島田秀平

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「怪談には、話術に必要なテクニックが凝縮されているんですよ」

 こう語るのは、手相占い芸人として絶大な支持を集める島田秀平。実は島田、手相より怪談や都市伝説のほうに興味があった、と語るほどの怪談フリーク。

「怪談は老若男女のエンタメ」

「りっしんべん(こころ)に布をかけると書いて“怖”と綴ります。都市伝説や凶悪犯罪者の心理などにも言えることですが、科学で証明できないことや、理解しがたいもの……。布一枚、ベールがかかっている心の向こう側を覗くことができる怪談は、恐怖心と好奇心を満たす最高のエンターテイメントだと思います。

 30代以上の多くの方から、“島田さん、手相見て!”なんて声をかけられる一方、10代〜20代になると大半から“寝る前にYouTubeで島田さんの怪談を聞いています。よく眠れるんですよ!”と声をかけられます。“よく眠れる”のひと言は余計ですけど(笑)。また年に1度、大阪で『なんば怪談花月』というイベントが開催されるのですが、即日完売、立ち見が出るほど盛況です。

 まだまだ引き出しに眠っている不思議な話はたくさんあるはず。「持て余している」という方がいましたら、ぜひ僕に預けてほしいですね(笑)」

「稲川淳二の怪談グランプリ」で優勝するほどの実力派怪談テラーは、トークスキルを向上させるうえでも役に立つと強調する。

「怪談は、会話に必要な“間”“抑揚”“オチ(見せ場)”などが詰まっています。ある落語家さんは、入門したばかりのお弟子さんに怪談を聞きなさいと教えるほど。怪談のテクニックは、面接やプレゼン、自己PRなどにも応用でき、効果てきめんです」

 では、具体的にどんなテクニックがあるのか?

「“いつ”“どこで”“誰が”を、明確に。例えば、ある夏の暑い日、関東のS県にある某公園でA君とB君が……、と話した場合、まったく頭に入ってきません。ところが、盆が過ぎて間もない8月17日、埼玉県のだるま公園で田中夫妻が……、と鮮明にすることでスッとイメージが浮かび上がる。聞く側が想像しやすいように伝えることが大事です」

擬音は必ず3回

 そして、間を取ることを忘れないように、と続ける。

「間を開けずに話し続けてたり、間を埋めようと早口になる人も多い。間は相手が想像するための時間だと思ってください。相手のリアクションがなくても不安がらないこと。そのとき、相手は話されているシチュエーションを想像しているんです」

 一方的に話せば、想像する暇を与えず、相手を置いてけぼりにしてしまう。“間”というものは、相手の身を乗り出させるためのテクニックと心得るように。

「擬音を使う場合は、ドンドン! ドンドン! (より大きな声で)ドンドン! と3回伝えるほうが効果的。その際、抑揚をつけるとより臨場感が増します」

 なんでも大御所・稲川淳二も、擬音は必ず3回唱えるそう。後はどうオチを迎えるか。

「いちばん自分が伝えたいこと=オチ」

 そう島田さんはレクチャーする。

「例えば、居眠り運転をして死ぬかと思った、という話を普通に話しても、“へぇ〜”で終わってしまう。ところが、サービスエリアで仮眠を取っていたら、やたらとクラクションを鳴らされる。不審に思って振り返ると……そこで目が覚めて、自分が居眠り運転をしていることに気がついた。

 クラクションは蛇行する自分に対して実際に鳴らされていたのだ─、とすると、居眠り運転という同じ状況でも、相手に伝わる力がまったく違う」

 ただの居眠り運転の話でも、ドキッとする話に。最も怖がらせたい部分を輝かせるため、話をどう組み立てるか。そこにトーク上達のヒントがあるのだ。

「怖がらせたい部分をいちばん伝えたい部分に置き換えることで、自己PRなどに応用できますよね。海外でボランティア活動をしていたことを訴えかけたいなら、その部分を光らせるために、どう構成するか。そして、間や明確さを意識する。怪談は人を怖がらせるだけではなく、会話の肝を育てる力もあるんですよ」

《怪談に学ぶトーク上達の4箇条》

・「いつ」「どこで」「誰が」を鮮明に
・“間”は相手に想像させるための時間
・強弱や抑揚を忘れないように
・ いちばん自分が伝えたいこと=オチ

《PRIFILE》
島田秀平 ◎しまだ・しゅうへい。8月より公式YouTubeチャンネルを開設。10月には東京と大阪で単独ライブ『島田秀平のお怪談巡り』を開催。チケットぴあで発売中