
広島県内の自販機では「昆布入り」、「焼きあご入り」(編注=あごとはトビウオのこと)、「プレミアム」(焼きあご・宗田節入り)の3種、県外の自販機では「焼きあご入り」、「宗田節入り」の2種が購入できる。値段は「昆布入り」が500円、「焼きあご入り」「宗田節入り」が700円、「プレミアム」が750円(いずれも税込)。
自販機の写真を撮りに行ったついでに、筆者もだし道楽を入手した。これでしばらく調味料に困ることはなさそうだ。
左が焼きあご入り、右が宗田節入り
どちらにも昆布が1枚入っていて、それに加えて焼きあご入りにはトビウオが丸々1匹、宗田節入りには高知・土佐清水産の大きな宗田節が浮かんでいる。
トビウオが丸々入っている。使用後はこれでふりかけを作れるらしい
焼きあご入りの方のラベルを外してみると、さらにインパクトがある見た目になった。ウェブサイトに書かれている用途は、うどん、炊き込みご飯、茶碗蒸しなど様々。パスタの隠し味にも使えるらしい。試しに、お湯で割ってみると、魚のいい香りが立ちのぼる。ちょうど良い塩気で、あっさりとした甘みもあり、いくらでも飲めてしまいそうだ。実際、原稿を書いている間にコップで2杯飲んでいる。
さて、このだし道楽、どれくらい売れているのだろう。
取材に応じた二反田醤油の広報担当者によると、2018年、だし道楽の販売本数は約45万本。うち自販機で売れたのはその8割程度だったという。つまり、36万本程度だ。しかし、19年は合計で60万本の売り上げとなり、自販機だけでも50万本が売れたそう。
また、ここ1年で自動販売機の設置台数も大幅に伸びている。19年5月時点では、自販機は14都道府県に設置され、台数は計65台だった。それが9月ごろから増えだし、20年1月の時点で16都道府県・計137台にまでのぼったという。1年で倍以上の増加だ。
「オンラインでの注文の多いエリアなどを中心に、設置場所を決定しています」
と担当者。2020年もこの調子で自販機の数を増やしていくのか、と思いきや、そうでもないらしい。
「使用している原材料が天然物ですし、ボトルに焼きあごなどを入れる作業は手作業で行っています。生産できる本数に限りがあるので、自販機の設置も計算しながら決めています」(広報担当者)
1日に生産できるだし道楽は、4種類合わせて約3000本。
お金を入れてボタンを押すだけの購入方式とは対照的に、製造工程にはひと手間かかっているようだ。