『玄関マーキング』にご用心!不気味なマークや印に潜む、犯罪のニオイ
訪問販売員が情報を共有するためなのか、犯罪集団の申し送り事項なのか。
「うちでは実態がつかめていない。まったく情報がない状況なんです」
そう説明するのは日本訪問販売協会の担当者。
不気味な『玄関マーキング』
綜合警備保障大手のALSOKは、「もともと訪問販売業者や、新聞配達員などが自分だけにわかる目印として書いていたんだと思いますね」と推測。
情報サイト『ALL About』の防犯ガイドで、安全生活アドバイザーの佐伯幸子さんは、
「記号を書いた人、気づいた人がいつからいたのかというデータはないですね。ただ2002年ごろインターネットの普及で玄関マーキングの存在が人々に認知されるようにはなりました」
何でも明らかになってしまう時代に、確固たるエビデンス(証拠、証言)がないという不思議。それでも確実に存在している『玄関マーキング』という不気味。
つい最近も「家の鍵穴付近に変なマークがあった」というツイートがバズり、8万リツイート&10万超えの『いいね!』で関心を集めたばかり。
ALSOKはホームページで“マークとその意味”を解説しているが、あくまで一例で真意は定かではないとしている。
前出・日本訪問販売協会の担当者は、
「おそらく、マーキングをしている人たちの扱っている品目は、かなり限定的なものだと思います。そういう事業者の情報はうちには入ってこないんです」
と特殊性をにおわせる。前出・佐伯さんはこの発言の意味を、
「怪しいタイプの、押し売り系の訪問販売でしょうか」
と推察する。
その昔、昭和20年代ごろの日本の一般の家には、呼び鈴なるものはなかった。
「玄関を開けて“ごめんください”と訪ねるのが普通でした。お屋敷にしかなかったブザーが一般家庭に普及したのは、1954年から20年余りの高度経済成長期といわれています」(前出・佐伯さん)
現在のようにコンビニやスーパーがどこにでもある時代ではなかった当時、押し売りの営業品目はゴムひもだったり石けんだったり歯ブラシだったり。玄関に座り込み、相手が買うまでテコでも動かないという“かなり圧の高い訪問販売”が存在していた。
しかし、時は流れていま、一体、誰が何の目的で、解読可能なバレバレの、なんともアナログな書き込みをしているのか。
犯罪集団の可能性も
前出・日本訪問販売協会の担当者は、
「訪問販売業者は他社同士で情報共有することはありえないと思いますね。協会も業者さんに聞いてみましたが、“マーキングの意味がわからない”という声はありました。取引先のお客さんの性別や帰宅時間などは、自分でメモを取ればいいだけで、他人に知らせる必要はないんですよ」
ときっぱり。そのうえで、
「今、マーキングがあるとすれば、犯罪集団かもしれないですね」
と推理する。前出・佐伯さんの見方も似る。
「空き巣狙いや押し売り訪問販売員の世界にも、ある程度の仲間はいると思われます。お互いさまということで、情報の共有だろうと推測されますね」
物騒な狙われ方をされないためには、どう対策すればいいのか。佐伯さんが続ける。
「表札やガスメーターなどの周辺にどんなシールが貼ってあるのか、どんな数字が書かれているのか、住人として敏感になって、変な数字やマークが書いてあったら、それは消すようにしましょう。新しく引っ越したところでも、以前の住人の個人情報が残っている場合があるので、マーキングはすべて消すのが原則です」
さらに、玄関まわりなどを見渡してマーキングを発見する以上に重要なことは、マーキングの変化に気づくこと。
「表札にいつの間にか×印のキズがついていました」
大阪在住の20代男性は、引っ越してきた当初は何も印はなく、引っ越して1年ぐらいたったころ×印に気づいたという。
「心当たりがあるとすれば、浄水器の押し売り業者。会社名も名乗らず、こちらが断るとドアをがさつに閉めて帰っていきました。あとから振り返ると、その後に×印をつけられたような……」
と、記憶を手繰り寄せる。
個人情報に対する意識を高め、個人情報をさらさない暮らしを心がけることは現代の空き巣対策にひと役買う。
「他人の目に見えるものは、すべて個人情報なんです。例えば家で干されている洗濯物を見れば、家族構成や年代などがわかります。さらに家族の名前を出している表札であれば、子どもが不審者から名前で声をかけられる危険性だってある。
SNSで個人情報を発信することも危険です。高級店で食事をしたり海外に行きましたと投稿すれば、お金を持っていると推測される。部屋の内部や間取り情報なども他人にさらすのはやめたほうがいい。狙われるだけです」(前出・佐伯さん)
手の内をなるべく見せないことが犯罪に巻き込まれない第一歩となる。