ロシア・ワールドカップで主力を担った香川も、トリニダード・トバゴ戦では出番がなかった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンチャレンジカップ2019]日本 0-0 トリニダード・トバゴ/6月5日/豊田スタジアム
 
 ハーフタイム中、ピッチの上では日本代表のベンチメンバーが“鳥かご”(ウォーミングアップとしても行なわれるパス回しのトレーニングメニューの一種)をやっていた。その様子を記者席から観て、ふと思った。1年前とはだいぶ違う光景だな、と。
 
 今から1年前の6月、日本代表はロシアでワールドカップを戦っていた。当時の主力が香川真司であり、原口元気だったのだが、森保ジャパンではふたりともここまで不動の地位を築けずにいる。原口は中島翔哉が不在だったアジアカップでレギュラーを任されていたものの、トリニダード・トバゴ戦では先発から外れていた。
 
 そんな香川や原口が“鳥かご”をする姿を見て感じたのが、ロシア・ワールドカップ出場組のここまでの明暗だった。
 
 森保ジャパンでも変わらずレギュラーを張り、トリニダード・トバゴ戦でもスターティングメンバ―に名を連ねたのは、センターフォワードの大迫勇也、ボランチの柴崎岳、右ウイングバックの酒井宏樹、左ウイングバックの長友佑都の4人。大迫は現体制でも唯一無二の1トップで、柴崎は吉田麻也が不在時にキャプテンを任されるまでになった。そして酒井と長友の安定感は今さら語るまでもない。
 
 おそらくこの4人はなにかしらアクシデントでもないかぎり、これから始まるワールドカップ・アジア予選でも主力を担いそうだ。
 
 ちなみに、トリニダード・トバゴ戦で3バックの一角を担った昌子源はあくまで“レギュラー候補”。今回コンディション不良を理由に招集が見送られた吉田麻也が戻ってくればどうなるか、現時点では判断しかねる。CBの序列で言うと、吉田が依然として一番手で冨安健洋と昌子源が2番手を争うという格好だろう。冨安の成長次第では、ベンチに回る可能性もあるわけだ。
 
 昌子以上に苦しい立ち位置に見えるのが原口か。4−4−2システム(もしくは4−4−1−1システム)の場合はサイドハーフの堂安律、中島翔哉が、3−4−2−1システムでは左ウイングバックの長友がそれぞれポジションを争うにライバルになりそうだ。ただ、堂安や中島は森保ジャパンのいわば核で、長友も外せないキーマン。レギュラーへの壁はなかなか厚い。
 
 当然ながら、トリニダード・トバゴ戦で先発できなかったことを誰より悔しく思っているのは原口本人だった。
 
「正直、最初から出られなかったことをみんなが、僕自身も悔しいと感じないといけない。次、チャンスがあるなら(自分を)もっと表現したい。今日ももちろん表現したかったけど、(79分から出場したトリニダード・トバゴ戦では)時間が足りなかったので頑張りたいです」
 
 ただ、原口に「誰かと争っているという感覚はない」。
 
「自分が出た時にどういうパフォーマンスを披露できるかが大事。できれば今日、何か数字として残せればよかったですけど、次にチャンスがあれば、チームの勝利を最優先しつつ、自分にしかできないウイングバックの形みたいなものを出していけたらいい」
 
 堂安や中島になくて、原口にあるもの。それは苦しかった前回のワールドカップ・アジア最終予選でチームを牽引した経験と、ロシア・ワールドカップ本大会で活躍できた自信だろう。ライバルは自分自身というスタンスで、ここから這い上がれるか。まだ28歳。原口がピークを迎えるのはむしろこれからかもしれない。
 
 原口に希望を見出せる一方で、香川はどうか。3−4−2−1システムで任されるポジションはおそらくシャドーだが、そう考えると厳しい立ち位置になる。トリニダード・トバゴ戦では中島、堂安、南野拓実、伊東純也がこのポジションで使われており、香川は出番を得られなかった。そうした事実に基づくと、香川はシャドーで5番手……となるか。
 
 4−4−2システム(もしくは4−4−1−1システム)でも、香川は現時点でセカンドトップの控えが定位置と言える。30歳という年齢が強みになるのか、弱みになるかは分からないが、ひとつ確かなのは世代交代という大波に呑み込まれそうだということだ。
 
 トリニダード・トバゴ戦で出番がなかった槙野智章にも同じことが言えるが、森保ジャパンで生き残るためには少なくとも、続くエルサルバドル戦でなにかしら結果を残す必要がある。日本代表の10番として──。香川はどんな答を出すのだろうか。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)