以前、鉄製の26センチフライパンについて書いた。「フッ素樹脂加工にもお世話になってきたが、今後連れ添うのはやっぱり鉄のフライパン」などと書いてある。

 成功した部類の買いものといってよく、肉料理など、がんばっていろいろ焼いている。ひっついてしまった時は、ステンレスのターナーが威力発揮。餃子も、ターナーでなんとか皮を破らずに皿にとれる感じ。

 ただ、形に不満がある。側面の傾斜がなだらかで、つまり、底の平面部分がせまく、餃子を一度にたくさん焼けない。平面の直径14センチ。同サイズなら普通は19センチぐらいある。これは誤算だった。オムレツなどに向いている形状なのだろう。

 そうこうしているうちに、ネットのレシピでこういう記述を見つけてしまった。「おいしい<焦げ>が、フッ素樹脂加工なら餃子といっしょにとれるが、鉄製だとフライパンにくっついて残る」と。いわゆる「餃子の羽根」的な、あのパリパリのことか!  

 いわれてみればそうかもしれない。鉄フライパンで焼いた時は損をしていたのかもしれない。……買うか、餃子のために。脳内で何かがプツッと切れ、ホームセンターやネットでフッ素樹脂加工フライパンを探しはじめる自分がいた。

 スーパーで1000円前後のものを買うか、3000円前後でそれなりに高品質と思われるものを買って、買い替え時期の先延ばしを期待するか。ここは後者だろう。  

 そして国内にすぐれたメーカーがあるんだから、やっぱり国産を選びたい。あまりスーパーなどで見かけない「ウルシヤマ金属 リョーガ」26センチを購入。2916円、送料別。

 厚底アルミ鋳物製で、外面はダイヤモンド粒子配合、内面はテフロン加工。リョーガは、「凌駕」という意味だろうか。日本人の「難しい漢字好き」のDNAは私も持っており、カッコいいと思った。

 届いてすぐ、鉄のフライパンから目をそらすようにして、さっそく餃子を焼いてみる。それはもう、申し訳ないほどうまく焼けた。その他にもいろいろ試し、薄切り肉の焼き肉や卵料理もひっつかなくて快適なので、これは鉄の出番は減るかな……と思った。

 チャーハンぐらいは鉄の炒め鍋で、強火でがんがん炒めないと! という思いもなくはないが、フッ素のほうで、中弱火でじりじり炒め焼いたチャーハンも普通においしいのだった。

 だが、根がケチなのか臆病なのか、使うたびにどんどんフッ素樹脂加工が衰えていくような想像をしてしまい、どうも調理が楽しくない。フッ素大事のあまり、妻にフライパンを洗わせない、という態度もいかがなものか。

 鉄のフライパンの「ある程度乱暴にあつかってくれてOK!」な使い勝手はやはりすばらしい。なのでフッ素のほうは基本、餃子用として、メインはやはり鉄。なまけがちだった「油返し」を小まめにするなどして、また積極的に使うようになった。

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)、『出かけ親1』、『忍風! 肉とめし2』(ともに小学館)が発売中

(週刊FLASH 2019年7月16日号)