約50万円の超高級音楽プレーヤー「A&ultima SP1000」、その魅力は
●超高級機たる所以
ポータブルプレーヤーの名門、Astell&Kern (アステル アンド ケルン)からニューモデルが発売される。その名も「A&ultima (エー アンド ウルティマ) SP1000」、一切の妥協を排し設計された新フラッグシップだ。いち早く製品に触れる機会を得たため、その質感と外観、サウンドクオリティについてレポートしたい。
2012年に発売された「AK100」以来ハイエンド・ポータブルプレーヤー市場をけん引してきたAstell&Kern。今回のA&ultima SP1000は第4世代の新フラッグシップにあたる製品で、モデル名の「SP1000」に「A&ultima」というセグメント名が冠され、「A&ultima SP1000」を名乗る。今後、Astell&Kernは「A&○」という3つのセグメントに分かれ、それぞれ特長あるラインナップを展開するとのことだ。
○「A&ultima」は最上位セグメント
「A&ultima」は、ウルティマ(究極)という言葉のとおり真のハイエンド・ポータブルを目指すセグメントだ。音質を大きく左右するDAC部には、旭化成エレクトロニクスの最新32bitチップ「VERITA AK4497EQ」を採用、それを新設計回路のもとL/R独立のデュアル構成で搭載する。
出力と歪み、S/Nの向上は数値にも表れている。前世代のフラッグシップ機「AK380」と比較すると、最大出力は2.3Vrmsから3.9Vrmsへ(バランス/無負荷時)、S/Nは117dBから122dBへ(@1kHz)、THD+Nは0.0007%から0.0008%(@1kHz)へと改善された。
○CPUがパワーアップ
オクタコア(8コア)のCPUを採用したことも、音質向上に寄与しているという。Astell&Kernでは、第2世代機以降AndroidベースのOSを採用しているため、主要プロセスはマルチスレッド環境に最適化されているものと推測され、それが低遅延にも奏功しているとなれば理解できる。レスポンスの改善や起動時間の短縮といった操作性に関する部分も、CPUのパワーアップに負うところが大きい。
○デザインのポイント
一方、デザインは大きく変わった。AK380では、Astell&Kernのデザインコンセプト「光と影」を踏襲しつつ、フレームが回転するような「動」の要素を取り込んでいたが、このA&ultima SP1000では「静」を感じさせる。
5インチ/720×1080ピクセルの表示部を最大限に生かすベゼルレスデザインも、その流れで採用されたのだろう。個性という点では大人しくなった感もあるが、「静」により魅力を感じる向きは多そうだ。
○使い勝手の良さ
高速充電・高速データ転送に対応したことも見逃せない。USB 3.0(Type-C)をサポートしたことにより、高速充電対応のUSB-ACアダプタ(9V/1.67A)を使えば約2時間の充電で最大約12時間の連続再生が可能になった。理論値で最大10Gbpsのファイル転送にも対応する。ポータブルプレーヤーとしての基礎部分も着実に前進しているといえる。
なお、A&ultima SP1000には「ステンレススチール」と「カッパー(銅)」の2モデルが用意される。重量は前者が約386.6g、後者が約387.9gとほぼ変わらないが、間近で見ると存在感はかなり異なる。価格設定が同じということもあり、好みで選ぶのもいいだろう。
●実際に使ってみると
○"ひと皮剥けた"音と操作性
試聴はステンレススチールモデルを中心に、2.5mmバランスケーブルに換装した開放型ヘッドホン「AK T1p」との組み合わせで実施した。楽曲は宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」(FLAC 96kHz/24bit)の収録曲を中心としたが、Josep Colomの「Mozart & Chopin - Dialogues」(DSD 11.2MHz)もチョイスしている。
A&ultima SP1000を手にとると、400g近くあるだけにさすがの重量感。しかしディスプレイが5インチということもあり、それほど違和感はない。外観に比しての重さという点では、前代AK380のほうが上回るかもしれない。ベゼルレスのため、目に入る金属部分が減ったことも心理的に影響しているのだろう。
操作性は明らかに向上している。高性能8コアCPUを採用したこともあるだろうが、UIの見直しによる効果が大きいのだ。画面中央へ向かって左端をフリックするとメニュー、右端をフリックすると再生リスト、上端が通知で下端が再生履歴と主要な操作を共通化するなど、UI全体に一貫性がある。ただ単にCPUのパワーでクイックレスポンスを目指しました、という以上の作り込みが感じられる。
ユーザー目線という点では、microSDカードスロットが上部へ移動したことも指摘しておきたい。これによりケースを取り外すことなくmicroSDカードを抜き差しできるようになり、よりスピーディーに楽曲ライブラリを入れ替えられるようになった。
肝心の音だが、前世代機からの進化は確かだ。ヘッドホンリスニングのため脳内定位とはなるが、宇多田ヒカルの「道」は彼女の声と楽器の位置関係が明瞭で見通しがよく、それぞれの輪郭がはっきりとしている。200Fsというフェムト秒 (1,000兆分の1秒)クラスの精度を持つVCXOクロックは前代AK380と同等だが、新しいDACチップ「VERITA AK4497EQ」の恩恵によるものか、音の鮮度という点ではひと皮剥けた感がある。
全体的な傾向としてはやや高域よりのキャラクターだが、低域もレスポンスに優れ量感がある。ピアノのように音域が広い楽器では、持続音や減衰音、アタック音までそつなくこなすだけでなく、各帯域のコントラストまで細やかに描いてみせる。
