桂歌丸さん(2016年4月)

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 落語家の桂歌丸師匠が亡くなった。81歳。

「芸人としてはもう少し、あと5、6年はしゃべってほしかったと思いますね。歌丸さんの師匠の桂米丸は93歳で、今も高座に上がっていますからね」

 と演芸関係者。

 訃報記事を読み込むと、やはり歌丸師匠の代名詞として取り上げられているのは、演芸番組『笑点』に50年出演したというキャリア。

「加えて長講の怪談噺や人情噺に挑んだという点が素晴らしいという評伝が多かったですね。若いころに取り組んでいた新作落語の演目は、どこにも掲載されていませんでした」(前出・演芸関係者)

 ある演劇評論家は、歌丸落語について次のように断じる。

「落語としては完成の途上にあった、という芸です。まだまだ伸びしろがあったというか。芸というものはどんな世界の芸もそうですが、永遠に完成しないものですからね」

 言外に、ちょっと皮肉めいたニュアンスも見え隠れする。

 そのうえで、こう提案したいと、続ける。

「芸そのものの評価ではなく、落語という娯楽、落語家という存在を国民に幅広く知らせた功績として、やはりここは国民栄誉賞を差し上げたい、と思いますね。フィギュアの羽生結弦選手が受けられたばかりですが、安倍政権にとっても悪い話じゃない。

 本来であれば『笑点』の司会から引退する際に、国民栄誉賞の話題が持ち上がればよかったのですが、あのときは、三遊亭円楽という腹黒が、『歌丸師匠を人間国宝に!』という署名運動を勝手にやらかして、いわゆる贔屓(ひいき)の引き倒しってやつになりました。

 人間国宝はもう亡くなったために無理ですし、元々芸が足りなかった。国民栄誉賞ならどこからも文句がでないと思いますよ」

 実際、芸能の世界では、歌手の美空ひばりや俳優の渥美清ら亡くなった後に受賞している人も大勢いる。

 演芸界初の国民栄誉賞に歌丸師匠! 誰か乗っかる為政者はいないものだろうか。

<取材・文/薮入うらら>