山手線の「低すぎる」ガードが消えようとしている―――ニュースサイトの「東洋経済オンライン」が2017年6月8日、そう報じると、ツイッターでは大きな話題を呼んだ。

その低すぎるガードとは、山手線の品川新駅(仮称)を建設予定の、旧田町車両センター跡地を横切るように作られた高輪橋架道橋(東京都港区)だ。その低すぎるガードは一体どのような場所なのだろうか。6月中旬、実際に体験してみた。

本当の制限は終盤

高輪橋架道橋は、都営浅草線泉岳寺駅近く、山手線品川駅と田町駅のちょうど中間地点に位置する、制限高1.5mという極めて低い天井が特徴の道路だ。

日本人の平均身長は、男女ともに12歳で1.5mを超えるため、中学校入学後の多くの人にとってはかなり厳しい制限だと言える。

うっかり制限より大きな車などが入り込まないようにと、通路付近には警告の標識が建てられている。


いざ、噂の道へ(画像はすべてJタウンネット撮影)

標識を通り過ぎると、問題の高輪橋架道橋が視界に入る。





入口にある高さ制限を示すバーには錆が浮いており、歴史を感じさせる、というよりも、昭和っぽい雰囲気を過分に醸し出している。

しかし、天井の低さは想像していたほどではない。身長が185cmと高めの筆者だが、軽く首を傾げるだけで問題なく通行できた。

こちらは筆者の視線から撮影した画像だが、1.5m制限と言うのはかなり余裕を持った制限ではないか、という印象を与えた。



少し進むと山手線の線路下を抜け、開放的な空間に出る。山手線が通り抜ける際の迫力は中々だ。鉄道ファンと思しき人も、この角度から写真を撮影していた。



また、山手線を抜けた先の天井には梁のようなものが走っており、ところどころで首を休めることが可能だ。そのため、覚悟していたほどの圧迫感はなかった。







「意外と余裕じゃないか」と考えながら歩を進めると、この通路の本気が顔を出した。ここからが本当の1.5m制限なのだ。この先に広がるのは、完全にコンクリートに覆われた天井である。

首を傾けるだけではとても通れそうにないので、中腰の姿勢で歩を進めることになる。



緑色のライトの照らされた上下に狭い空間は、行ったこともない坑道を強くイメージさせた。



中腰で腰を痛めながら数10mの道のりを進み、ようやく低い天井から解放される。重苦しいコンクリートの天井の圧迫感は想像以上に強い。



なるほど、これは「珍スポット」と言っても差支えないだろう。

地元民の重要な移動手段

しかし、よそ者には珍スポットであると同時に、住民や周辺のタクシーにとっては重要な道であることも分かった。

筆者が撮影している間にも周辺住民やサラリーマンが頻繁に通行していた。

タクシーも慣れているのか、特にうろたえる様子も見せずに中に入っていく。上部に「ちょうちん」が追加されているタクシーにとってはギリギリの高さを、徐行はしているもののすいすいと進むさまは圧巻だ。

線路の向こう側へ抜けるには、品川と田町、どちらの方面に行くにしても迂回する必要がある。そのため、抜け道として重宝されている。



山手線新駅は2020年までの開業を目指して計画が進められている。

同時に駅前の開発も行われるため、この通路も含めて周辺の様子は現在から大きく様変わりするだろう。気になる人は早めに行ってみることをお勧めする。