報徳学園高等学校(兵庫)永田裕治元監督「報徳学園イズムとは最善の準備をすること」【Vol.3】
第2回では、全員野球を貫いたからこそ得たものについて、語っていただきました。第3回では、報徳学園の戦い方、理念について語っていただきます。
■報徳学園高等学校(兵庫)永田裕治元監督「全員野球のメリット」【Vol.1】から読む■報徳学園高等学校(兵庫)永田裕治元監督「全員野球を貫いて得たもの」【Vol.2】から読む
揺るがない報徳イズム永田 裕治・元監督(報徳学園)
試合に臨む際は、その試合が始まるまでに万全の状態にもっていけるよう、最善の準備をしてあげるところまでが指導者の仕事だと思っています。そのかわりいざ試合が始まったらおまえたちで頑張れと。ただし、試合の終盤などにもつれたりして困ったらいつでも頼って来なさいと。選手たちには常々そう伝えています。
公式戦の試合中に怒ることはありません。公式戦で思うようにいかなかった責任はすべて監督にあるからです。できるようにしてあげられなかった自分が悪い。怒ったとしたら、それは自分に対して怒ってることになります。
ただし、よほどの怠慢プレーが出た時はその限りではありません。その怠慢プレーを生じさせてしまった自分が悪いという思いはあるのですが、ベンチに入れなかった選手たちのことを思うとやはりそこは看過できない。試合中に怒ることで試合のペースを崩し、敗戦の確率を高めてしまう懸念があったとしても、そこは大声で叱ります。
全員でカバーし合いながら、泥臭くプレーするのがうちの野球。例を挙げると、うちの野球部では、フライが上がった際のボールのお見合いはご法度です。お見合いしてヒットにするくらいならぶつかって捕りに行こうという決まりになっており、練習ではあえてぶつかる練習もおこないます。
ぶつかったことで捕球できずにはじいてしまい、ボールが宙に浮いたとしたら、そのボールが地面に落ちる前にほかの誰かがヘッドで飛び込んででもキャッチしにいく。周りの選手はいつでも飛び込めるようぶつかることも想定して準備しておく。それこそが「報徳野球」なのだと。
過去最大の成長を遂げた現チーム選手に声をかける永田監督
うちは去年の秋の新チームの段階では県のダークホースにも挙げられていないようなチームでした。私も「史上最弱」と口にしていましたし、現監督の大角ともこれはなかなか厳しいぞという話をしていました。
あまりにも弱いので、強いチームと練習試合を組んだら自信をなくしてしまうと思い、ほとんど組まなかったほどです。
そんなチームが秋の県大会で準優勝し、センバツでも力以上のものを出し、大会中にさらに成長を遂げながらベスト4に輝いた。過去にこれほど成長したチームはなく、監督生活の最後で、あらためて高校生のすごさを実感することができました。もちろん選手たちの努力の賜物です。まだまだ伸びていける余地があり、今夏が楽しみでなりません。
永田裕治元監督からのメッセージ甲子園に出たいという目標はあるにしても、根本的な話をすれば、どの子もみんな野球が好きだからこそ、高校野球を志し、入部してくる。指導者の方々は、情熱をもって、選手たちのモチベーションを上げ、子どもたちが野球が好きなまま、高校野球生活を全うできるよう、全力で配慮してあげてほしいと思います。
高校球児のみなさんは、野球ができる喜び、野球の楽しさを忘れることなく、最後までやり抜いてほしい。甲子園のような大きな舞台に出るにはつらく、しんどい思いもしなくてはなりませんが、野球の楽しささえ忘れずに持ち続けることができれば、そのつらさは必ずや乗り越えていけるものです。
(取材・文=服部 健太郎)
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