by Marco Tjokro

2018年10月のライオン・エア610便墜落事故、および2019年3月のエチオピア航空302便墜落事故は、運航機材だったボーイング 737 MAXのシステムに問題があったことが指摘されています。このことについて、ボーイングのエンジニアがシステム改善による安全性向上を求めたものの、会社幹部が納期やコストの問題から「妥協した」ことが明らかになりました。

Boeing rejected 737 MAX safety upgrades before fatal crashes, whistleblower says | The Seattle Times

https://www.seattletimes.com/business/boeing-aerospace/boeing-whistleblowers-complaint-says-737-max-safety-upgrades-were-rejected-over-cost/



シアトルタイムズは、ボーイングのエンジニアであるカーティス・ユーイング氏が2019年3月にエチオピア航空墜落事故が発生してから7週間後に社内告発システムを用いて会社に提出した、コスト対策のため安全性向上策をおろそかにしたことを痛烈に指摘する告発状を入手。ユーイング氏の同僚に対する取材を行い、ユーイング氏の主張することが正しいことを確認しました。

この情報によると、ユーイング氏は過去の墜落事故を調査し、その結果を反映してより安全な機体を作るという仕事をしており、2014年ごろに737 MAXについての安全性向上策を提言したそうです。しかし、導入を進言した新システムは「コスト、および訓練によるパイロットへの影響」を理由に3度にわたって却下されました。3度目は、チーフ・プロジェクト・エンジニアであるマイケル・ティール氏から却下を言い渡されたとのこと。もし安全性向上に舵を切っていれば事故は未然に防げた可能性が高いとユーイング氏は記しており、同僚3名も同意見でした。

ユーイング氏は告発状の中で、ボーイングの「市場に合わせた設計とコスト削減による有用性」が企業文化になっていたと指摘。737 MAXの設計においても、高価な認証やパイロットの訓練が発生しないように段階的なアップデートを経て設計されたと述べています。



by Ethan McArthur

ボーイングがコスト面を重視しているという声は、シアトルタイムズが取材を行ったユーイング氏の同僚であるリック・リュトケ氏からも得られています。リュトケ氏によると、ボーイングは737 MAXファミリーと従来の737型機との違いを最小限に抑え、パイロットに対する新たな訓練などを必要としないものにすることを各航空会社に約束していたとのこと。

なお、リュトケ氏によると、737 MAX以前のプロジェクトでは、会社幹部は最新アイデアや安全性の改善案を盛り込むことに強く興味を抱いていたとのことで、737 MAXファミリー以降、ボーイングのビジネスが変容していったことが示唆されています。