文在寅大統領

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 剥けども剥けども新たな疑惑が噴出。そこから、「玉ねぎ男」と渾名をつけられた男がついに白旗を揚げた。14日、韓国のチョグク法務大臣が会見を開き、辞任したのだ。

 娘の裏口入学に息子の兵役忌避、私募ファンドによる不正蓄財疑惑。極めつきはその妻で、夫が法相に就任する直前の9月6日、私文書偽造の疑いで被告人に……。就任前からこれだけの疑惑を背負っていたのだから、わずか36日でのスピード辞任も頷けるというもの。

 それでも文在寅大統領が任命にこだわったのは、

「悲願だった“司法改革”を成し遂げるためです。韓国の検察は強大な権力を握っており、歴代の大統領も、ほとんどが退任後、その餌食になっている。文氏は盧武鉉元大統領の側近でしたが、盧氏も検察の苛烈な取り調べの直後に自殺しています。文氏にとって、自らが同じ轍を踏まないためにも改革の制度設計を担っていたチョグクの法相任命は絶対だったのです」(韓国特派員)

 そんな肝煎り人事も道半ばで頓挫したワケだが、

「辞任は、15日に出席が予定されていた国会の国政監査を避けたいのと、支持率が予想以上に低下したのが大きな理由でしょう。辞任当日に発表された世論調査では、文氏の支持率が大統領選での得票率に並ぶ41%台。これでは、自らの支持者層からも離反が起こりかねず、来年4月の総選挙で与党が大敗する事態も現実的となった」(同)

選挙のためなら何でも

 権力闘争が激しい韓国では、選挙もまさに命懸けで、

「仮に総選挙で与党が負ければ、国会は空転し、文政権のレームダック化は避けられません。さらに、3分の2以上の議席を野党が確保すれば、弾劾訴追される可能性も」(同)

 まさに窮地に追い込まれた格好の文大統領だが、目下、囁かれるのは、とある奇策だという。

文在寅大統領

 地元メディアの記者曰く、

「3年前に大統領の椅子から引き摺り下ろされた朴槿恵前大統領を釈放しようとする動きがあるのです」

 一見、敵に塩を送るようにも見えるが、

「韓国の保守層は朴さんが失脚した際、弾劾に賛成した朴槿恵不支持派と、反対した支持派に分裂してしまった。このたびのスキャンダルで保守が再び一枚岩になっては文政権に勝ち目はありませんが、朴さんを釈放すれば、彼女の扱いを巡って保守は確実に分裂を起こすとみられているのです」

 これについては、韓国の国内情勢に詳しい龍谷大学の李相哲教授も、

「現在、朴前大統領の裁判は最高裁で差し戻しとなり、刑が確定していない状況。従って大統領の特別赦免の対象にはなりませんが……」

 と前置きをしたうえで、

「朴前大統領の釈放が以前から囁かれていたのは事実です。文大統領は選挙のためなら何でもやる政治家。朴さんを巡る保守の対立は根深く、釈放によって保守が分裂すると判断すれば、どのような理屈を作り出してでも、釈放をやってのけるでしょう」

 司法を正すと叫びながら、“犯罪者”を釈放しようという都合のよさだが、先の地元記者によれば、

「実は9月末に中央日報など2紙がそれぞれ世論調査を行った結果、大統領の支持率は30%台という惨憺たるものだった。ところが不思議なことに、この調査結果は報道されず、闇に葬られようとしたのです。政権側の圧力は明白で、文大統領の前には、メディアも正常に機能しない」

 政敵の身柄など、どうとでも扱えるということか。

「週刊新潮」2019年10月24日号 掲載