僕らが愛した亀田ボクシングコントはもう死んでいた!

愛する人の死体が甦ってきたけどゾンビだったのでぶん殴ってもう一回埋めた…ファンタジー作品でたまにある切ない場面。僕は今、そんな心境でいます。ゴールデンウィークの最後にバカ笑いで週明けの不安を消し飛ばしてくれるものと期待していた亀田ボクシングコントin AbemaTVは、死体をぶん殴って埋めるような切ないものでした。

すべてにおいてスケールが小さくなった設定は、「亀田興毅に勝ったら1000万円」という時点で正直虚しさこみあげるものでした。全盛期のボクシングコントであれば、勝てば1000万円どころではない価値があったというのに、今や素人さんを1000万円という小銭で釣るようになってしまったか。番組の企画としての賞金の上限額の問題もあるのでしょうが、最低でも1億円相当をかけるぐらいの大風呂敷から始めてほしかったのが本音です。言うだけ言ってどうせ払わない、ってのが面白いんじゃないですか。「ワイの愛車はハマーやで」と言いながら借りてきたハマーに乗ってる感じで、「やっぱり亀田だなぁ」と。

そして、対戦相手の選抜。身長175センチ以下、体重70キロ以下、成人男性、プロ・元プロを除くというガチガチの縛り。もちろん体重70キロというのはボクシングで言えばミドル級に相当する階級ですので、現役最後はスーパーフライ級(約52キロ)だった亀1号的にはかなりの譲歩と言える部分ではあります。しかし、ここはドーンと「誰でもかかってこいやー」「メイウェザーはんの挑戦を待っとるで」「井上?村田?なんじゃもんじゃーい」と言うだけ言ってから、身長165センチ体重50キロの図書館事務員とかを選んでくるから面白いんじゃないですか。引退していた選手が急に復帰して即挑戦者に指名する感じで、「やっぱり亀田だなぁ」と。

↓「全員一撃でしばきたおしたる」と言うだけ言っておいて、ガードを固めて小さなジャブを放つ、そういうホラッチョが美しいのに!


ホラは大きく、現実は小さく!

想定される現実に合わせたらコントはつまらなくなる!

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僕はあのボクシングコントの基本的な構造を「亀田が負けるのを見る」出し物だと思っています。それが実際には負けないので、心から対戦相手に肩入れする熱量も生まれたのだろうと。その熱の源泉にあたるのが、「こいつムカつく」という悪印象と、「ボクシングをコケにしおって」という怒りだったと思うのです。ボクシング界の仕組みを最大限に活用しながら、ボクシング界が繰り出す刺客を次々に退け、「なんじゃもんじゃーい!」とやる。亀田=ヒールであるからこそ成立した熱だったのです。

ところが、亀田ボクシングコントin AbemaTVは何をカンチガイしたか、歌舞伎町のホスト、YouTuber、高校教師、暴走族の総長と4分の3は世間からあんまり応援されないバックボーンの持ち主を選んできました。ガチンコファイトクラブかアウトサイダーに出てきそうなキャラクターは、亀田と並べたときに善悪の対立構造が非常にブレるもの。「総長よりは亀田のほうがマシ」「YouTuberに負けるな亀田」「ホストをぶっ飛ばせ亀田」と肩入れする相手がついつい逆になってしまいます。

そして何より、素人というのがよくない。これじゃあ挑戦者側の攻撃で亀田もやられませんが、亀田側もマジでやっちゃったらいけないことになってしまいます。その結果が、相手の見せ場をある程度作ったうえでボディでグラつかせ、レフェリーが早めに止めるという煮え切らない試合。第1試合のホストを吹っ飛ばしてしまったことで、後半の試合ではさらに慎重な手加減が始まるなど尻下がりに状況は悪化していきました。亀田が手加減しながらやってもダメなんです!相手が手加減しながらやるのが亀田ボクシングコントなんです!

そのうえ、勝敗の決着に判定がないというのはどういうことか。「コレはイッたろ!」「亀田ボッコボコwww」「まーけーろ!まーけーろ!」と野次りながら、判定で勝利を持ち去られ、逃げる背中に罵声を浴びせてこそ美しいコントエンディングじゃないですか。「亀田がかった!」という音声に心で「買」の字をあてるからいいんじゃないですか。何故判定を残さなかったのか。どっちみちKOしないかぎり挑戦者の勝ちはないのであれば、どんだけぶん殴っても倒さない限りは判定で負けるという裏設定にしておいたほうが、コントとしても盛り上がったはず。

「ちゃんとボクシングコントやろうや!」

今回の企画がAbemaTVという広い意味でのテレ朝系で行なわれたというのも、ボクシングコントらしからぬ設定の原因だったのかなと思います。TBSとの蜜月関係が終わり、捨てられたネタをリサイクルされてしまった。その際に、本来の美しいボクシングコントを換骨奪胎され、本格的バラエティ番組にされてしまった。「戦いのすえに和解して、キラキラした目で互いを讃え合う」という感動バラエティに。

違う、違う、違う。悪印象と怒りを最大限に増幅させるからこそ、最後の「なんじゃもんじゃーい!」が胸にクルのです。対戦相手のツイッターが荒れるのではなく亀田のブログが荒れる展開にこそ価値がある。本当は真面目で気弱なイイ子なんだと気づいても気づかないふりをしながら、やっとこ守ってきた「ヒール」を、こんな形で台無しにされるとは。ボクシングコントのことをわかっていない!

