ひと足早く英国で活躍中の日立製車両395系に続き、運行面でも日本の力を見せられるか?

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JR東日本は8月10日、三井物産、アベリオUK(オランダ鉄道の子会社)との合弁企業が、鉄道発祥の地である英国のウェストミッドランズ旅客鉄道事業の運営権を獲得したと発表。エリアは首都ロンドンと英国第2の都市バーミンガム、リパプール。全長899kmの列車運行を今年12月から行なう予定だ。

英国の鉄道は日本と事情が異なる。日本は各鉄道会社が線路や駅を所有し、列車の運行まで担う(一部例外あり)のに対し、英国では公共事業体のネットワークレール社がすべての駅や線路を所有。その運行を、数年ごとの国際入札で落札したさまざまな会社に委託する形だ。現地在住の鉄道ジャーナリスト、さかいもとみ氏が解説する。

「現在、英国の鉄道は15社が運営していますが、日本の鉄道会社が参加するのは初。入札の際、JR東日本陣営は遅延の少ない運行システムをアピールしたようです」

英国の鉄道の運行は大ざっぱで、半数以上の列車が時間どおりに来ないという話もある。世界一正確といわれる日本の鉄道会社に対する現地の期待は大きいが、思うほどうまくはいかないのではと、さかい氏は推測する。

「同じ線路を複数の会社の列車が走るケースもあり、どこかが遅延すればその影響を受ける。1社だけのシステムの問題では済まないのです」

ただ、ほかにもJR東日本が運営権を獲得できた理由とされるものがあるという。

「それは、JR東日本のSuicaシステムです。海外でも非常に注目されています」(さかい氏)

鉄道に乗るだけでなく、買い物をしたり、カードキーになったり…。そんな便利なSuicaが、ついに海を渡るかもしれないのだ。また、落札の条件である新車225両の導入に関しても、その一部にJR東日本の子会社・総合車両製作所の車両が採用される可能性がある。

少子高齢化の日本では既存路線の利用客増は見込めず、エリア拡大も事実上不可能。そんなJR東日本にとって、今後は海外戦略が必要不可欠なのだ。今回はひとまず列車の運行のみだが、日本の鉄道会社は事業拡大が得意。決済システム、車両……ときて、いつかロンドンの駅にルミネが立つ日が来るかも?