第4世代を迎えたAstell&Kern「A&ultima」セグメントの初号機にしてフラッグシップモデルは、高い完成度とさらなる可能性をも感じさせた。他のセグメントにどのような製品を投入するのか、期待しよう。
ポータブルプレーヤーの名門、Astell&Kern (アステル アンド ケルン)からニューモデルが発売される。その名も「A&ultima (エー アンド ウルティマ) SP1000」、一切の妥協を排し設計された新フラッグシップだ。いち早く製品に触れる機会を得たため、その質感と外観、サウンドクオリティについてレポートしたい。
2012年に発売された「AK100」以来ハイエンド・ポータブルプレーヤー市場をけん引してきたAstell&Kern。今回のA&ultima SP1000は第4世代の新フラッグシップにあたる製品で、モデル名の「SP1000」に「A&ultima」というセグメント名が冠され、「A&ultima SP1000」を名乗る。今後、Astell&Kernは「A&○」という3つのセグメントに分かれ、それぞれ特長あるラインナップを展開するとのことだ。
「A&ultima」は、ウルティマ(究極)という言葉のとおり真のハイエンド・ポータブルを目指すセグメントだ。音質を大きく左右するDAC部には、旭化成エレクトロニクスの最新32bitチップ「VERITA AK4497EQ」を採用、それを新設計回路のもとL/R独立のデュアル構成で搭載する。
出力と歪み、S/Nの向上は数値にも表れている。前世代のフラッグシップ機「AK380」と比較すると、最大出力は2.3Vrmsから3.9Vrmsへ(バランス/無負荷時)、S/Nは117dBから122dBへ(@1kHz)、THD+Nは0.0007%から0.0008%(@1kHz)へと改善された。
○CPUがパワーアップ
オクタコア(8コア)のCPUを採用したことも、音質向上に寄与しているという。Astell&Kernでは、第2世代機以降AndroidベースのOSを採用しているため、主要プロセスはマルチスレッド環境に最適化されているものと推測され、それが低遅延にも奏功しているとなれば理解できる。レスポンスの改善や起動時間の短縮といった操作性に関する部分も、CPUのパワーアップに負うところが大きい。
○デザインのポイント
一方、デザインは大きく変わった。AK380では、Astell&Kernのデザインコンセプト「光と影」を踏襲しつつ、フレームが回転するような「動」の要素を取り込んでいたが、このA&ultima SP1000では「静」を感じさせる。
5インチ/720×1080ピクセルの表示部を最大限に生かすベゼルレスデザインも、その流れで採用されたのだろう。個性という点では大人しくなった感もあるが、「静」により魅力を感じる向きは多そうだ。
○使い勝手の良さ
高速充電・高速データ転送に対応したことも見逃せない。USB 3.0(Type-C)をサポートしたことにより、高速充電対応のUSB-ACアダプタ(9V/1.67A)を使えば約2時間の充電で最大約12時間の連続再生が可能になった。理論値で最大10Gbpsのファイル転送にも対応する。ポータブルプレーヤーとしての基礎部分も着実に前進しているといえる。
なお、A&ultima SP1000には「ステンレススチール」と「カッパー(銅)」の2モデルが用意される。重量は前者が約386.6g、後者が約387.9gとほぼ変わらないが、間近で見ると存在感はかなり異なる。価格設定が同じということもあり、好みで選ぶのもいいだろう。
●実際に使ってみると
○"ひと皮剥けた"音と操作性
試聴はステンレススチールモデルを中心に、2.5mmバランスケーブルに換装した開放型ヘッドホン「AK T1p」との組み合わせで実施した。楽曲は宇多田ヒカルのアルバム「Fantome」(FLAC 96kHz/24bit)の収録曲を中心としたが、Josep Colomの「Mozart & Chopin - Dialogues」(DSD 11.2MHz)もチョイスしている。
A&ultima SP1000を手にとると、400g近くあるだけにさすがの重量感。しかしディスプレイが5インチということもあり、それほど違和感はない。外観に比しての重さという点では、前代AK380のほうが上回るかもしれない。ベゼルレスのため、目に入る金属部分が減ったことも心理的に影響しているのだろう。
操作性は明らかに向上している。高性能8コアCPUを採用したこともあるだろうが、UIの見直しによる効果が大きいのだ。画面中央へ向かって左端をフリックするとメニュー、右端をフリックすると再生リスト、上端が通知で下端が再生履歴と主要な操作を共通化するなど、UI全体に一貫性がある。ただ単にCPUのパワーでクイックレスポンスを目指しました、という以上の作り込みが感じられる。
ユーザー目線という点では、microSDカードスロットが上部へ移動したことも指摘しておきたい。これによりケースを取り外すことなくmicroSDカードを抜き差しできるようになり、よりスピーディーに楽曲ライブラリを入れ替えられるようになった。
肝心の音だが、前世代機からの進化は確かだ。ヘッドホンリスニングのため脳内定位とはなるが、宇多田ヒカルの「道」は彼女の声と楽器の位置関係が明瞭で見通しがよく、それぞれの輪郭がはっきりとしている。200Fsというフェムト秒 (1,000兆分の1秒)クラスの精度を持つVCXOクロックは前代AK380と同等だが、新しいDACチップ「VERITA AK4497EQ」の恩恵によるものか、音の鮮度という点ではひと皮剥けた感がある。
全体的な傾向としてはやや高域よりのキャラクターだが、低域もレスポンスに優れ量感がある。ピアノのように音域が広い楽器では、持続音や減衰音、アタック音までそつなくこなすだけでなく、各帯域のコントラストまで細やかに描いてみせる。
第4世代を迎えたAstell&Kern「A&ultima」セグメントの初号機にしてフラッグシップモデルは、高い完成度とさらなる可能性をも感じさせた。他のセグメントにどのような製品を投入するのか、期待しよう。