報徳学園高等学校(兵庫)永田裕治元監督「全員野球を貫いて得たもの」【Vol.2】
第1回では、永田氏が全員野球を大事にしている理由について語っていただきました。第2回では、全員野球を貫いたからこそ得たものについて話していただきます。
■報徳学園高等学校(兵庫)永田裕治元監督「全員野球のメリット」【Vol.1】から読む
全員野球が生みだす「納得」と「一体感」永田 裕治・元監督(報徳学園)
夏の甲子園予選前であっても、全員に同じ練習機会を与えるという方針は変わりません。たとえメンバーに入っていない選手であっても練習機会はレギュラーと一緒です。甲子園に出場したとしても大会中、全員に同じ練習をさせます。
高校生なんていつ伸びるかわかりません。センバツ大会で甲子園のアルプスで応援してた子が夏の大会で3番を打ったケースもあります。誰が伸びてくるかなんて、最後までわからない。近頃は自ら志望して裏方に回る選手も増え、その場合はその意思を尊重しますが、望めばいつだってレギュラーメンバーと同じ練習をすることができます。
このやり方を徹底すると、全員が同じ条件で日々を過ごせているため、チーム内の競争に勝てなかったときの言い訳はできなくなります。その分、メンバー選出の際の選手たちの納得度は高まります。
納得度が高まると、チーム全体に一体感が生まれます。ベンチに入ることが叶わなかった選手たちも心の底から応援してくれる。相手チームからは「報徳さんはスタンドと一体となって戦っている」とよく言われます。ベンチに入れなかった選手でも全員の目が誰一人死んでいないと。目を見たらわかると。
嬉しいのは、メンバーに入っていなかった選手達も含め、ほとんどの教え子が卒業後、学校に顔を見せに帰ってきてくれることです。「ここでお父さんは野球をやってたんだぞ」などと言いながら、奥さんや子どもを連れて帰ってきてくれる。そんな光景を見ると涙が出てきます。指導者冥利に尽きる瞬間です。
戦い方は戦力に合わせフレキシブルに永田 裕治・元監督(報徳学園)
報徳学園が目指している野球スタイルですか? それが、特にないんです。毎年、選手は違うわけですし、技術的なレベルも年度によって違う。ですので、特にカラーや方向性を決めつけず、その子たちの特徴を生かせるようにチームを作っていくことを心がけています。
もちろん目指す基本線となるものはあります。投手を中心にしっかりと守り、ワンチャンスをしっかりとものにしていくチームです。チーム結成してまだ日の浅い、秋の大会ではこの野球ができればそこそこの位置までは勝ち進んでいけるものです。
ただし、夏はそうはいきません。この基本線の上にそのチームの特色を磨き、乗せていかないとなかなか勝ちきることは難しいと感じています。今春のセンバツで4強入りを果たした現チームでいえば「特色は足だ」という話になりました。
ピッチャーが弱いのならば、1イニングずつ継投でつないでいけばいい。打てる選手たちの守りが拙いならば、守りが得意な選手たちとセットで考え、交代しながら出場させることで補っていこう。そして特徴の足を磨いていこう。そんな話を選手達としました。
チームの特色を踏まえてチームを作っていくので、練習メニューはその年によって変わります。2002年に全国制覇を遂げたチームは打てる選手が多かったため、打撃練習の量をあえて減らしました。減らしてもある程度打てるだろうという計算が立ったからです。その分、細かいプレーや守りの練習を増やしました。
私は監督になってから一日も欠かさず日誌をつけているのですが、その日誌を見返すと毎年、どんな練習をしたのかがわかるので、時には振り返り、練習メニューを組むヒントを求めにいくこともあります。
■元報徳学園監督・永田 裕治監督「全員野球を貫いて得たもの」【Vol.3】へ続く
(取材・文=服部 健太郎)
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