FWトーレスは、18年間のキャリアに終止符を打つこととなった【写真:安藤 隆】

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Jリーグ参戦から1年で現役引退を決断 母国スペイン人記者の見解は…

 サガン鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスは23日、J1第24節ヴィッセル神戸戦に先発出場。

 トーレスにとっては引退試合となったが、1-6とまさかの大敗を喫することになった。それでも、神戸に在籍する同MFアンドレス・イニエスタとラストゲームで共演を果たし、万感の思いでキャリアを終えた。現地取材に訪れていたスペイン人記者は、「トーレスの日本行きは正解だったのか?」という疑問に対して、持論を展開している。

 昨夏に鳥栖へ加入したトーレスは、熾烈な残留争いに巻き込まれるも、前線で体を張るターゲットマンとして“フォア・ザ・チーム”のプレーに徹し、J1残留に貢献した。しかし、今季は度重なる負傷離脱もあって、本領を発揮できない時間が続き、シーズン半ばで引退を決断。旧友イニエスタと相まみえる神戸戦を最後に、18年間のキャリアに終止符を打つ決断を下した。

 ラストゲームでは6失点の惨敗を喫する悲惨な結末となったが、試合直後の引退セレモニーではイニエスタ、そしてかつての相棒である元スペイン代表FWダビド・ビジャと涙を浮かべながら抱擁を交わすなど、感動的なフィナーレを迎えた。

 現地取材に訪れていたリーガ・エスパニョーラ公式のルーベン・ゴンザレス記者を直撃し、トーレスの日本での引退について尋ねると、「実際、彼は日本で素晴らしい時間を過ごすことができたのだと思っている」と、トーレスにとって日本行きはポジティブなものであったという見解を示した。

「彼は日本で、新たな文化、新たなフットボール、新たなキャリアを発掘することができた。さらに、これから素晴らしいプロフィールも積み上げることができる。引退後も日本に留まることを望んでいるし、日本のサッカーを向上させていく重責を担うことに意欲を燃やしている。 彼は日本を愛している」

 また、引退試合でイニエスタとの共演が実現したことについては、「2人のキャリアは16歳の頃からリンクしている。だからこそ、フェルナンドがキャリアを終えるうえで本当に、本当に素晴らしいフィナーレだよ」と感慨深げに語っていた。

“美しい去り際”よりも“未知なる挑戦”を求めたトーレス

 アトレチコ・マドリードでプロデビューを果たしたトーレスは、リバプール、チェルシー、ACミランを経て、再びアトレチコに帰還したわけだが、昨夏に退団する際は、そのまま“心のクラブ”で引退するという選択肢もあった。キャリアのシナリオとしては、それが最も美しい終幕であるという見方もできるだろう。

 それでもゴンザレス氏は「フェルナンドは絶対的にアトレチコを愛していた。スペインという国ももちろん愛している」と断言しつつも、「だが、それと同時に彼がキャリアの晩年で新たなフットボール、新たな国、新たな経験に挑みたいという意志を抱いていたことも分かっていたよ」と、“美しい去り際”よりも“未知なる挑戦”を渇望していたことを指摘した。

 Jリーグでは通算35試合5得点と、思うような結果を残すことはできなかったが、「結果的に、日本に来て良かったと思っている」と総括。「所属したクラブは厳しい状況下にあったが、それゆえにアトレチコ、リバプールやチェルシーでは得ることのできなかった、あらゆる経験を積むことができた」と、熾烈な残留争いの経験は糧となったことを主張している。

 ラストゲームの記者会見では「悔いは一つもない」と断言したトーレス。鳥栖では困難な道のりを歩むことにはなったが、異国の地で新たなフットボールに触れるという目標を叶えることができたのは間違いないだろう。惨敗してもなお、穏やかな表情を見せていた“神の子”は、すでに次なるチャレンジを見据えているはずだ。(Football ZONE web編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)