妖怪ファンが注目! 三次藩士の体験まとめた「稲生物怪録絵巻」
[Jステーション-広島ホームテレビ]2017年3月27日放送の広島HOMEテレビ「Jステーション」の「まちの宝」のコーナーで、三次の古い絵巻にかかれた物怪(もののけ)の伝説が紹介されました。
三次市役所(Ozizoさん撮影、Wikimedia Commonsより)
その物語は「稲生物怪録」といって、江戸中期時代の三次藩士、稲生平太郎(武太夫)が体験した奇妙な体験をまとめたもの。なかでも「稲生物怪録絵巻(堀田家本)」は三次市重要文化財となっています。
地元では知られていなかった
いまも残る稲生武太夫の屋敷跡。番組では「物怪プロジェクト三次」の吉川光彰代表に、案内してもらっていました。この屋敷で武太夫が出会った物怪。初日は一つ目の入道が、平太郎を家から連れ出そうとしました。描かれた物怪は、目から光線などを出して斬新な印象です。
行灯の燃え上がる怪や、ひょうたん、紙の舞い上がる怪、老婆の大顔の怪......最後は大勢の物怪が大挙して消えていく物語。吉川さんは「ほかの妖怪譚には出てこないような物怪がたくさん出てくるんで、これが妖怪の原点だという人もいる」といわれていました。
全国の妖怪ファンから高く評価されていた物怪録。しかし地元ではあまり知られておらず、代表も初めてみた時は大変驚いたそうです。どうやら三次で広まらなかったのは、江戸幕府から取り締まりや隠密などが来る原因になるといった心配がされたなど、様々な理由が組み合わさったことからのようです。
町おこしに生かす
地元に、こんなすごい面白い話がある。町の有志たちは価値に着目し、三次の町おこしに役立てようと、プロジェクトを立ち上げました。吉川さんらは10年ほど前から、妖怪の仮装をして町を歩く「物怪まつり」を行っています。
「稲生物怪録は三次にしかない。三次の宝、広島の宝、日本の宝。これをもとに三次のファンに三次を見てもらうきっかけにしたい」と吉川さんはいわれていました。
不思議な物怪の物語、稲生物怪録。絵を見ているだけでも面白いこの絵巻が、もっと多くの人に見てもらえる機会が増えるといいですね。(ライター・石田こよみ)