2ヶ月先まで埋まっているスケジュール。誰よりも婚活してるのに結婚できないと嘆く、女の勘違い
東京の至るところで目撃される、婚活モンスター。
他をも圧倒するほどのこだわり。
時としてそれは、人をモンスターに仕立て上げる。
結婚へのこだわりが強いばかりに、モンスターと化してしまう、婚活中の女たち。
あなたのまわりにも、こんなモンスターがいないだろうか…?
前回は、男をどこまでも追いかけていく押しかけモンスターを紹介した。さて、今週は?

「美紗、本当にありがとう!私、美紗には一生足を向けては寝られないよ!」
彼女は、半年前に美紗が幹事を務めた食事会で、今の彼氏に出会った。二人はすぐに付き合い始め、ついに先日プロポーズをされて結婚が決まったという。
「そ、そうだったんだ…。よかったね。まさかあの食事会が、結婚に繋がるなんて…」
「私もあのときは想像もしてなかったよ!…美紗は、私たちのキューピッドだよ!」
美紗の手をとってぎゅっと握りしめる彼女は、頬を紅潮させ、瞳はきらきらと輝いている。
-また、このパターンか…。
口では祝福しながらも、美紗は心の中で少しうんざりしていた。
美紗、28歳。ベンチャー系IT企業で営業アシスタントの仕事をしている。
もともと結婚願望が強く、できれば20代半ばまでに結婚したいと願ってきたのに、気づけばアラサーだ。
慌てて1年ほど前から熱心な婚活を始めた。自らが幹事となって数多くの食事会を開き、出会いがありそうな場所には積極的に顔を出すようにしてきたが、未だに運命の相手には巡り会えずにいる。
一方で今回のように、美紗が開催した食事会をきっかけに友達が付き合い始め、結婚まで至ったケースは、これまでも数回あった。
友人の幸せを祝福できないわけではない。でも、一番の願いは自分の結婚だ。食事会を頻繁に開催しているのも、友達のためというより自分の結婚のためなのに、どうしていつまでたっても美紗は幸せを掴めないのか。
一人、また一人と“あちら側”へ行ってしまう友人たち。彼女らをただ見つめているだけで何もできない自分に、美紗は焦りを感じていた。
しかし、蒔いていた種が芽を出し、美紗にチャンスが訪れる!
悶々としている美紗に、以前食事会で出会った男からLINEがきたのはそれからすぐのことだった。
『美紗ちゃん、久しぶり。前にみんなでゴルフ行こうって話してたの覚えてる?今度、お互いに友達誘って行きませんか?』
弘毅というその男とは、1ヶ月前に開かれた食事会で知り合った。その際にお互いゴルフが好きという話ですっかり盛り上がったことを美紗はよく覚えている。
見た目もその他条件も悪くはない弘毅のことを “ナシではない”と思った美紗は、後日食事に誘ってみたのだが、やんわりと「また機会があれば」とスルーされてしまったのだ。
しかし美紗は、その瞬間にモードを切り替えた。「今度みんなでゴルフに行こう」と提案することで、次の出会いに繋げる作戦をとったのである。そうやって蒔いていた種が、小さな芽を出したようだ。
『はい、是非是非行きましょう!友達二人誘いますね!』
こうして、3:3で千葉にあるゴルフ場に出かけることになり、美紗は大学のゴルフサークル時代の女友達2名に声をかけたのだった。

