日本代表、“森保采配”批判の是非 2戦連続で交代枠を残し、先発10人変更で勝利の意義
第2戦まで交代枠や第3戦先発10人変更を巡り、森保監督の采配に賛否両論
森保一監督率いる日本代表は21日に決勝トーナメント1回戦サウジアラビア戦に臨む。
グループリーグ3連勝で首位通過を決めた日本だが、それでも第2戦まで交代枠を残し、第3戦で先発10人を変更した指揮官の判断を巡って様々な意見が挙がっている。果たして、“森保采配”批判の是非は――。
日本は初戦のトルクメニスタン戦(3-2)、第2戦のオマーン戦(1-0)で連勝を飾り決勝トーナメント進出を決めた。その一方で注目を集めたのが交代枠だ。
交代可能な3枠中、初戦は2枠、第2戦は1枠を残したまま試合を終えている。第3戦はすべて使い切ったが、第2戦までの交代について疑問を呈す声も上がった。なぜ、すべての交代カードを切らないのか。チームの状況を考えると悪手なのではないか、と。森保監督は簡潔に答えている。
「シンプルに言うと勝つため。選手の代表キャップ数もありますし、チームとしても試合を多く経験してもらうことで、よりチームの戦術と選手間のフィーリングのすり合わせもできる。できれば代えたいというのも選択肢としては持っていた。ただ勝つことが一番大切」
交代枠を巡る批判に関しては、「勝つため」がすべてだろう。実際、勝利という結果を残しており、森保監督はその事実をもって証明している。大会当初、選手のコンディションにばらつきが見られ、それをどう解消していくかは一つの課題だった。その一方、FW武藤嘉紀(ニューカッスル)、MF乾貴士(ベティス)、DF塩谷司(アル・アイン)の追加招集組を含めて、実戦を通じて選手間の戦術や連係を向上させたい思惑も指揮官の中にあったという。
選手の疲労蓄積やイエローカード累積問題――第3戦の先発10人変更は妥当な判断
森保監督の「できれば代えたい」というのは本音だったに違いない。点差が開いていれば、指揮官は躊躇なく交代カードを切っていただろう。あるいは交代カードを切っていたら、より盤石な試合運びとなっていた可能性もある。もっとも、いずれも「たら・れば」だ。
負ければグループリーグ敗退の危機も生まれるなか、接戦という展開もあり、不用意に動きづらい事情もあった。
たとえば第1戦では、日本が後半26分に一時3-1とリードを広げており、その直後のタイミングで交代カードの一枚目を切った。ところが同34分にPKを献上して3-2と1点差に詰め寄られ、どう転ぶか分からない展開となる。メンバーを入れ替えで状況の好転を図るか、バランスが崩れるリスクを避けてそのまま戦うか。そうした判断のなか、指揮官は後者を選択した。それもすべては「勝つため」だ。
グループリーグ2連勝で決勝トーナメント進出を確定させた日本は、グループ突破の順位を懸けた第3戦ウズベキスタン戦(2-1)で先発10人を入れ替える策に打って出た。決勝トーナメントを見据えればターンオーバーは妥当な判断と言える。
まずは第2戦まで連続出場した選手の疲労蓄積、イエローカードの累積という問題があった。日本は優勝を見据えており、決勝までの道のりを考えれば疲労解消の優先順位は高い。
メンバーの入れ替えによる副次的な効果 競争原理が強まり先発選考で指揮官も悩み吐露
また、イエローカードは累積2枚で次戦出場停止となる一方、準々決勝を終えた時点で累積が一旦リセットされる形式となっている。第1戦でDF酒井宏樹(マルセイユ)とGK権田修一(サガン鳥栖)、第2戦でMF堂安律(フローニンゲン)とMF南野拓実(ザルツブルク)がイエローカードを受けており、4人の誰かが第3戦でもう1枚受けていれば決勝トーナメント1回戦で出場停止となる状況だった。指揮官として、そのリスクを避けるのは当然だろう。
メンバーの入れ替えによる副次的な効果も大きい。第3戦を終えて、腰に負傷を抱えるGK東口順昭(ガンバ大阪)を除く全選手が起用された。第2戦まで出場機会がなく鬱憤が溜まっていた選手たちを起用し、チーム全体のモチベーションアップにつながったと同時に、実戦を通じて選手の状態を見極めた形だ。
先発10人を変更した第3戦の連係不足を指摘する声もあるが、その課題は第1戦と第2戦もそう大きく変わらない。森保監督は「第3戦でほとんどの選手がスタメンで出場することができて、ゲーム感、ゲーム体力では決勝トーナメントに向けてチームとして良い状態が作れた」と好感触を得ている。
第3戦で武藤や塩谷がゴールを決めるなどコンディションが上向いている選手もいるなか、競争原理が強まっているのは良い兆候だろう。指揮官も「すべてのポジションではないにしても、大抵はぎりぎりまで悩みますし、決めたと思っても本当にそれで良いのかなとずっと思ってやってきているというのが正直なところ」と先発選考の悩みを打ち明けている。
選手側の見解「ある意味、一番良い形で来ている」 ”森保采配”批判に対する明確な答え
では、選手側の見解はどうなのか。主将の吉田麻也(サウサンプトン)が次のように総括した。
「全部楽な試合ではなかった。ある意味、一番良い形で来ているんじゃないかなと思います。苦しみながらも勝ち点をしっかりもぎ取ってきたというのは、チームを構築するうえで一番良い形じゃないかと思います」
選手の疲労とイエローカード累積を考慮しながら、グループリーグ3連勝で1位通過を果たし、東口を除く全選手起用によるモチベーションアップ、実戦を通じた選手の状態チェックも完了させた。チーム作りを着々と進めながら、苦戦という“教訓”を得ながらも結果を残し、「一番良い形」で決勝トーナメントを迎える。
もちろん勝負は時の運という一面もあり、「一番良い形」で勝ち上がったからといって、必ずしもアジア王座奪還を果たせるとは限らない。しかし、ここまでは指揮官と選手たちが確かな手応えを口にしており、その事実が“森保采配”批判に対する明確な答えと言えるだろう。(Football ZONE web編集部・大木 勇 / Isamu Oki)