都民共済・道民共済・府民共済・県民共済――。これらは全国生活協同組合連合会(以下、全国生協連)で実施されている共済事業の名称だ。組合員があらかじめ一定の「共済掛金」を拠出。入院、火災などの有事が起きた組合員が共済金を受ける相互扶助の保証の仕組みだ。このようなシステムは全国生協連のほかに、農協や漁協なども行っている。

全国生協連の共済は39都道府県で実施されており、「埼玉県民共済生活協同組合」や「宮崎県民共済生活協同組合」と、実施されている各都道府県名が振られている。しかし、神奈川県だけ「全国共済神奈川県生活協同組合」とちょっと名前が異なる。

設立の経緯に正解があった

筆者が神奈川県だけ名称が違うと気づいたのはテレビCMを見ていたとき。


ユーチューブで配信されている都道府県民共済のCMより

最後に共済の名称が登場するシーンで「神奈川県では全国共済」と1つだけ違うクレジットがされている。

何故、神奈川県だけ別なのか。Jタウンネット編集部は2018年10月11日、全国共済神奈川県生活協同組合の共済金サービス部・久保誠課長に聞いてみた。

単刀直入に名称の違いについて聞くと、

「神奈川県には別に県民共済が存在する」

とのこと。実は「神奈川県民共済生活協同組合」という全国生協連に加盟していない別の組合が存在している。そちらの誕生が1973年3月、全国生協連(スタート時は首都圏生活協同組合連合会)が同じ年の12月と神奈川県民共済が少し早い。

81年に全国生協連に変更したのと同時に全国展開したが、神奈川においては先に「県民共済」の名前を使っていた神奈川県民共済との関係からほかの地域と別の名称を使うことになった。

提供している商品もそれぞれ違っている。また、県内には「県民共済プラザビル」や「県民共済シネマホール」といった施設もあるが、これらは神奈川県民共済の施設であり、全国共済とは別の施設である。これらは事情を知らないと、つい混同してしまいそうだ。

神奈川県以外でも全国生協連と、非加盟の共済組合が存在する地域がある。愛知県では愛知県共済生活協同組合とこれまたややこしそうな組合名だが、提供しているサービスは「ライフ共済」と「ホーム火災共済」であり全国生協連との混同を意図的に避けたような名称だ。

神奈川も全国共済と県民共済とはなっているが、ほかの地域では「県民共済」といえば全国生協連であり、テレビCMもあることから、ややこしくなっているのかもしれない。