提供:週刊実話

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「地震が少ない瀬戸内海地方では珍しいことでした。おまけに南海トラフ地震の想定震源域の一番端です。このところ、空白域を埋める形で地震が起きている。南海トラフ地震の前には、西日本のあちこちで直下型地震が起きるのが常だが、今回の地震も深さ10㎞と浅い。明らかに、西日本で南海トラフ地震の前に起きる直下型地震の一つです」

 こう語るのは、武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏である。

 確かに、不気味な地震が相次いでいる。本誌は静岡県・伊豆沖で震度4の地震が発生したことを先週号でお伝えしたが、今度は11月26日午後3時9分頃、愛媛県今治市で最大震度4の地震があった。

 震源は瀬戸内海中部で地震の規模を示すマグニチュードは4.5。同地域を震源としたM4以上の地震は1999年10月30日以来、約20年ぶりのこと。同日午前7時58分頃には瀬戸内海中部を震源とする震度3の地震もあった。

「1944年の昭和東南海地震の1年前にM7.2の鳥取地震が起きている。南海トラフ地震がいつになるかは分からないが、近づいているのは間違いない」(同)

 不気味な現象はこれにとどまらない。何と、マイワシの大群およそ10万尾が大阪府堺市堺区の土居川を遡上しているのが11月20日に発見されたのだ。

「1923年の関東大震災や1946年の昭和南海地震、それに2011年の東日本大震災の際にもイワシは大漁でした。イワシの大量発生とその後の地震についての事例は結構ある。2015年2月下旬に岩手県の漁港に大量のイワシが押し寄せた際には、2月21日に三陸沖でM6.4の地震が発生したのを始め、同年2月末までに三陸沖や宮城県沖でM5以上の地震が6回も計測されている」(サイエンスライター)

 大きな地震の前触れとして発生する生物的、地質的、物理的異常現象をひとまとめにしたものを宏観現象というが、「何をバカな。迷信だろう」と一笑に付すことはできない。

「イワシにしろ、ナマズにしろ、そうした生物は人間よりセンサーが発達している。しかも、一桁も二桁も上です。そのため、地震の発生をいち早く察知して異常行動をとったとしても不思議なことではないのです」(前出・島村氏)

 瀬戸内海中部で起きた地震と、その後2カ月間の国内地震を追ってみると、南海トラフ震源域で発生したM5〜M6クラスの地震が複数回あった。

「2002年11月4日に瀬戸内海中部でM3.1、震度1が発生すると、半日後に日向灘でM5.9、震度5弱、2013年には瀬戸内海中部で微弱な揺れが起きると、その3週間後に淡路島でM6.3、震度6弱の強い揺れが起きていた。そのメカニズムは分からないものの、何らかの繋がりがあるようです」(前出・サイエンスライター)

 4月にはこんなニュースがあった。

 政府の地震調査委員会は、日本周辺の海底や全国の活断層で想定される地震の発生確率について、毎年1月1日の時点で計算し公表している。南海トラフで想定されるM8からM9の巨大地震については、今後30年以内に発生する確率は、これまで「70%程度」だったが、今回の公表で70%から「80%」に引き上げられたのである。

 防災ジャーナリストの渡辺実氏が言う。

「我々の立場からすれば、発生確率80%というのは物凄い数字。明日地震が起きても不思議ではないということです。防災という観点から言うと、国民の気を引き締める意味でいいことなんですが、これを額面通りに受け取っていいものか。内閣府は数値を上げたいらしいが、それに反対しているのが地震学者の先生方です。もっと言うと、こうした情報は国家機密みたいなものでしょ。公開しているのは日本だけですよ。例えば、南海トラフ巨大地震で多数の人が死亡し、インフラが破壊されて、経済がガタガタになるというのはいわば国難。公開している情報が正しければ、国難につけ込んで北朝鮮が日本海側に集結する可能性だってある。防衛省がよく公開を許しているなと思いますね」

 先の島村氏は今の地震発生確率自体に疑問を投げかけている。

「入力の条件を少し変えるだけで出力(結果)は変わってくる。近い将来発生するというのは理解できるが、いつになるかは誰にも分からない。今後、30年以内で起きる確率が80%というのは乱暴すぎます」

 とはいえ、南海トラフ巨大地震は刻々と迫りつつある。こんな情報もある。

「直下型地震の慶長伏見地震(1596年)の直前には、今治周辺でも地震が起きたと言われている。内陸直下地震は約400年、海溝型地震は約70〜100年に1度の周期とされる。いずれも、その周期がきており、テンパった状態。つまり、直下型、南海トラフのどちらが先にきてもおかしくはない状況にある」(地震専門家)

 一説には、東京オリンピックが開催される来年までに首都直下型地震が起き、続いて南海トラフが襲うともいわれる。

「フィリピン海プレートが活性化し、東日本大震災後の太平洋プレートも活動期を迎えている。条件は揃った。しかし、Xデーがいつになるかは、今の地震学では誰にも予知できないのです」(前出・島村氏)

 緊迫状態が継続していることだけは確かだ。