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■どんなクルマ?

これまでのe-ゴルフ、そして2017年のe-ゴルフ

初代e-ゴルフ(このページの主役を後期型だとすれば前期型)はわかりやすいクルマだった。時の先進技術を散りばめた主張が最初にきて、毎日乗れる実用車であることが次にきた。

フォルクスワーゲンは、同社のEVを世界で一番有名な(あるいは、もっとも売れている)ハッチバックをベースに造った。

自身を正当化するような、こじつけはここでは重要ではなかったし、とにかくあれはゴルフ以外の何者でもなかった。その走行可能な距離がたった160kmであること以外は。

それは、フォルクスワーゲンでも隠すことのできない、電動パワートレインの泣き所である(同セグメントの比較ではましな方ではあるが)。

だから、エンジニア達が後期モデルで改善の主要項目をそこに定めたことを聞いて驚かなかった。

2017年型e-ゴルフ、数字でおさらい

彼らは、NEDC(新欧州ドライビング・サイクル)の測定法において、航続距離を延長することに成功しているという。

それでも、化石燃料を満タンにして内燃焼機関を駆使した時の航続走行距離とは比べものにならないが、1時間くらいの距離を運転して、自宅に帰るくらいならば十分な水準だという。

航続距離の改善は、容量の大きいリチウム・イオン・バッテリーを採用したことによる。容量を24.2kWhから35.8kWhへ引き上げている。電気モーターの出力も115psから136psへ上昇。0-100km/h加速性能も1秒近く縮めている。

以前と変わらず、家庭用の230Vコンセントを使うと、13時間で容量の80%の充電を完了させることができるが、チャージ・ステーション(ガレージに設置可)なら、4時間でこれを完了することができ、さらに店頭サービスの「コンバインド・チャージング・システム」ならこの工程は45分で完了する。

テスラのような「スーパーチャージャー」級の利便性ではない一方で、e-ゴルフは価格を重視する戦略。フォルクスワーゲンは、まだ英国内の販売価格を発表していないが、現行モデルの£31,000(約420万円)を少し超えるくらいと予想されていて、£4,500(約60万円)の助成金を貰うことによって、通常は£28,000(380万円)以上を支払うことはないだろう。

これで、エントリー・モデルである日産リーフと航続距離が魅力のBMW i3の間にe-ゴルフは収まることになる。

■どんな感じ?

乗って感じる従来型との違い

現行ゴルフのオーナーでも、相当注意深く観察しないと後期モデルの違いはわからないだろう。ほかのモデル同様、外装の刷新箇所はライトと細かいところに限られている。

インテリアでは、最新のインフォテインメント・システムへアップデートされ、素敵なタッチパネルが目に付くが、物理的なショートカット・ボタンが排除され、こちらは少し使いづらい。

前期型のe-ゴルフは控えめでいながら、弾かれた様に走り出す感じが特徴だったが、こちらは以前と比べて加速に「これみよがしなEVらしさ」がいい意味でなくなったようだ。

しかし、無音で息の耐えることがない出力の特性は、立ち上がりを待って、しかも機械的なフリクションを伴う内燃焼機関とは比べようもない。

まるっきりゴルフ、そこがいい

速度が乗り、足をアクセルから離すころには、このクルマを巡航させるには何の苦労も要しないことに気が付くだろう。

一方、キャビンは密閉空間のような静粛性を持つが、それだけにちょっとした雑音が気になったりもする。

しかし乗り心地は良く。軽量な兄弟車と比べて、よりしっかりした感じであるが、たまに突っ張るときもあった。しかし、マヨルカの良路を走行する限りでは快適であった。(英国の悪路で試す必要がある)。

高速コーナーが多くなる丘陵エリアでは、このクルマの不利な重量配分の影響が露呈する。通常のゴルフと比べて、遥かに早く限界が訪れるのだ。それも不快な大きなスキール音を伴って。

とはいっても、巨大なバッテリーは低い位置に配置され、一流のシャシー・バランスを崩すことはなく、通常の運転の範囲において、いつもの正確なステアリングと瞬時に立ち上がるトルクに助けられる。

e-ゴルフといえども、ほかのモデルのゴルフと同様に運転はイージーだという証明になった。

■「買い」か?

このクラスをリードするクルマに成長した!

航続距離に関するデータは、それほど厳しくないといわれるNEDC(新欧州ドライビング・サイクル)テストで達成された距離よりも短いものとなった。

しかし、トリップ・コンピューター上(97km走破、101km残存)のデータは、EPAの200kmとほぼ同じ数値である。しかも繰り返し記録され、フォルクスワーゲンが主張する実走行距離と一致した。

EPA(連邦環境保護庁)の測定データによると、このデータはEVのi3とリーフを凌ぎ、ヒュンダイのアイオニックと同等の水準であることになる。

ドライバーが得る満足感の差は明らかだ。

旧モデルは既に重々しいリーフよりも優れていたし、このモデルでは、速く、静かで、快適なうえ、モダンなBMWさえも凌駕している。

しかし、ここはやはりディーゼルの代替機と比較せざるを得ないが、それを考慮してもe-ゴルフがこのクラスをリードする素晴らしいクルマだということに疑いの余地はない。

事実、このクルマは、ゼロ・エミッションのクルマが成し得る全てを実現している。それ以上を求めるのならば、シリコンバレーからクルマを買うしかないだろう。

フォルクスワーゲンe-ゴルフ

■最高速度 150km/h 
■0-100km/h加速 9.6秒 
■航続可能距離 100km 
■CO2排出量 0g/km 
■乾燥重量 1540kg 
■エンジン 同期モーター 
■最高出力 136ps 
■最大トルク 29.6kg-m 
■ギアボックス シングル・スピード