年間4万7000件も撥ねられている! クルマで走行中動物が飛び出してきた場合はどうするのが正解?
無理な危険回避はより大きな事故につながる可能性が大きい
クルマを運転しているときに、突然ネコなどが飛び出してきてヒヤッとした経験はないだろうか? あるいは、クルマにはねられたと思われる動物の死体を見たことがあるという人も多いだろう。クルマの衝突によって動物が事故死をすることを「ロードキル」といい、平成29年度には、全国の高速道路だけで年間4万7000件もの事故が報告されている(なんと、約4割がタヌキ!)。
高速道路だけでなく、街中ではとくにネコ、郊外でもネコ、イヌ、タヌキが犠牲になることが多いが、もし走行中にこれらの動物たちが突然飛び出してきたらどうすればいいのか。考えられる対処法は下記の4つだろう。
1 フルブレーキ
2 ハンドル操作で回避
3 そのまま通過
4 加速して通過
倫理的、心情的には1のフルブレーキを選びたいところだが、後続車がいた場合、急ブレーキを踏むことによって追突されるリスクも大きい! 通常の追突事故はオカマを掘った側の過失となるが、道路交通法では「危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」とある。
タヌキやネコなどの小動物の場合、「危険を防止するためやむを得ない場合」に相当するかどうかが争点になり、過失が問われるケースも考えられる……。後続車がいなければもちろんフルブレーキがベストだが、とっさのときに後続車の有無まで確認するのは難しい。
2のハンドル操作での回避は、フルブレーキ以上に危ない。対向車線に飛び出したり、歩道や縁石に乗り上げたり、ガードレールや壁や歩行者にぶつかる可能性もあるし、急ハンドルによって、スピンや転倒することも考えられるので、おすすめできない。
5の加速して通過も、タイミングが合えばセーフになる可能性もあるが、確率的にはほとんどアウト。運動エネルギーは速度の二乗に比例するので、速度を上げるという選択はNGと考えた方がいい。
他人のペットをはねてしまった場合は「物損事故」扱いとなる
そう考えると、3の「そのまま通過」が消去法で一番マシな対処法ということになる。動物には可哀想だが、人、クルマ、モノの安全を優先するなら、「南無三」([C]サーキットの狼)と叫びながら、心の中で合掌をして、「そのまま通過」してしまおう。
小動物なら運がよければ、タイヤとタイヤの間を潜り抜けられるかもしれない!? 万が一、ドンとぶつかった実感があった場合は、警察や道路緊急ダイヤル(#9910)に連絡することを忘れずに。
できればはねてしまった動物を保護処置したいところだが、相手が野生動物の場合は感染症などの問題もあるので、直接素手では触らないことが肝心。はねられた動物が活きている場合は、近づくと暴れることもあるので要注意だ。ちなみに、ネコやタヌキだけでなく、バードストライク(鳥との衝突)も非常に多い。
余談だが、その昔、茨城県の谷田部にあった日本自動車研究所の高速周回路で早朝テストをやっていたとき、何度か鳥がフロントグリルに……。なお、動物との事故は、基本的に単独事故扱いになる。動物とぶつかり自分のクルマが損傷した場合、車両保険も使えるが(警察の事故証明が必要)、「車対車+A」のエコノミー型の車両保険では保証が受けられない場合が多い。
また、はねてしまった動物が他人のペットだった場合、動物は法律上「モノ」という扱いになる。自動車保険を使う場合、物損事故になり、ペットの購入費用ぐらいは保障されるが、慰謝料などは期待できない。
むしろ、飼い主がリードを付け忘れていたなど、管理監督責任上の問題があれば、飼い主にクルマの修理代を請求することもできる。動物との事故の場合は、免許の違反点数や反則金などのペナルティはない。
ただ、避けられる事故は避けたいので、動物警戒標識を見かけたりしたら、より慎重な運転を心がけて、一件でもロードキルが減らせるように気を付けたい。