↓ダメだよ、こんな感じの記念写真撮ったら!リング上ではいがみ合っておいて、控え室でズッシリと重い紙袋を渡してから笑顔で写真を撮ることに意味があるのに!

リング上では対立、裏では仲良し!

それでこそ紙袋の中身が「金かな?」という夢が見られる!

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ヘッドギアが違うとかグローブの大きさが違うとか、細かい火種をあげようと頑張っている人もいるようですが、全盛期の亀田ボクシングコントは「ヒジでええから目に入れろ」「キン●●打て!」と普通にセコンドが指示を出し、「バンテージのなかにメリケンサックを入れている」とまで評された集団です。今さらちょっと用具の重さが違ったところで、驚くこともありません。いっそ亀田サイドはヘッドギア着用、対戦相手は素顔でマウスピースもナシくらいで、ようやく「おっ、汚いな。ヨシヨシ」と思う感じ。

ボクシングのよさを引き出す(=亀田の強さを引き出す)ことはそもそもできず、コントの面白さを引き出す(=亀田ムカつくの気持ち)こともできず、イイ話にしてしまったらこのコンテンツはおしまいです。いや、もう終わっていたんだけれど、改めてトドメを刺されたというか、埋め戻されたというか。

↓まだまだAbemaTVのサーバーを落とすだけのコンテンツ力があるコントだと言うのに!

<アクセス過多でサーバがダウン>


<ミスチルもダウン>


<まどマギもダウン>


「世間から怒りを買う」という使命は間接的に達成!

しかし、怒りの矛先はAbemaに向いてしまった!

違う違う、もっと亀田に怒ってほしかった!

↓ダメだよ!「あぁこのホスト、派手にぶっとばされないかな!」みたいな試合を組んじゃ!

どうでもいいけど亀陣営やる気薄いwwww

亀田トレインはやらないわ、2号はヘラヘラしてるわ、1号の渾身のしかめ面は半笑いだわwwww

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亀田の残り火を自分に放ち、炎上しながらAbemaTVを肥大化させていくという意味では、この企画は成功だったのでしょう。ただボクシング界にはもちろん何の好影響もなく、亀田ボクシングコントにとっても再び燃え上がる機会にはならず、「昔の名前をお貸しします」の企画になってしまったことは個人的には非常に残念でした。

あの素晴らしい日々はもう帰ってこないのだと、改めて身につまされ、ゴールデンウィークが終わる辛さがまた甦ってくるような切ない試合でした。「日本でもう一度コントがやりたかった」という1号の想いが、これで成就されたということだけが救いなのです…!

↓次回やり直しがあるなら、せめてこんな感じにしてほしい!
●企画:
亀田興毅と試合をしたければ1000万円払え

●キャッチコピー:
何でワシがタダでやらなアカンねん。

●概要:
全国から募ったプロ、元プロを含む身長・体重無制限の男、女、そして動物たち。彼らの悲願はタダひとつ、あのムカつくタコ焼きをぶっ飛ばすことだ。しかし、亀田興毅戦うためにはひとつ条件がある。それは「1000万円を支払う」こと。このお金は試合がどうなろうが戻ってこない、いわば前金のファイトマネー。日本人初の三階級王者に、ボクサーでも世界ランカーでもない男が戦いを挑もうというなら当然の額だ。そのくらいの気持ちも財力もない男が、三階級王者に挑もうなどとはおこがましい。そもそも諸君らに強さがあれば、現役当時の亀田興毅と戦うことだってできたのだ。もちろん亀田は逃げるが、次々にその階級へと追いかけていき、主要4団体の王座を獲れば、いずれは亀田とて逃げ切れなくなるのだから。その程度の強さしか持たない人間はせめて1000万円くらい払ってほしい。ただし試合当日、諸君らは驚くべき光景を見るだろう。ヘッドギア装備でガチガチに守りを固めた亀田興毅と、やけに羽振りのいいジャッジ、そして蝶ネクタイを締めてリングの中央に立つ亀田のオヤジの姿を…!諸君は1000万円の元を取れるか!?なお、諸君のファイトマネーは勝っても負けても5万円だ!三階級王者に挑む体験そのものに価値を見い出せる男たちよ、集え!

●ルール:
・ボクシングルール3分1ラウンド
・挑戦者はノーヘッドギア・ノーマウスピース、亀田サイドはヘッドギア有り
・フリーノックダウン制(何度ノックダウンされても負けにはならない)
・ドクターストップ、偶然のバッティングにより試合続行が不可能となった場合は、前のラウンドまでのポイントで判定する(1ラウンドで試合続行が不可能となった場合はドローとする)
・ドローの場合は亀田サイドの勝ちとする

見える!血だらけの姿でコーナーポストにのぼり、「なんじゃもんじゃーい!」と叫ぶ亀1号の姿が!

勝てるものなら勝ってみろ!

「勝つことよりも戦うことが難しい」それが全盛期の亀田ボクシングコント!