暫定監督個人に対してというより、神戸というクラブに対して疑念を抱いたのではないだろうか。本当にバルサのコンセプトを理解した上で自分に声を掛けてきたのだろうか、と。

 Jリーグには時々、このような定石とは異なるおかしな事例が発生する。そしてそれがまかり通る。メディアはサッカーの中身の話になると、ただ聞いているだけになりがちで、コメントを咀嚼せず、右から左へ自動的に流そうとする。

 なによりメディア自身が誤りを犯す。最近の例では、2018年ロシアW杯前に行われたガーナ戦で、西野朗前監督が3-4-2-1的な3バックを用いることことが判明したときのことだ。NHKのニュースではそれを、より攻撃的な3バックと称したのだ。なぜそうした真反対の解釈が起きるのか。知識に乏しいからだろう。だとすれば、日本は相当に遅れているといわざるを得ない。

 同様に、テレビ解説者、評論家で西野式3バックの分かりやすく説明してくれる人もまた不在だった。原因は、物事をハッキリといいにくい世の中だからか。それとも、自信がないからか。今回の神戸の一件を見ていると、後者である可能性を否定することはできない。

 S級を最上位とするライセンス発行の講習会では、いったいどんなことが教えられているのだろうか。それなりの人がキチンと発信しないと、その国のサッカーのレベルは上がらないのだが、その絶対数が日本には不足しているーーとは、浦和対神戸戦後の記者会見に出て得た実感だ。リージョ監督が日本サッカー界にとって、猫に小判になる必然性は整っている。