「不登校になった小学生」に親は何ができるか
昆虫やカニしかわからない子になってしまったらどうしようと思われるかもしれませんが、そうはなりません(写真:マハロ / PIXTA)
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小学2年生の息子が2週間、不登校です。入学してから、機嫌よく学校に行った日は数えるほどしかなく、不登校になるまでは、怒ったりなだめたりしながら登校させていました。
宿題も2年生になってからはほぼ怒りながら本人もイヤイヤやっていた状態でした。夏休みが終わって1週間ほど学校に行ったのですが、「学校の全部が嫌だ! 勉強も大嫌い!」と言われ、その後不登校になってしまいました。
今のところ家ではまったく勉強はしていません。昆虫とカニが好きで図鑑などは読んでいます。この先どうすればいいのかわからず不安でしかありません。
(仮名:後藤さん)
決して少なくはない不登校児童
日本全国でとらえると、公立小学校の在籍児童数約630万人のうち、約3万人が不登校の状態にあると文部科学省のデータで示されています。この数は、中学生になるとさらに増え、公立中学校の在籍生徒数約315万人中、約10万人が不登校となっています。(出典:平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(速報値)」)。この数は、客観的にみて少ないとは決して言えない数字でしょう。
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わが子が不登校になってしまったということで、心配され、日々どうにかして学校に行ってもらいたいと、はやる後藤さんの気持ちはとてもよくわかります。
不登校の原因というのは多種多様で、一概にこれが原因であると言うことは難しいですが、筆者がこれまで経験したことについてお話しましょう。多少なりともご参考にしていただければ幸いです。
筆者は、現在、広域通信制の高校の経営にも携わっています。それもあり不登校の生徒と話をする機会が時折あります。そこで感じることは、「一点集中型の天才型の子が多い」「精神的に大人」「他者の気持ちに敏感」という傾向のいずれかを持っているということです。
現在の学校教育は、何でもこなすマルチ型の人間が評価されるようになっています。逆に一点集中型の子どもたちにとっては、居心地の悪さを感じてしまうということも少なくありません。一点集中型の子の「一点」の部分が、もし学校教育の中になかったら、その子は、さらに大変な思いをして学校に行くことになりかねません。小学校より中学校のほうが不登校生の数が多いですが、おそらく発達の段階で、より個性が強調されるため、周囲との違和感を持つのではないかと思われます。
後藤さんのお子さんは、まだ小学2年生であるため、中学生や高校生の場合とは異なるかもしれませんが、学校の雰囲気に何か違和感を持っており、それをある意味、正直に表現しているとも考えられます。
では後藤さんのお子さんの状況をみてみましょう。
□ 入学してから機嫌よく学校に行ったことが数えるほどしかない
□ 宿題は強制的にやらせ、イヤイヤながらやっていた
□ 「学校の全部が嫌だ! 勉強も大嫌い!」と言って不登校になった
この状態から推測すると、わがままとは異なる「強制されることに過度な違和感を持つ」パーソナリティを持っている可能性があります。小学2年生では、このようなケースはそれほど一般にはありませんが、かといってマイナスのパーソナリティというものでもありません。すでに今の段階から、自分の主義主張を持っており、それを体全体で表現していると考えていいでしょう。
今やっている方法をきっぱりとやめてしまう
では、親としてどうしたらいいかというお話です。次の方法を試してみて下さい。
「今の対応方法とは、真逆の方法をとる」
つまり、今やっている方法=「無理やり学校に行かせる、無理やり勉強させる」をきっぱりとやめてしまうのです。やめることで親がイライラ、心配することがあるかもしれませんが、それもできるだけ表に出さないようにします。
そんなことをしたら「もっと心配になる」とお感じになるかもしれません。もしそう感じるとしたら、「子どもにあれこれとしてしまう目的は、親が『自分の気持ちを安定させるため』になってしまっている」からかもしれません。強制されるのが嫌いな子どものことを考えるなら、今は無理やり学校には行かないほうがいいし、勉強はしないほうがいいように思います。しかし、ここからが大切なのですが、筆者は「子どもが一生このままの状態でいて良い」ということを言っているのではありません。子どもが自分で人生を切り拓いていけるようになる状態にすることがゴールであると考えていますが、あくまでも現在の初期段階では、「逆の方法をとったほうがいい」というお話なのです。
この逆の方法をとることで、劇的に改善した例は筆者の経験上、枚挙にいとまがありません。何しろ今の方法がうまくいっていないのですから、そのまま、うまくいかない方法を継続的に実行する理由はないでしょう。だからこそ、逆の方法なのです。
子どもは、始めは気が楽になって、自分のやりたい放題やりますが、やがてそれにも飽き、別の行動をとり始めることがあります。ずっと勉強しないと、だんだん勉強したくなるといった原理です。遊びもずっとやっていると飽きてくるのです。
興味があることを突破口にする
でも、親御さんとしては、勉強をまったくしなくなると心配になると思いますので、そこでもうひとつアドバイスです。
勉強に関しては、現在のお子さんは、勉強はまったくしないが、「昆虫とカニが好きで図鑑などを読んでいる」のですね。それを突破口にしてしまいます。つまり、学校の勉強ではない、昆虫やカニに関するものを集めたり、見に行ったり、飼ってみたりするのです。するともっと学びたいという気持ちが出てきます。
昆虫やカニしかわからない子になってしまったらどうしようと思われるかもしれませんが、そうはなりません。なぜなら、図鑑は活字で書いてあり、自分が知りたいことを知るには字を知らなくてはなりません。内容を正確に知るには読解できなくてはなりません。
昆虫の仕組みを知る課程で理科の知識がつき、生息分布を調べるうちに地理や海外とつながったりします。つまり、学校の教育全般をやることにはなりませんが、その一部には触れていくようになります。そうやっていくうちに、「本当の勉強」ということが実感できるようになっていくのです。すると勉強に対するマイナス的感情が薄れていきます。
このまま無理やりやらせたり、知識を詰め込んだりするより、実はこの方法のほうがはるかに効率的であり、ゴールまでの近道だったりすることもあるのです。
一定期間、集団生活を離れることなど、今さまざまな心配がおありかと思います。でも筆者は、後藤さんのお子さんには、非常に可能性を感じます。21世紀は後藤さんのようなお子さんが世に出る時代です。お子さんの才能や長所をぐんぐん引き出していくということを念頭に置かれて対応してみてください。