とはいえ、その中村も年を重ねるほどボールをセットする位置は身体の真ん中付近になっていった。代表を退いてしばらくすると、半身はきつくなくなっていた。古典的なゲームメーカー色は薄れていった。時代に対応しているように見えた。
 
 本田圭佑は、ゲームメーカーというよりアタッカー系だったが、左利きはそれほどきつくない。ボールを身体の正面にセットしながら前進するので、進行方向は読まれにくい。真ん中でプレーしてもプレスの餌食になりにくい選手と言える。
 
 右ウイングを務める堂安律は、最近の選手の割には左利きがきつい。進行方向を読まれやすい選手だ。具体的には縦に抜いていくためのステップワークがない。内へ切れ込むプレーが目立つ。一本調子になりやすいのだ。
 
 では、久保はどうなのか。左利きがきつそうな動きではまったくない。ボールを身体の正面に置く、進行方向を読まれにくい今日的な左利きだ。選択肢の多彩さという点で堂安を大きく上回っている。サイドのみならず1トップ周辺でも十分やって行けそうに見える。
 
 名波がプレスの餌食になり苦戦したコパアメリカから20年が経過した。少なくとも今回、当時の名波と同じ問題を久保が引き起こすことはないだろう。いかにも左利きという選手が世界的に減った理由と、プレッシングの進化は密接な関係にあるのだ。