コダックはなぜ10年前の「K」マークロゴを復活させたのか?
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グラフィック・アーティストのC・ペーター・オストリッヒは、ポール・ランドやソール・バスのようなデザインの巨匠としての名誉ある地位には達しなかったかもしれない。しかし、オストリッヒの最も有名な「コダックのK」は、これらのデザインの偉人たちが生み出したあらゆるデザインと同じくらい象徴的な作品だ。
コダックは1971年、カメラのシャッターをモチーフとする赤と黄色のロゴを採用。以後、35年間にわたって、世界で最も効果的で広く認識されるシンボルのひとつとなった。
その後2006年、コダックはこのロゴを簡素な赤文字のロゴと差し替えた。しかしコダックは10年を経て、原点に戻った。10月下旬、「K」マークロゴを復活させたのだ。
コダックは、以前のロゴを復活させるにあたり、ニューヨークのデザインスタジオ「Work-Order」に依頼した。この際、コダックはデザインに関する指示を一切出さなかった。コダックが望んだことは、オストリッヒの「K」に回帰する、ということだけだった。
「わたしたちは『素晴らしい』と言いました。なぜなら、このシンボルに戻る以外の方法は思い浮かばなかったからです。このロゴは非常に価値のある資産なので、新しいロゴを再び最初からつくるというのは、無益な作業に思えました」と、Work-Orderの共同経営者であるケイラ・アレクサンドラは言う。
アレクサンドラによると、Work-Orderは「K」のオリジナルのプロポーションと、角が丸くなっている長方形を残したという。変更したのは1カ所だけだ。「Kodak」のフォントが、すべてボールド体の大文字に変化している。さらに、それらの文字を縦に配置した。フィルムのスプロケット穴を想起させるデザインだ。
このロゴデザインは、コダックの技術を示すものにもなっている。1960〜70年代の間、同社はフィルムメーカーだった。それを表現するために、オストリッヒは「K」の字の2本の線を光線のように描いた。この光線はカメラのビューファインダーに注がれる光、あるいはスクリーンに投影される光を想起させるものとなった。シンプルな外観の背後に意味を含んだマークであり、「E」と「X」の間に矢印が隠されているFedExのロゴと比肩する視覚的トリックとなっている。
SLIDE SHOW Prev Next2000年代の初期、コダックの売上は下落した。海外の競合やデジタル技術の到来により、写真業界における同社の独占状態が崩されたのだ。時代に乗り遅れないための改革として、コダックは2006年にオストリッヒの「K」ロゴを取り下げ、Ogilvy & Matherによる、よりシンプルな見た目の「Kodak」という文字のロゴに切り替えた。だが2012年、コダックは破産申請を行った。
コダックは現在、復活プランを抱いている。最新型の8ミリフィルムカメラ「Super 8 Camera」の本体デザインには、有名デザイナーのイヴ・ベアール(日本語版記事)を起用した。コダックはまた、写真の撮影と編集のために設計されたスマートフォン「Ektra」(日本語版記事)も発表。これらの製品には最新技術が採用されているが、昔のレンジファインダーカメラに似た黒いプラスチックの筐体に収められている。
「これは現代のノスタルジアです」。コダックのブランドディレクターであるダニー・アトキンスはそう説明している。そして、古くて新しいロゴも、その「現代のノスタルジア」を表現している。