-弘毅さんの友達、二人とも素敵だなあ…。
ひとりは商社マンで、ひとりは会計士。男性陣同士も大学時代からの付き合いということで、職種もタイプもバラバラだが、弘毅に負けず劣らず二人とも魅力的な男たちだ。
-商社マンはちょっとチャラチャラしてるけど話が面白いし、会計士は少し奥手そうだけど誠実っぽい。どっちも悪くないなあ…。
ティーショットを打つ男たちを、美紗はうっとりとした目つきで交互に眺めるのだった。
しかしラウンドを終えて、とあることに気がついた。美紗以外の二人の女友達が、それぞれの男と明らかにイイ感じなのだ。
「えっ、狸穴のあたりに住んでるの?うち、一の橋公園からすぐ近くだよ!」
「えー、じゃあ今度十番でご飯食べましょうよ〜♡」
「私、焼肉マニアなんですよー!この間、吉祥寺の予約の取れない焼肉屋さんに行って…」
「本当?俺も焼肉はかなり好きだよ。『金竜山』は行ったことある?」
そしてそんな2組のカップルを、弘毅は菩薩のように穏やかな笑みを浮かべ、ニコニコと見守っているだけだ。
-今日の会をセッティングしたのは私なのに、どうしてまたこうなるの…!?
その日の夜、帰宅した美紗は、バスルームの鏡に映る自分の姿をじっくりと見つめてみる。
-他のみんなに比べて、私だけ容姿が劣ってるってわけでもないよね…?気配りだって笑顔だって欠かしてない。理想が特別高いわけでもないのに、どうしてこうなるんだろう…。
しかしいくら考えても答えは見つかるわけもなく、美紗はがっくりとうなだれるのであった。
婚活に精を出す美紗になぜ幸せが訪れないのか…。親友からの愛の鞭で、その理由が明らかに。
週末は、親友のさゆりに会う約束をしていた。
『6TH by ORIENTAL HOTEL』でランチをしながら、美紗は愚痴をこぼす。
「…こんなに婚活頑張ってるのになあ。誰よりも頑張ってるのに、どうしてうまくいかないのかなあ…」
「美紗は、食事会以外にはどんな婚活しているの?」
さゆりに尋ねられ、美紗は意気揚々と1週間のスケジュールを語り始める。
月曜は、男女混合のお料理教室。ここは、家庭的な夫候補を見つけるのには絶好の場所だ。そして火曜はボルダリング教室で、会社の先輩がここで彼氏を見つけたと聞いてすぐに始めた習い事だ。水曜は、ハイスペな掘り出し物が潜んでいると言われるワインスクール。そして、木・金は毎週お食事会…。

そこまで一気に説明すると、再びため息をついた。
「1年前からこんな調子で頑張ってるし、行けば素敵な人もたくさんいるのに、うまくいかないんだよね…」
すると、どんよりと顔を曇らせる美紗を見かねたのか、さゆりがこんなことを言ってきた。
「そうだ。美紗、来週金曜日って暇かな?名古屋に転勤中の男友達が、出張で東京に来るから飲む約束してるの。彼、ゴルフもワインも好きだから美紗と合うかも!彼、いずれは東京本社に戻って来ると思うし、おすすめだよ。会ってみる?」
しかし、美紗は首を横にふる。
「ごめん、金曜はお食事会の約束入れちゃったから、またの機会かな…。ほら、さゆりも一緒に行った、恵比寿でのお食事会あったでしょ?あそこで連絡先交換した人に、次のお食事会開いてもらうことにしたんだよ」
それは2週間前に開催された、日系証券会社の男たちとの食事会だった。参加者たちは、全員がなかなかのイケメンで、目移りしてしまうほど。
しかし、最後まで誰からも連絡先を聞かれることのなかった美紗は、帰り際にそのうちの一人を捕まえて、“次の食事会”の依頼をしたのだ。
食事会での出会いを、次の食事会につなげること。これは美紗の特技でもあった。毎週木・金が、2ヶ月先までびっしり食事会の予定で埋まっているのも、この特技のなせる技だろう。
ところがそのとき、さゆりは冷たい口調でこう言ったのだった。
「ねえ。美紗って結婚できる男なら誰でもいいの?話を聞いてると、出会う人全員のこと“悪くない”っていつも言ってて、理想が高すぎるよりはマシかもしれないけど、“誰でもいいから結婚したい”のが見え見えの女なんて男にも選ばれないと思う。もっと目標やゴールを明確にしないと」
「えっ…。わ、私のゴールは、結婚すること。それだけだよ…」
いつもは優しいはずの親友のキツイ言葉に、思わずしどろもどろになる。しかしさゆりは、こう続けた。
「でも、そもそも美紗は、婚活っぽい予定を詰め込んで忙しくすることで、満足しちゃってない?それは婚活した気になっているだけだよ。予定を詰めるのもいいけど、ひとつひとつの出会いを大切にして、ちゃんと男の人に向き合ったほうがいいんじゃない?」
美紗は、絶句していた。確かに自分はいつのまにか、とにかく数をこなすことで何かした気になっている“婚活してる風モンスター”となっていたのだ。
そして、来週からは毎週土曜日に「愛され女になるための婚活セミナー」に通うため、すでに高額な申込金を支払っている。
厳しい口調で説教を続けるさゆりを目の前にしながら、そのことだけは口が裂けても彼女には言うまいと固く誓うのであった。
▶Next:8月31日 金曜更新予定
婚活のため、海外進出を果たすモンスター。

