今大会ではすでに6枚のレッドカードが出されている【写真:荒川祐史】

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一発退場のレッドカード、累積2枚で退場のイエローカードの対象を厳格化

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は1次リーグが大詰めを迎え、19日からは8強による決勝トーナメントが始まる。10日現在、B組は1位ニュージーランド、2位南アフリカ、C組は1位イングランド、2位フランスと順位が決定。D組はウェールズとオーストラリアが8強入りも順位は未定で、A組は日本、アイルランド、スコットランドのうち2チームが進出の可能性を持っている。

 今大会は、試合開始前に行われるファンを巻き込んだ心温まる国歌斉唱や、試合後に両チーム入り乱れての客席へのお辞儀などが話題になっている。だが、試合そのものに目を向けると、すでにW杯史上最多となる6枚のレッドカードが出されている。これまで最多は4枚(1995年、1999年)で、2003年には0枚ということもあった。今回はなぜ、ここまでレッドカードが多いのか。それはW杯を統轄するワールドラグビー(WR)による「危険なプレー(ハイタックルやショルダーチャージ)」に対する判定が厳しくなったからだ。

 近年アメリカンフットボールや野球などのスポーツで、コンタクトプレーによる頭部や脳への深刻なダメージを防ぐ新ルールは導入されている。当然、コンタクトプレーの多いラグビーでは、以前からルールにより「レフェリーは危険なプレーにはいつでもイエローカード、またはレッドカードを出す権利を持つ」と定められている。だが。今年5月にWRは危険なショルダーチャージ、ハイタックルの判断基準を明文化。ボールを持っている選手の頭に直接触れた場合、タックルを受けた選手の頭が後ろに大きく振れた場合、など明確な基準を設けた。さらに、8月にはレフェリーはレッドカードやイエローカードに値するプレーを認めた場合、TMOでビデオ映像を確認し、TMO担当レフェリーと合議で判断することとした。

ニュージーランドのハンセンHCは新規定を全面支持も懸念が…

 コンタクトが多いスポーツだけに、ルールは主に選手の安全を守るために存在する。ハイタックルやショルダーチャージは、それを受ける側はもちろん、タックルをする側にも大きな危険をもたらすという。WRの調査によると、ハイタックルをした場合、タックルをした選手は安全なタックルよりも4倍高い確率で頭部を負傷する可能性があるという。

 今大会、ここまでレッドカードはなく、イエローカードを2枚受けているニュージーランド代表のスティーブ・ハンセン・ヘッドコーチ(HC)は7日の会見で、新たな規定を支持しながらも「相手が低い体勢になった時のタックルが非常に難しい。いろいろ対策を立てて練習をしているが、ようやく対応できるようになってきたところだ」と、対応に苦労していることを明かした。同時に、決勝トーナメントで行われる一発勝負の試合ではレッドカードが勝敗を左右する可能性も「あるだろう」と示唆している。

 実際に1次リーグでも、南アフリカ対イタリアやイングランド対アルゼンチンなど、レッドカードが出た途端に勝敗が決してしまった試合もある。世界最強を決める舞台だからこそ、プレーをする選手たちはもちろん、試合を観る誰もが納得のいく形で勝敗を決したいところ。決勝トーナメントではレッドカードが勝負の行方を決めることがないように、出場チームは新規定を再確認しておきたいところだ。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)