毎年3月25日、大阪府高槻市の「やよい軒」は「THE IDOLM@STER(アイマス)」シリーズの聖地となり、多くのやよいP(ファン)が同店を訪れる。

「やよいちゃんパニック」として知られるそれは、ゲームに登場するアイドルの1人、「高槻やよい」の誕生日が3月25日であること、名前の要素が店名に含まれていることから、同店を「聖地」とし、誕生日に「巡礼」するというものだ。

ネット上で盛り上がり続けたこの「やよいちゃんパニック」を、朝日新聞(ウェブ版)に掲載されると、ツイッターでは大きな話題となった。

このように、今では大手新聞社も掲載するほどの「やよいちゃんパニック」だが、どのような経緯で広まったのだろうか。その調査結果を、時系列で解説する。

「やよいちゃんパニック」の歴史(Zhao !さん撮影。flickrより)

2008年から2011年〜ブレイクの兆し〜

2008年―――。

日本でツイッターが本格的に使われ始めた2008年には、すでに「高槻のやよい軒」について言及されている。しかし、あくまでも「言及され始め」というレベルであり、現在ほどの盛り上がりはない。SNSの外側、匿名掲示板などではすでにメジャーなネタだった可能性もあるが、ツイッター上での認知度は非常に低い段階だ。

ただ、一部のコアなファンが、ゴールデンウィークを利用し、高槻市のやよい軒を訪れた動画をニコニコ動画にアップしている。

2009年―――。

前年と同程度のつぶやき数が確認できるが、そこまで大きな変化は見られない。

2010年―――。

2010年に入ると、「大好きなあいどるますたー」という診断メーカーの結果の1つ、「○○さんは、高槻のやよい軒を訪れるくらいアイドルマスターが好きです。」が検索に引っかかりはじめる。これに影響されてか、関連するツイートの数もかなり増えた。

更に、誕生日である3月25日に同店を訪れたことを報告する人も現れ始めたのもこの頃だ。

2011年―――。

ここにきて、「やよい軒高槻店」を「聖地」とするツイートが激増する。誕生日前には特に「やよい軒高槻店」と関連付けるツイートが多くなり、ここにきて巡礼先として広く認識されることとなった。文明開化の鐘が鳴ったのだ。

「食べログ」の同店のページに聖地巡礼に訪れた、という口コミが投稿されたのもこのころだ。

また、アニメ版「THE IDOLM@STER」が放送されたのもこの年だ。ゲームとして多くのファンを抱えていたが、ここにきて更にファンの裾野を広げたため、こうしたネタへの言及も増えたと思われる。

ちなみに、ツイッターの日本法人が出来たのもこの年だ。様々な要因が重なった結果の大ブレイクと言えるだろう。

2012年以降 〜ふるさと納税の返礼品にもなりました〜

2012年以降は、「やよい軒高槻店=聖地」という認識が爆発的に広まり、関連するツイートの数は追い切れないほどになる。

2014年には閉店説が流れ、一時は戦慄が走るものの、改装工事であるということが判明した。

2015年の3月25日には、「YAYOI」として復活を果たしたお店から、特別なメッセージボードが掲げられ、大きな話題を呼んだ。また、やよい軒の運営会社も、この日の高槻店のことを把握しているという事実も明らかになった。

2016年も同様の盛り上がりを見せたのだが、この年は更なる飛躍があった。

高槻市がふるさと納税の返礼品として「高槻やよい」のグッズを起用したのだ。

グッズを提供したのは、市内にある「駿河屋高槻店」で、店長が厳選したものが返礼品としてラインナップされた。

当時、市の担当者はJタウンネットの取材に対し、

「特にアイドルマスターの高槻やよいちゃんグッズのセットに関しては申し込みが早く、ファンの多さを感じました」

と語っていた。かなり早い段階で「やよいちゃんグッズセット」は品切れになったという。

以上が、SNSにおける「やよいちゃんパニック」の一連の流れだ。来年はどのような広がりを見せるのか楽しみだ。